奥華子、真っ直ぐに自分の歌を届けて回った全国弾き語りツアー、無事完走!!
奥華子 | 2014.10.02
恋愛の切なさ、苦しさ、愛おしさを丁寧に描いた楽曲、ピアノの弾き語りを中心としたシンプルで奥深いパフォーマンス、そして、観客のひとりひとりに歌を手渡すようなステージング。彼女が持っている歌の力をたっぷりと実感できる、濃密なコンサートだった。
「奥華子コンサートツアー2014 弾き語り~君と僕の道~」、東京・かつしかシンフォニーヒルズ公演。会場には親子連れ、老夫婦から女子高生2人組みまで、幅広い年齢層の観客が集まっている。来年、メジャーデビュー10周年を迎える奥華子。彼女の歌はゆっくりと確実に浸透しているようだ。
ステージの中央にはピアノ、その両脇にキーボードが2台置かれている。17時を少し過ぎた頃、南仏を想起させるようなステージセットの後ろから奥華子がひとりで登場。大きな拍手を受けながら、ステージ上手に置かれたキーボードを弾きながら「道」(最新アルバム「君と僕の道」収録)を歌う。“誰の為に、何の為に生きているの?”と問いかけるこの曲で、いきなり強く心を掴まれる。この人の歌力、ホントに凄いなーーと思っていたら、「こんばんは! 奥華子です!」と元気よく笑顔で挨拶。「注意事項があります。奥華子のライブは盛り上がりません(笑)。それぞれ心のなかでウワーッ!となってください」と核心を突いたMCのあとは、やはり「君と僕の道」に収録された「冬花火」とインディーズ時代のシングル「花火―君に恋した夏の日―」を披露。ライブ前半でもっとも心に残ったのは、ピアノの弾き語りによる「楔(くさび)」だった。愛する人との別れの瞬間を、身を切られるような切なさとともに描き出すこの曲は、シンガーソングライター・奥華子のひとつの真骨頂と言えるだろう。じっと息を潜め、楽曲に集中する観客の様子も印象的だった。
ライブ中盤のトークコーナーでは、昨年の活動休止について触れていた。心に余裕がなくなり、しばらく休まないとどうにもならないと感じたこと。ベストアルバム「」リリース後に活動のペースを抑え、リラックスした時間を持ったことで、徐々にモチベーションが蘇ってきたこと。観客に向かって笑顔で語りかける彼女の姿からは、無理なく、ナチュラルに音楽と向き合えていることが伝わってきた。(ちなみに彼女が前向きになれた理由は「ショウガ紅茶」「通販番組」「猫」だそうです)
その後は、オーディエンスとの一体感を演出。まず「しわくちゃ」では奥華子が客席に入り、手拍子を促しながら観客とのコミュニケーションを深める。さらに“即興みんなの歌”では、観客のエピソードを集め(「おかめインコを飼ってます」「明日、彼氏(バイト先の先輩)と付き合って一ヶ月になります」「15年付き合った彼氏と今朝別れました」など)、それを即興で歌ってみせる。こういうフレンドリーな雰囲気もまた、彼女の魅力だろう。
小田和正の名曲「たしかなこと」のカバーを披露した後は、「自分自身、切ない曲が好き。あえて奥華子の暗いところをジットリと聴いてほしいと思います」というコメントを挟み、失恋ソング、片想いソングを次々と奏でる。恋を失うことの傷を男性の目線で歌った「幻の日々」、好きだと言えないままに別れた“君”との記憶を映し出す「さよならの記憶」、他者との比較のなかでしか自分を確認できない“私”をありのままにさらけ出す「他人の涙」、そして、別れを告げられた後も“もう見るだけでもかまわない”と懇願する「初恋」。恋愛という特別な状況のなかで生まれる繊細で強烈な感情を、痛々しいまでの表現でまっすぐに描く――こんなにも強く、濃いラブソングを生み出せるシンガーソングライターは、彼女以外にはないと思う。
音楽大学時代の仲間との久々の再開、友達が言った「久しぶりに笑ったわ」という言葉がきっかけで生まれたという「10年」、「誰かのためではなく、自分のためにがんばろうと思った」というコメントに導かれた「ピリオド」にも強く心を揺さぶられた。彼女自身の生き方、考え方が反映されたこの2曲によってライブ本編は終了。アンコールでは代表曲「ガーネット」、“自分の心に正直になれ 目指す方へ”というポジティブなフレーズが響き渡った「未来地図」、観客の大合唱が起こった「Happy days」を披露。表面的に盛り上がるのではなく、歌を真っ直ぐに届けることで、すべてのオーディエンスの感情を揺らす。この日も奥華子は、自分自身のスタイルをしっかりと体現してみせた。
10/22(水)に渋谷・duo MUSIC EXCANGEで小谷美紗子との2マンライブ『オンナとピアノ』他、10月は学園祭含め、10本以上のライブイベントに参加、さらに12/27(土)、28(日)には日本橋三井ホールでの公演も決定。デビュー10年目に突入した“ラブソングの名手”はここから、さらに充実した時期を迎えることになりそうだ。
【取材・文:森 朋之】
リリース情報
君と僕の道(初回限定盤)
2014年03月19日
PONY CANYON
M2:ピリオド
M3:blue green
M4:冬花火
M5:幻の日々
M6:曖昧な唇
M7:10年
M8:あなたと電話
M9:Wedding Dress
M10:しわくちゃ
M11:HIKARI
M12:未来地図
M13:道
お知らせ
第53回 文教祭
2014/10/12(日)広島・ 広島文教女子大学
第45回 さぎ草祭
2014/10/18(土)岐阜・ 岐阜女子大学
月山青春音楽祭’14
2014/10/19(日)山形・月山青春音楽学校(旧・西川町立西山小学校)
女とピアノ
2014/10/22(水)東京・duo MUSIC EXCHANGE
結の灯りメモリアルコンサート 奥華子LIVE
2014/10/23(木)新潟・魚沼市 小出郷文化会館
埼学祭・明暁祭
2014/10/25(土)埼玉・埼玉学園大学・川口短期大学
翠樟祭
2014/10/26(日)千葉・東京成徳大学 八千代キャンパス
Hello!World Vol.10
2014/10/30(木)東京・Mt.RAINIER HALL 渋谷PLEASURE PLEASURE
奥華子 FUJIMI LIVE
2014/11/02(日)東京・日本歯科大学
ワンマンライブ
2014/12/27(土)、28(日)東京・日本橋三井ホール
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。