RIP SLYME、恒例のクリスマスライブ。今年のテーマはビーチ!
RIP SLYME | 2015.01.14
“ブルークリスマス”は、映像の中のことだけだと思っていた。雪のないクリスマス。サンタクロースがアロハにサングラスで浜辺で寝そべっている、みたいな。真っ白な太陽。青い海。浜風にパームツリーの葉が揺れる。
目の前に広がるステージセットは、サンタクロースはいなかったけれど、ブルークリスマスそのものだった。
2014年、12月24日、RIP SLYME恒例のクリスマスライヴ「CHRISTMAS ON THE BEACH」が、Zepp Tokyoで開催された。
今回で14回目を迎えた彼らのスペシャル・パーティー。これまで、様々なテーマで聖夜を彩ってきた。そのテーマの一例を紹介。観客を15歳以下に限定、男子限定、カップル限定(しかもカップリング曲がメインのライブ)、コラボという具体的なものから、希望といった抽象的なものまで、こちらの想像の上をいく多彩っぷり。この幅の広さ=アイデアの豊富さに、メンバーの“RIP SLYME”というグループに対するマインドがしっかり表れているのではなかろうか。今回のテーマは「真冬に真夏」。「夏ソングが多く、夏のイメージがある」とメンバー公言のイメージから、「だったら、夏ソングだけでライヴやれるんじゃない?」と、実現に至った。
まずは、ステージにお笑いコンビ・デニスが登場。途中からSUも交えて、満員の観客とのコール&レスポンスを挟み込みながら、前説ならぬ前煽りを展開。最後は観客のレスポンスに1曲目のトラックをライドオンさせ、真夏の聖夜の幕が切って落とされた。
オープニングを飾ったのは、「Under the SUN」。ミニマムなリズムとラップに、クワイヤーを思わせるコーラスが重なるプリミティブなアッパーチューン。観客も最初からフルスロットルでライドオンする。ポップなサビが真夏の解放感に通ずる「真夏のWOW」、ネイティヴなリズムと4MCのユニゾンでぐいぐいひっぱる「Watch Out!!」と畳み掛ける。RYO-Zの「12月の真冬ですけど真夏の7月のように熱くはじけることができますか」と、「Hotter than July」へ。キラーチューンの連発に、会場の温度と湿度が、瞬く間に夏へ巻き戻されていく。いや、早送りか?「SPLASH」が終わった後は、ステージ上に組まれたビーチサイドのバーカウンターでMCコーナーへ。カウンターの中でリップのメンバーを迎えたデニスが、 “なぜ冬に「ON THE BEACH」なのか”と質問すると、RYO-Zはこう答えた。
「冬って寒いでしょ。暖かくなりたくない? 夏のように暖かく!」
観客も大歓声で賛同する。この後、ステージ上では、全力であっち向いてホイをするなど、一足早い正月深夜番組のような光景が繰り広げられた。途中、リップのメンバーが「RIP SLYMEのクリスマスライヴは、変なことしかやらないから」とマイク越しに呟いていたが、まさにその通り。そこも含めて、この全力ゲームはまさにクリスマスライヴなのだが、観客はRIP SLYMEというグループの楽しみ方を熟知している人たちばかりのようだ。すでに全力を出し切ったようにも見えるPESが「RIP SLYMEのこういう部分、いかがですか?」と言葉を放つと、間髪入れず、大きな拍手が起こったのが、その証拠かな、と。アーティストと観客が、共にGOOD TIMEを重ねてきて作った関係性がそこにはあった。
「ジャングルフィーバー」に続いたのは、夏の大ヒット曲「楽園ベイベー」。オリジナルよりもビートと低音をフィーチャーし、ブレイクビーツまで織り交ぜた派手なダンストラックのリミックスに仕上げたDJ FUMIYA。まるでリズムの百花繚乱だ。その前衛的なトラックに、フローを変えずに飛び乗る4MC。お見事。グッジョブ!!
再びバーカウンターへ移動したメンバー。ゲストにキヨサク(モンゴル800)を迎え、順番にキヨサクのウクレレ演奏とともに“夏の思い出の曲”を披露。トップバッターを飾ったSUは、「真夏の果実」(サザンオールスターズ)。RYO-Zは「スナックに行くと必ず歌う」と「お嫁においで」(加山雄三)。台詞の部分では「僕は死ぬまでこのマイクを離さないぞ」とアレンジし、喝采を浴びた。ワールドワイド(?)に「La Bamba」を歌ったのはILMARI。客席に背中を向け、バーカウンターに肘をつきながら歌い始めるという前衛的&脱力なパフォーマンスに、客席のあちこちから笑い声が漏れるもお構いなし。マイペースで歌い、踊りきった。コーナーの最後は、昨年発売された『800TRIBUTE -champloo is the BEST!!-』に収録された「あなたに」をキヨサクとともに。続けて、リップのオリジナル曲、レゲエティストの夏ソング「Island」をキヨサクとコラボして聴かせた。ゲストを送りだし「虹」、マイクスタンドを並べソウルマナーなダンスも可愛かった「Danced all night」、LEDの星空の中で「花火」とスムース&メロウな曲を続ける。真夏の1日の終わり。火照った肌をクールダウンさせるような、やるせないミディアム・ナンバーも“RIP SLYMEの夏ソング”の趣だ。太陽と月。昼と夜。汗と風。リップは、夏を24時間楽しむ方法を知っている。
再びのカウンターバー・トーク。武井壮が登場し、メンバーとおなじみの○○の倒し方でRIP SLYMEの倒し方を伝授し、観客を喜ばせた後は、ラストスパート。コーラスやトラックの緻密さから、RIP SLYME meets ビーチボーイズかなんて思っちゃうイントロは「太陽とビキニ」。20人水着ギャルがステージへ。チアリーダーのポンポンを使ったダンスで、男の真夏の欲望と哀愁を、とことん明るくカラフルに縁取った。ステージが真っ赤に染まる。前述した欲望を違う角度から表現した「熱帯夜」では、サビのコール&レスポンスもばっちり。4MCはステージ全面を使い、パース毎にどんどん立ち位置を変えていくという、リップらしいコンビネーションを体現するパフォーマンスで、さらにギアを入れる。そんな“燃え上がる熱気のファイヤー”をスパークさせたのは、高速チューン「JOINT」。サビでは、満員の観客が、頭上でマフラータオルを回しながら自由にバウンドした。
アンコール。この日のライヴを振り返り「こういうことをやらせていただけるのが、RIP SLYMEの良さ。来てくれる皆さんの心の広さ」とPES。この言葉に、会場から拍手。拍手は次第に大きくなった。
「アンコールくらいはクリスマスの曲を」と全部で3曲披露。最後の曲は、RYO-Zの「僕たちの気持ちはやっぱり曲で」という言葉から「Present」。ミラーボールが優しく回り、鐘の音、シャンシャンという鈴の音が鳴り響く中、RIP SLYMEがプロデュースした、真夏の聖夜は幕を閉じた。
……と思ったら、まだ終わってなかった!?
終演後、この日の観客に彼らから配られたクリスマスプレゼント。その袋の中には、ビーチボール、防水ポーチ、うきわが入っていた。
次々とプレゼントを受け取る観客たち。その場ですぐプレゼントを広げ、早速ビーチボールを膨らましている人もいた。
まったく、面白いことやってくれる。いつも以上に、次の夏が楽しみになる、そんな聖夜だったなぁ。
2015年の夏も、こりゃRIP SLYMEで決まりだ。
【取材・文 伊藤亜希】
【撮影:オノツトム】
リリース情報
セットリスト
CHRISTMAS ON THE BEACH
2014.12.24@Zepp Tokyo
- Under the sun
- 真夏のWOW
- Watch Out!!
- Hotter than July
- SPLASH
- ジャングルフィーバー
- 楽園ベイベー (1)真夏の果実…SU
- Island (withキヨサク)
- 虹
- Danced all night
- 花火
- 太陽とビキニ
- 熱帯夜
- JOINT
(2)お嫁においで…RYO-Z
(3)La・Bamba…ILMARI
(4)夏の日の1933…デニス
(5)あなたに…RIP SLYME、キヨサク、デニス
- 星に願いを
- Supreme
- Present