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ゴスペラーズ、11年ぶりのシアトリカル(演劇)ツアーをレポート

ゴスペラーズ | 2014.12.03

 ゴスペラーズのもうひとつの顔である演劇と音楽を合体させた“シアトリカル・ライブ”ツアーの東京公演を観た。ちなみにこのスタイルでのツアーは、11年ぶりとなる。
 ツアー直前にリリースされた20周年の節目となるアルバム『The Gospellers Now』は、彼らのキャリアを凝縮した内容であると同時に、今回のツアー“ゴスペラーズの「ハモれメロス」”に向けて制作されたものでもあった。これだけ多くの要素が絡むと、並みのグループならとっちらかってしまうものだが、さすがゴスペラーズ。そうした“縛り”を楽しむかのように、カラフルな楽曲で1枚のアルバムを構成してみせたのだった。

 そしてライブの方はと言うと、まず演劇部分はタイトルから連想されるとおり、人質にとられた友達のために、期限までに走って帰ってくることを約束した男の話。音楽部分は、「どんどん新しい音楽が更新されていった60年代のポップス」を軸に展開される。
 これだけだと何が何だかわからないかもしれないが、早い話、楽器は買えないが情熱だけは人一倍持っている主人公が、お金でバンドをコントロールしようとする人間に対して“信頼とは何か”、“グループとは何か”を問い掛ける。その証として、なぜか走って帰るストーリーになっている(笑)。折しも60年代は、若者同士のアンサンブルの楽しさが初めて音楽シーンを席巻した時代だったので、ストーリーと音楽が見事にマッチした“シアトリカル・ライブ”になった。

 ライブは、かつて有楽町にあったホール“日劇”で開催されていた“ウエスタンカーニバル”の再現シーンから始まる。ロカビリーやグループサウンズといった60年代の流行を生んだ伝説のカーニバルは、今でいえばロック・フェスのようなもの。複数の歌手やバンドが出演して、お互いの音楽性と人気を競い合ったものだった。 このシーンでは、ゴスペラーズの5人がそれぞれのキャラクターを活かして、当時のヒット曲をカバーするメドレーが楽しい。しかも、客席前列のオーディエンスには事前に紙テープが配られていたようで、オールディーズの大ヒット「ダイアナ」をメインで歌う北山陽一に向かって真っ赤なテープが投げられる。そのタイミングの良さに、このゴスペラーズならではのライブのツボを、お客さんたちがちゃんと押さえていると感じて嬉しくなった。もちろんメンバーのパフォーマンスも超楽しい。通常のツアーなら絶対やらないような曲を、あり得ないファッションとアクションで歌うのは、このシアトリカル・ライブなればこそ。ミュージカルで役者が歌うのとはひと味もふた味も違うボーカリゼーションで、まずは盛り上げる。 続いて、1964年、とある大学の軽音楽部の部室から芝居が始まる。部室に忍び込んだ貧乏な若者の村上てつやと黒沢 薫は、置いてあった贅沢な楽器群に驚くと同時に、盗み出そうとする。そこに部員の安岡 優、北山陽一、酒井雄二が入ってきて、下手な言い訳をする村上と黒沢に「歌ってみろよ」と凄むのだった。ところが、想定外の2人の上手さに舌を巻く。音楽で5人は一つになりそうになるが、その時、自分の才能に自信のない一人がイチャモンをつけ、過酷な走りの約束を強要するのだった。
 その後の展開は、皆さんの想像どおり。5人が60年代の活気のある音楽と人間模様を演じ、楽しませてくれる。
 そして、芝居が終わった後は、架空のグループ“ファイブ・オーシャンズ”のライブが待っていた。名曲「ひとり」や、アッパーチューン「1, 2, 3 for 5」などで芝居の楽しさとはまた別のウキウキ感を味あわせてくれた。ライブ終盤ではゴスペラーズ本来のライブに戻り、最新シングル「SING!!!!!」では、非常に難易度の高い振付をライブでやってのけ、ファンから大喝采を浴びていた。

 これまでのシアトリカル・ライブは、“アカペラの歴史”など、ある種の音楽講座的なテーマが必ずあった。ところが今回は、啓蒙的な側面は一切なく、純粋にエンターテインメントに徹している。その分、メンバーの役者としての負担が大きくなっているのだが、結論から言えば、5人はそのプレッシャーを跳ね返し、見事に役を演じ切り、しかも素晴らしいハーモニーを聴かせてくれたのだった。

 演劇以上、音楽未満ではなく、音楽以上、演劇未満でもない。そんな意識を取り払ったところで成り立つ、ユニークなライブだった。こんなことができるのは、まさにゴスペラーズだけ。メンバーも観客も、この特異なライブを心から楽しんでいた。それは、5人がボーカル・グループの魅力を日本に定着させようと“あの手この手”で頑張ってきたキャリアから生まれた、オリジナリティの高い“ライブ作品”になっていた。

【取材・文:平山雄一】
【撮影:緒車寿一】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル ゴスペラーズ

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リリース情報

クリスマス・クワイア(初回生産限定盤)

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2014年11月19日

Ki/oon Music

1.クリスマス・クワイア
2.Christmas In Heaven
3.G20 Christmas Medley
(「Winter Cheers! 」、「 The Christmas Song 」、「 This Christmas 」、 「ふたつの祈り ~X’mas Love to you~ 」)

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リリース情報

G20(初回生産限定盤)

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2014年12月17日

Ki/oon Music

[Disc 1]
01. 1, 2, 3 for 5
02. ギリギリSHOUT!!
03. Thank You
04. ミモザ
05. Heartbeats
06. Love me! Love me!
07. 冬物語
08. Love Vertigo
09. SING!!!!!
10. 一筋の軌跡
11. Right on,babe
12. 見つめられない
13. 冬響
14. 氷の花
15. ラヴ・ノーツ
16. クリスマス・クワイア

[Disc 2]
01. 侍ゴスペラーズ
02. LOVE MACHINE
03. 永遠(とわ)に
04. ひとり
05. 星屑の街
06. 靴は履いたまま
07. Beginning
08. Slow Luv
09. 東京スヰート
10. GOD BLESS YOU
11. U’ll Be Mine
12. いろは
13. FIVE KEYS
14. 告白
15. あたらしい世界
16. Promise -a cappella-

[DVD]
・「クリスマス・クワイア」ミュージックビデオ
・祝!ゴスペラーズデビュー20周年 G20 最強のGOSは誰だ!? 「KING OF GOS」選手権~総合編~

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セットリスト

ゴスペラーズ坂ツアー2014
“ゴスペラーズの『ハモれメロス』”
2014.11.25@三郷市文化会館

  1. ウエスタンカーニバルメドレー
    -リトル・ダーリン ~ ダイアナ ~ 監獄ロック-
  2. くれないの街(short ver.)
  3. ロコモーション
  4. 上を向いて歩こう
  5. My girl friend
  6. 哀しきフォーシーズン
  7. 60’sメドレー
    -Surfin’ U.S.A.~ ローハイド ~ ベサメムーチョ ~ Blowin’In The Wind ~ Out Of Sight ~ My Girl ~ PLEASE PLEASE ME-
  8. The Hawaiian Wedding Song
  9. Looking for your love
  10. どしゃ降り’64
  11. Sherry
  12. くれないの街
  13. Promise
  14. ひとり
  15. HIT ME
  16. 1,2,3 for 5
  17. 太陽の5人
  18. ハモメロメドレー
    -THE LOCO-MOTION ~ Love Train ~ 夢伝説 ~ Dance If You Want It ~ No One Else Comes Close ~ Just The Way You Are-
  19. Be shiny
  20. LAZY RAIN
  21. MOVIE☆STAR
  22. SING!!!!!
ENCORE
  1. クリスマス・クワイア
  2. カーテンコール

お知らせ

■ライブ情報

ゴスペラーズ坂ツアー2014~2015“G20”
2014/12/21(日)さいたま市文化センター 大ホール
2014/12/23(火・祝)千葉県文化会館 大ホール
2014/12/27(土)神奈川・よこすか芸術劇場

2015年
2015/01/07(水)東京・府中の森芸術劇場 どりーむホール
2015/01/09(金)兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
2015/01/10(土)京都・文化パルク城陽 プラムホール
2015/01/12(月・祝)和歌山市民会館 大ホール
2015/01/17(土)山梨・東京エレクトロン 韮崎文化ホール 大ホール
2015/01/18(日)群馬・ベイシア文化ホール 大ホール
2015/01/22(木)神奈川県民ホール 大ホール
2015/01/24(土)三重・四日市市文化会館 第1ホール
2015/01/25(日)岐阜・土岐市文化プラザ サンホール
2015/01/30(金)新潟・苗場プリンスホテル ブリザーディウム
2015/01/31(土)新潟・苗場プリンスホテル ブリザーディウム
2015/02/07(土)山口・防府市公会堂
2015/02/08(日)岡山市民会館
2015/02/11(水・祝)大分・iichikoグランシアタ
2015/02/12(木)宮崎・延岡総合文化センター 大ホール
2015/02/14(土)長崎市公会堂
2015/02/15(日)佐賀・鳥栖市民文化会館 大ホール
2015/02/21(土)香川・アルファあなぶきホール 大ホール(香川県県民ホール)
2015/02/22(日)愛媛・松山市民会館 大ホール
2015/02/25(水)東京・中野サンプラザホール
2015/02/26(木)東京・中野サンプラザホール
2015/02/28(土)静岡・アクトシティ浜松 大ホール
2015/03/01(日)静岡・沼津市民文化センター 大ホール
2015/03/07(土)栃木・宇都宮市文化会館 大ホール
2015/03/08(日)茨城・結城市民文化センター アクロス 大ホール
2015/03/14(土)なら100年会館 大ホール
2015/03/15(日)福井・フェニックスプラザ 大ホール
2015/03/21(土)山形・酒田市民会館「希望ホール」大ホール
2015/03/22(日)福島・郡山市民文化センター 大ホール
2015/03/27(金)東京・中野サンプラザホール
2015/03/28(土)東京・中野サンプラザホール
2015/04/17(金)東京・中野サンプラザホール
2015/04/18(土)東京・中野サンプラザホール
2015/04/25(土)長野・ホクト文化ホール 大ホール(長野県県民文化会館)
2015/04/26(日)石川・北陸電力会館 本多の森ホール
2015/04/29(水・祝)新潟県民会館 大ホール
2015/05/02(土)鳥取市民会館 大ホール
2015/05/03(日)島根県民会館 大ホール
2015/05/05(火・祝)鹿児島・宝山ホール(鹿児島県文化センター)
2015/05/06(水・祝)熊本・市民会館祟城大学ホール 大ホール(熊本市民会館)
2015/05/09(土)滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール
2015/05/10(日)富山・高周波文化ホール 大ホール(新湊中央文化会館)
2015/05/16(土)徳島・鳴門市文化会館
2015/05/17(日)高知県立県民文化ホール オレンジホール
2015/05/22(金)東京・中野サンプラザホール
2015/05/23(土)東京・中野サンプラザホール
2015/05/30(土)秋田市文化会館 大ホール
2015/05/31(日)リンクステーションホール青森(青森市文化会館) 大ホール
2015/06/06(土)岩手県民会館 大ホール
2015/06/07(日)仙台サンプラザホール
2015/06/13(土)北海道・たきかわ文化センター 大ホール
2015/06/14(日)北海道・ニトリ文化ホール(さっぽろ芸術文化の館)
2015/06/18(木)埼玉・東松山市民文化センター
2015/06/20(土)東京・渋谷公会堂
2015/06/21(日)東京・渋谷公会堂
2015/06/27(土)名古屋国際会議場 センチュリーホール
2015/06/28(日)名古屋国際会議場 センチュリーホール
2015/07/03(金)広島文化学園HBGホール(広島市文化交流会館)
2015/07/04(土)福岡サンパレスホテル&ホール
2015/07/09(木)大阪・オリックス劇場
2015/07/11(土)グランキューブ大阪 メインホール
2015/07/12(日)グランキューブ大阪 メインホール
2015/07/18(土)沖縄・コンベンションセンター 劇場棟

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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