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新モードへ突入!! 赤い公園、全国ワンマンツアーファイナル

赤い公園 | 2015.06.08

 ピン、と張り詰めたような静寂から赤い公園のライブは始まった。

 白い衣装に身を包んだ4人がステージに姿を現すと、佐藤千明が静かに歌い始める。ゆったりとしたフレーズから徐々に感情の水位を増していき、津波のような轟音に展開する。音源としては未発表ながらデビュー前からほとんどのライブでラストに披露していた名曲「ふやける」だ。この曲を一発目に持ってきたことからも、バンドが今までとは違うモードに入ったことが伝わってくる。

 この日の東京・新木場STUDIO COASTのライヴは、5月5日から全国11都市を回ってきたワンマンツアー「赤い公園マンマンツアー2015 初夏 ~迫る!初っ夏ー!~」のファイナル公演。リリースを引っさげての通常ツアーではない。しかし、だからこそ、ここからバンドの新しい一歩を刻もうという4人の意志が伝わってくるライブだった。

「新木場ツアーファイナル、ついてこいよ! よろしく!」。佐藤が声をかけ「サイダー」へ。手拍子がフロアに湧き上がる。序盤は「はてな」や「のぞき穴」とアグレッシブなナンバーをたて続けに披露し、熱量を上げていく展開だ。歌川菜穂(Dr)がパワフルなドラムを叩き出し、藤本ひかり(B)が髪を振り乱してプレイする硬質なベース、津野米咲の存在感あるギターと、4人が一体になった硬質なグルーヴを叩きつけていく。変則的なフレーズを次々と繰り出しながら、最終的にはポップな快感に雪崩れ込んでいく赤い公園ならではのユニークな音世界を作り出していく。

 MCではツアーの思い出を振り返りつつ、藤本が「最終的にマネージャーが痔になって終わったよね」と観客を笑わせる。奔放で肩の力が抜けたムードを見せつつも、「交信」では4人で、「何を言う」では佐藤と津野の二人で、壮大な風景を描き出す。「今日しかできないライブをしたいなと思って」とMCで佐藤が語った通り、インディーズ時代から『透明なのか黒なのか』『ランドリーで漂白を』というメジャーデビュー後のミニアルバム2枚、『公園デビュー』から昨年の『猛烈リトミック』までバンドの歩んできた道程を改めて振り返るようなセットだ。

 続いては「自分たちに夏の曲がないから、人の夏の曲を歌いたいな、と。そういう企画です」と言ってカバーコーナーへ。お客さんにタンバリンと鈴を渡して、ゆず「夏色」、ZONE「secret base~君がくれたもの~」、PUFFY「渚にまつわるエトセトラ」を佐藤と津野の二人で楽しげに歌う。曲の途中で歌川が浮き輪をハメてステージに出てきては見事にハモったりと、見せ所も沢山。「やらなくてもいいことやるって、楽しいです!」という津野の言葉どおり、スペシャルなツアーだからこその企画だ。

 後半は、お客さんの拍手でアンケートをとっての「いちご」から、固唾を呑むような静寂から感情を爆発させる「きっかけ」、津野がギターノイズを巧みにあやつる「透明」へと続く。衝動を詰め込んだような、不穏なヘヴィネスを描いたバンドサウンドを響かせる。

 そして、続く「風が知ってる」を歌い終えると、佐藤は深々と頭を下げ、一度ステージを降りる。津野がMCで「我々はシングルのカップリングでもカバーをやってるんです。みんなで『平井さん!』って言うと出てきてくれるはず」と語り、再び呼びこむと、アフロをかぶり、サングラスとラメのレイを首にかけた佐藤が登場。平井堅の「POP STAR」だ。原曲の持つキラキラしたテイストをクールで品がある自分たち流のガールポップにアレンジする。こういうカバーのセンスもバンドの大きな魅力の一つだと思うので、今回だけにとどまらず次回も是非やってほしい、と思う。

 終盤は「楽しい」からポップに弾けていく展開。「ソロ回し行くよ!」と、津野、藤本、歌川それぞれのソロも披露し、「今更」では「せーの!」の掛け声でフロアを一つにし、そして本編ラストは「NOW ON AIR」。「次で最後の曲です! みんな一緒に歌ってください、よろしくね!」と佐藤は告げて、ハッピーなムードで包み込んで4人はステージを降りた。

 これまで多くのライブでは「ふやける」がこの場所で披露されていたことを考えると、赤い公園というバンドにとって「NOW ON AIR」という曲は本当に新たなマイルストーンになったんだろう。そのことが、改めて伝わってくる。

 アンコールに応えて4人が登場し、「初めての試みで勉強になったことも沢山あったので、新作に向けて頑張っていきます」と津野。具体的なリリースの予定はまだないが、『猛烈リトミック』以降、3枚目のアルバムに向けて曲は着々と生まれているようだ。

「次は新曲をやります」と、披露したのは「KOIKI」。アップテンポなビートに、一筋縄でいかない曲展開をはさみつつも、サビではメロディの半径が大らかに広がる一曲。とてもポップで、熱のこもった一曲だ。ラストは「100秒やって帰ります!」と「絶対的な関係」。「新木場だけの秘密!」と叫んで、ライヴは終了。

 バンドの持つ巨大な可能性を改めて感じさせるような一夜だった。

【取材・文:柴 那典】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル 赤い公園

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リリース情報

猛烈リトミック(初回限定盤) [CD+DVD]

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2014年09月24日

ユニバーサル・ミュージック

1.NOW ON AIR
2.絶対的な関係 (4th single)
3.108
4.いちご
5.誰かが言ってた
6.私
7.ドライフラワー
8.TOKYO HARBOR
9.ひつじ屋さん (3rd single)
10.サイダー
11.楽しい
12.牢屋
13.お留守番
14.風が知ってる (3rd single)
15.木

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セットリスト

赤い公園マンマンツアー2015 初夏
~迫る!初っ夏ー!~
2015.5.28@新木場 STUDIO COAST

  1. ふやける
  2. サイダー
  3. はてな
  4. のぞき穴
  5. ひつじ屋さん
  6. 血の巡り
  7. 108
  8. ナンバーシックス
  9. 交信
  10. 何を言う
  11. カバー(夏色/secret base~君がくれたもの~/渚にまつわるエトセトラ)
  12. いちご
  13. きっかけ
  14. 透明
  15. 風が知ってる
  16. POP STAR
  17. 楽しい
  18. 今更
  19. NOW ON AIR
Encore
  1. KOIKI (新曲)
  2. 絶対的な関係

お知らせ

■ライブ情報

VINTAGE LEAGUE 100th performances special
2015/07/05(日)渋谷CLUB QUATTRO

ROCK IN JAPAN FES.2015
2015/08/09(日)国営ひたち海浜公園

RISING SUN ROCK FESTIVAL 2015 in EZO
2015/08/14(金)石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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