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RHYMESTER主催のフェス「人間交差点 2015」、ジャンルや世代を超えたファンが行き交う!

RHYMESTER | 2015.05.26

 RHYMESTER主催のフェス「人間交差点 2015」が5月10日、晴天の中、お台場野外特設会場にて開催された。タイトルに相応しく、RHYMESTERという交差点の下、ジャンルや世代を超えて、彼らと親交の深い同朋、後輩、当時のライバルや客演経験のあるアーティストが集い、行き交ったこのイベント。ヒップホップのみならず、ジャズ、ソウル、ファンク、ロック、レゲエ等のアーティストが出演し、RHYMESTERの懐の深さを改めて感じると同時に、会場中がそれらに捕らわれずイベント全体を楽しんでいるのも印象深かった。

 DJ JINによるDJタイムで気持ちも高揚してきたところで、まずはRHYMESTERの3人が登場。イベントの主旨を伝え、<コール&レスポンス>で、この日一発目のMake Some Noiseを会場に起こす。
 この日はリレーション形式の2ステージ制。しかも双方並んで設営されている為、会場のほぼどこででも2ステージ楽しめる。

 トップを飾ったのはレキシ。洗練されたファンキーナンバー「大奥」、レキシネーム(レキシ作品への客演参加時の別称)MC母上と称され、呼び込まれたMummy-D (Mummy=母)のラップと共に放った「狩りから稲作へ feat. MC母上(Mummy-D)」「キリシタンゴ feat. MC母上(Mummy-D)」等を放出。母の日にかこつけカーネーションをプレゼントする場面も。過去のソウルミュージックやブラックミュージックのオマージュをふんだんに盛り込み、コール&レスポンス等も交えた、楽しく親しみやすいステージは、初見のオーディエンスをもグイグイと力強く惹き込んでいった。

 続いてはRHYMESTERの直の後輩グループが出演した。TARO SOULと超絶DJ威蔵によるSUPER SONICSは、ターンテーブル2台とトリッキーなラップと歌で、ヒップホップの自由さ、無尽さを伝える「Party Checker」や「NITRO MICROPHONE UNDERGROUND」といったクラシックなジャパニーズ・ヒップホップのインストゥルメンタル上でパフォーマンス。そこから綿々と続いているからこそ、今の隆盛があることへのリスペクトを感じたPUNPEE & GAPPER、SIMI LAB、THE OTOGIBANASHI’Sからなるヒップホップクルー、SUMMITは、個々の活動はもとより、この集団活動に於いても、大きな期待を寄せることができた。 年齢やキャリアを重ね、それぞれが揺るがない自身の音楽性を確立した今だからこそ、笑って、楽しく同じステージに立ったこの日。スチャダラパーの出演は、まさにそれ。よもやRHYMESTERとスチャダラパーが同じステージに立つ日が来るとは…。20年前の自分に教えてあげたい気持ちになった。

 後半に移ると、ますますジャンルの交差が賑やかになっていく。<音楽はジャンル関係ナシで楽しめる>、頭では分かっているそれを、見事に体現し、立証してくれたのが、続いてのSOIL & "PIMP" SESSIONS、MIGHTY CROWN、10-FEETのラインであった。
 インストゥルメンタルでクールでタフな良さをあえて4ビートで伝えたSOIL & "PIMP" SESSIONS。世界を代表するダンスホール・サウンドクルーMIGHTY CROWNは、あえてレゲエやダンスホールのDeeJayやスペシャルプレートのダンスホール・マナーで盛り上げた。中でも数日前、残念ながらこの世を去ったBUDDHA BRANDの故Dev Largeにも捧げられた「人間発電所」のプレイは感動的な一場面を生んだ。

 そんな中、最もジャンルの交差を見せたのは10-FEETであった。“バンドやロックも楽しいでしょ?” と言わんばかりのそのステージング。ラガマフィンを交えた昔からの代表曲「RIVER」、ハネるリズムとフローが印象的な「super stomper」、そして、RHYMESTERも参加し、ヒップホップMeetsメロディックパンクの「focus (re-focus) feat. RHYMESTER」。また「STONE COLD BREAK」では、直前で声を掛け、急遽客演が決まったFIRE BALLのSUPER CRISSとCHOZEN LEEも登場。疾走感のあるサウンドに2人のDeeJayが乗るハイブリッドさが想い出深い。

 この日は、同世代、同朋ヒップホップアクトも登場した、その代表格KGDR(ex.キングギドラ)は、20年前の名盤アルバム『空からの力』からの楽曲もふんだんにラップ。リアルタイムじゃない世代も多い中、会場中が一緒に歌っている様は、彼らの楽曲が未だ輝きを失っていない証のようにも思えた。

 この日、一番の大人な雰囲気を味あわせてくれたのがスガ シカオであった。「実質上のトリですよ、これは」(宇多丸)の呼び込みの際の言葉通り、彼の放つファンクソングを皆が楽しむ。フィリーソウルのストリングスの絡みが会場を洗練された雰囲気で包んだ「コノユビトマレ」、「はじまりの日」では、作品同様Mummy-Dが切り込むようにラップを交える。この日は他にも、骨太なグルーヴの「Progress」、ねっとりとしたジューシーな「アイタイ」、ファンキーなパーカッションを印象的に使った「午後のパレード」等、大人の時間を築き上げていく。

 陽も沈み、いよいよトリのRHYMESTERの登場だ。
 KGDRの3人によりイントロデュースされ登場した彼ら。ここからの40分は、文字通り彼らが昔から標榜していた“キングオブステージ”が展開される。「ONCE AGAIN」に続きハネるリズムに勢いとノリの良さ、<変わり続ける>というフレーズが会場中に勇気を与えた最新曲「Still Changing」へ。今夏に発売されるニューアルバムで、何曲かプロデュースを手掛けたPUNPEEも客演し、一足先に新作収録曲「SOMINSAI」も披露。宇多丸による♪そこにヤツがいない♪のバースが“故Dev Large”への追悼にも響いた「It’s A New Day」。「The Choice Is Yours」、「ゆめのしま」のアッパー2連発が会場に心強い勇気を注入していく。そして、6人組ファンクバンドMOUNTAIN MOCHA KILIMANJAROが呼び込まれ、彼らをバックに放たれた、最新曲にして、このフェスのテーマ曲でもあった「人間交差点」が炸裂した際には、骨太なグルーヴとブ厚いホーン隊によるフレーズのリフレインが会場全体をバウンスさせた。

 アンコールは2曲。黎明期からの代表曲と、<これがあってこその今のRHYMESTER>を魅せてくれた。「K.U.F.U」では、バンドをバックにDJ JINのスクラッチとブレイクビーツネタ、リリックに関しても彼らがここまで辿ってきたバックインザデイを、一緒に気高く振り返らせてくれた。そして、最後は会場も大合唱した「B-BOYイズム」で締め。最後はステージ/会場全員にて「プロの一本締め師」こと山本仁=DJ JIN仕切りの一本締めにて幕を閉じた。

「これは、みんなで作ってきたシーンだ」
 これはアンコール曲に入る前の宇多丸の言葉なのだが、彼が言った「シーン」には、2つの意味が含まれていたように思う。一つは、この日のステージから見た壮観、もう一つは彼らが牽引してきた、ヒップホップというミュージックシーンだ。 まさしく、ここまでしっかりと歩き、築き上げた者にしか味わえない絶景が、そこには広がっていたことだろう。

 このフェスは今年を皮切りに今後も続けていく予定とのこと。今後ますます、この“交差点”は、絶え間なくたくさんのアーティストやオーディエンスが行き交うことだろう。ちょっと気が早いが、今からそれがとても楽しみだ。

【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:cherry chill will、渡辺志功】

tag一覧 ライブ フェス RHYMESTER

リリース情報

人間交差点 / Still Changing(初回限定盤B)[CD+DVD]

人間交差点 / Still Changing(初回限定盤B)[CD+DVD]

2015年04月29日

ビクターエンタテインメント

[CD]
1.人間交差点
2.Still Changing
3.人間交差点 (Instrumental)
4.Still Changing (Instrumental)
5.人間交差点 (A cappella)
6.Still Changing (A cappella)

[DVD]
「KING OF STAGE VOL. 11 THE R RELEASE TOUR 2014 AT ZEPP TOKYO」
1. The R~Walk This Way
2. 午前零時~Once Again
3. The Choice Is Yours
4. K.U.F.U.
5. サバイバー
6. ちょうどいい (Piano Session With Kan Sano)
7. It’s A New Day (Piano Session With Kan Sano)
8. Pop Life (Piano Session With Kan Sano)
9. After The Last~そしてまた歌い出す
10. Just Do It!
11. 付和Ride On
12. Hands
13. ザ・グレート・アマチュアリズム (Piano Session With Kan Sano)
14. ゆめのしま (Piano Session With Kan Sano)
15. ラストヴァース
16. This Y’all, That Y’all (Session With SCOOBIE DO)
17. 余計なお世話だバカヤロウ
副音声:宇多丸・Mummy-D・DJ JINによる元祖・生(ビール)コメンタリー

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お知らせ

■ライブ情報

頂 -ITADAKI- 2015 in Shizuoka
2015/06/07(日)静岡 吉田公園特設ステージ

NATSU BIRAKI MUSIC FESTIVAL 2015
2015/07月/19(日)所沢航空記念公園野外ステージ

TOKAI SUMMIT’15
2015/07/26(日)ナガシマスパーランド芝生広場・野外特設ステージ

SUMMER BOMB produced by Zeebra
2015/08/15(土) ZEPP DIVERCITY TOKYO

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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