シリアスもコミカルもギミックも本気中の本気でやれば絶対に伝わる。その揺るぎない信念を胸に豪快に駆け抜けた２時間強のライヴを観て、ロック界のエンターテイナーとしての「真骨頂」を存分に味わった。いや、このバンドの頭の構造はどんな仕組みになっているんだろと、パカッと割って覗き見たくなるほど痛快極まりないパフォーマンスの連続攻撃だった。

「何で"ガイコツアーか知ってる？"　このツアーが血となり、肉となり、骨となり・・・骨のあるロック・ミュージックを作りたい。あと、自分が骨になっても、孫にも伝わるような、普遍的なロックをコツコツやりたい。これ後付けで考えた（笑）」と、ライヴ後半に言った稲村（Vo/G）のコメントもふるっていた。ツアー名一つに対しても、ここまで含蓄と愛嬌とユーモアを張り巡らせる男なのだ。

　前置きが長くなったが、アルカラの７thアルバム『CAO』発売記念TOUR「ガイコツアー2014」ワンマンライヴは遂に最終日を迎えた。18時11分、ステージを覆う黒幕が左右に開くと、でっかくバンド名が印刷されたバックドロップが見え、田原（G）、下上（B）、疋田（Dr）は定位置でスタンバイ。そこに稲村が走り込むように登場し、「カラ騒ぎの彼女」で本編は始まる。天井まで響き渡る伸びやかな歌メロ、息せき切るような濁流サウンドで襲いかかると、フロアは早くももみくちゃのカオスになっていく。

　続く「アブノーマルが足りない」で両手を挙げてジャンプし、声を張り上げて歌う観客の光景がみるみる広がっていく。その盛り上がりにバンドもテンションが増幅されたのか、「チクショー」ではさらに演奏が加速し、ジェットコースター級のスリリングな興奮を運んでくる。３曲目が終わった時点ですっかり会場の空気は出来上がっているではないか。「最初からガンガン行くぞー！」と稲村は言い放ち、「キャッチーを科学する」においては暴れ踊り狂う観客の熱量は膨れ上がる一方で、ZEPP TOKYOの２階席まで振動が伝わってくるほどだった。

　そして「嘘つきライアー」~「癇癪玉のお宮ちゃん」~「藤壷のキミ」とストーリー性の高い楽曲が続き、「愚痴ばっかりのローレロレロ」~「不完全なキミ」~「む・つ・ご・と」と歌謡性を前に押し出したスケール感のある演奏を響かせる。それから場の空気をガラッと変えたのは「ガイコツマン」だ。曲にちなんでガイコツのコスプレをした大勢の“ガイコツマン”が謎にハシゴを持って入場。稲村がバイオリンを弾くと、“ガイコツマン”たちはハシゴに登って右手を横に振るシュールな演出で会場を激しく沸かせる。壮大な曲調と凝りに凝りまくった仕掛けに感心するやら、爆笑するやらで、心はウキウキしっぱなしだ。

　後半も「どうでもいいウタ」~「夢見る少女でいたい。」~「半径30cmの中を知らない」などアッパーな曲調で畳み掛け、曲中に「俺、今ZEPP TOKYOのステージで歌ってるぞー！」と歓喜の雄叫びを上げる稲村の姿も印象的だった。また、何が正解か不正解かわからない、でも間違っていなかったのは今日がめちゃくちゃ素敵な日になったということ。そう、しみじみ語りかけた後、「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」で本編を締め括ると、ステージに置き去りにされたままのハシゴに備え付けられたライトが明滅する。まるでクリスマス・ツリーのような効果を発揮し、会場からは感動のため息が漏れた。

　アンコールに応えて再び登場すると、ツアーで対バンしてくれたバンド全部にエピソード交じりのコメントを付ける生真面目な側面も見せた後、「くだけねこのうた」を披露。これで終わりかと思ったら、スクリーンには会場外で待ち受けるブラックくだけねこを含むアルカライダー４人が映し出される。地球から約６（ロック）万光年離れた「アルカランドロス星雲」からやって来た「ロック界の奇行師ヒーロー」を名乗る彼ら。アルカラをこらしめるべく、今日の会場にもわざわざ乗り込み、TVアニメ「怪盗ジョーカー」オープニング曲に抜擢された「怪盗ミラクル少年ボーイ」をここで堂々とプレイ。「年末もジャックしに来る！」とイナムライダー（赤）は捨て台詞まで吐き、すべての観客から満面の笑顔を引き出して盛大に幕を閉じた。最初から最後まで「粉骨砕身」のエンターテイナーぶりを見せつける圧巻のショウだった。

【取材・文：荒金良介】
【撮影：AZUMA Tatsuya】