前へ

次へ

a flood of circleが放った無敵感、現在進行形で戦い続ける強さがそこにあった

a flood of circle | 2015.07.17

 「今日見るまで不安だった人もいるかもしれない。でも、大丈夫です。僕たちは転がり続けます」。MCで佐々木亮介(Vo・G)がそんなふうに言ったa flood of circleの自主企画「What’s Going On」。サブタイトルに“BRAND-NEW RIDERS”とつけた今回のライブは、大阪、名古屋でのtricotとの対バンを終えて、渋谷クアトロの1日目はGLIM SPANKYを迎えて開催(2日目はthe band apart)。それは3人の新体制となったフラッドが“決して立ち止まらない”という意志表明する渾身のライブだった。

 この日は名づけて、ブルース対バン。フラッドと同じく、古いブルースやロックンロールをルーツに持つ男女ふたり組、GLIM SPANKYからライブの口火を切った。細身のパンツを着こなす亀本寛貴(G)、レトロなデザインのワンピースを着た松尾レミ(Vo)、その佇まいがすでに異質な存在感。ジャニス・ジョプリン、1971年の名曲「Move Over」のカバーを交えながら、およそ20代とは思えないレミのドスの効いたハスキーボイスが会場を熱く揺さぶっていく。どこか凛とした佇まいのなかで、ラストは等身大の想いを込めた「大人になったら」を披露。彼女たちらしいパフォーマンスでフラッドへ繋いだ。

 革ジャンを肩に羽織り、「さあ、来い」と言わんばかりに指先をくいっと動かして、フロアを挑発すると、いきなり「ウォー」と叫び声をあげた佐々木亮介(Vo&G)。不敵な表情とともに、a flood of circleのライブは「One Shot Kill」からスタートした。《崖っ淵の先へ》と絞り出すような叫びをあげた「スカイウォーカー」では、HISAYO(B)のベースが唸りをあげる。文字通り紅一点、姐さんの赤い口紅が、泥臭いステージに美しく映えていた。そして、疾走感溢れる「YES」へ。わずか1ヵ月で作り上げたという『ベストライド』という作品の衝動を、そのままライブハウスで再現するような、すごい気迫でライブは進む。

「Black Eye Blues」ではギターを置き、ハンドマイクでラップする佐々木が最前列の柵に乗り上げると、お客さんの頭上へと足を踏み出した。その場所から、不安定な足場をものともせず、挑みかかるようにフロアを煽る。「Moby Dick」では、白いタンクトップ姿の渡邊一丘(Dr)が長い髪を振り乱して、軽快なドラムソロ。すかさず佐々木が「俺の相棒、渡邊一丘!」と、その名を呼ぶと、「ギター……俺っ!」。ぐいっと一歩前に出た佐々木のロックギタリストとしての存在感も抜群だ。

「渋谷、めちゃめちゃ良いですね。俺は機嫌良いです(笑)」と、佐々木。その顔に満足感が滲み出ている。オリジナルとは異なるバンドアレンジで届けた「Trash Blues」から、懐かしいナンバー「Flashlight & Flashback」へ。今回からサポートギターに迎えた藤井清也(The SALOVERS)がやや控えめな位置で演奏していると、「前に出ろ」とでも言うように、佐々木がその背中を押した。そして、「まだまだ楽しみはこれからだ!」と、すでに蒸し風呂状態のフロアをさらに踊らせる「Buffalo Dance」「KIDS」と続けば、フロアからはメンバーの名前を叫ぶ声があちこちから飛び交う。会場に立ち篭るものすごい熱気のなか、それでも絶対に革ジャンを脱がない佐々木の顔は汗ダクだった。

 「ブルースとかロックンロールとか言ってると、世の中の端っこに追いやられる」。そんなふうに語りかけたのは、ライブの終盤。「でも君たちがいれば、それを真ん中に取り返しにいけるから」と言って、『ベストライド』のなかでもバンドにとって大切な1曲となった「心臓」を披露した。“1万人の前でロックンロールを鳴らしたい”と、本気で夢を語る佐々木が、それに相応しい想いを込めて作ったロックバラードだ。終わりへ向かって明日も生きる、そんな命の讃歌がクアトロを感動で満たしていく。そして本編を締めくくったのは、ここ最近のバンドのモチベーションを象徴するナンバー「Golden Time」と「ベストライド」だった。《世界を塗り替えるんだ 今日こそ》。それを決して不可能ではないと思わせる無敵感こそロックンロールの、音楽の素晴らしさなのだと思った。

 アンコールでは、まずひとりでステージに現れた佐々木が、再びGLIM SPANKYのふたりを呼び込んだ。この自主企画のタイトルにもなっているマーヴィン・ゲイの「What’s Going On」に日本語詞をつけたバージョンで、激渋なハスキーボイスが共演。ギターの亀本は、ここぞとばかりに先輩風を吹かせる佐々木の「カメちゃん、もう1回」という突然のフリにも、甘いフレーズできっちり応えるナイスなプレイを見せていた。

 GLIM SPANKYとの共演を終えると、「ボロボロのストーリーを歩んでいる奇跡みたいなバンドを紹介してもいいですか?」と、HISAYOと渡邊を再び呼び込んだ佐々木。最後の一滴まで絞り出すような全力のパフォーマンスで、「リヴェンジソング」と「GO」を繰り出すと、最後は生声で「また会おうぜ!」と、一言。ライブは幕を閉じた。

 思えば、この日のセットリストは『ベストライド』の曲を中心に、ここ最近の曲ばかりだった。間もなく10周年を迎えるバンドのいまがベストだと、言葉ではなく、そのステージで証明するライブ。これが現在進行形で闘うバンドの正しい姿だ。

 a flood of circleは、11月にも東名阪で自主企画「AFOC presents VS tour “BATTLE ROYAL 2015”」を開催。すでにヤバい対バン相手が決定しているようだが、“バトルロイヤル”というタイトルからも、すでにとんでもないライブになる予感しかない。

【取材・文:秦理絵】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル a flood of circle

リリース情報

ベストライド

ベストライド

2015年06月17日

Imperial Records

01 ベストライド
02 One Shot Kill
03 YES
04 Trash Blues
05 心臓
06 リヴェンジソング

このアルバムを購入

お知らせ

■ライブ情報

AFOC presents VS tour “BATTLE ROYAL 2015”
2015/11/20(金)なんばHatch
2015/11/22(日)名古屋ダイヤモンドホール
2015/11/27(金)東京 ZEPP DIVERCITY TOKYO
*全公演対バンあり

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る