SUPER BEAVER、多くの人へ想いを届けた感動の全国ツアーファイナル
SUPER BEAVER | 2015.07.23
一度はメジャーデビューまで果たしたバンドが、インディーズで再スタートを切り、そこからメジャー時代の自分たちを超えて、恵比寿リキッドルームにたどり着いた。これは決して簡単なことではない。SUPER BEAVERが4月から全国23ヵ所で開催してきた「『愛する』 Release Tour 2015~愛とラクダ、10周年ふりかけ~」のツアーファイナルは、4人がひとつの意志となって想いを届ける、ビーバーだからこその感動的なライブだった。
開演と同時に強い光に照らされて、ステージにはメンバーのシルエットが浮かび上がった。渋谷龍太(Vo・G)が「よく来たなー!」と叫ぶと、いきなり「らしさ」「わたくしごと」という、昨年リリースの両A面シングルが続けて披露された。「こっちは4人だ!かかってこい!」と、強く煽る渋谷の声に、フロアからは一斉に手があがる。そして、前作のアルバム『361°』収録の「鼓動」へ。こころの奥に熱いマグマを秘めながら、それがまだ噴出しないようにと丁寧に紡いだ、《転んでも 転んでも 転がり続けていられれば良い》というフレーズ。これがバンドの歩んできた道とも重なって、まだ3曲目なのに胸が熱くなってしまう。
柳沢亮太(G)と上杉研太(B)の両翼が交互の牙を剥いたハードコアチューン「サイレン」や、藤原”27才”広明(Dr)によるバスドラのキックで踊らせた「Hello, World」など、10周年らしい、新旧織り交ぜたナンバーでライブは進む。あらゆる物事にクエスチョンマークを投げかけるビーバーの歌に被せるように、渋谷は1曲ごとに熱い言葉を訴えてくる。「あの日思った感情の全てが今日に繋がるとは思わないけど、紛れもなく、ここに来れたことは、あなたのおかげです」と伝えた「おかげさま」では、メンバー4人のハーモニーが楽曲を彩り、渾身のロックバラード「あなた」ではダイナミックな歌が響き渡った。さっきまでの激しいフロアの様子から一転、お客さんはそれをじっと聴き入っている。
ここでゲストコーナー。ビーバーのライブにゲストを迎えるのは今回が初めてだ。渋谷がソロで活動するときの名義“澁谷逆太郎”のナンバー「世紀末は雨に降られて」を、OverTheDogsの星英二郎を迎えてゆったりと披露すると、続く「Q&A」では、『愛する』のレコーディングにも参加しているSCANDALのMAMIが登場。渋谷とのオシャレなデュエットを聴かせて、ビーバーの男くさいステージがパッと華いだ。
「それでも世界が目を覚ますなら」「361°」と、お客さんと一緒に歌いながら、共に素敵な空間を作り上げていく後半。「大変に楽しいです!ステージに立っていると、自分が楽しんでいいのかなと思うことがある。だけど本当に楽しいと、そんなことどうも良くなるなんだと、改めて思いました」と、ライブ中にも思考するのが渋谷らしい。「言えって」では、藤原がスティックを掲げて手拍子を煽り、上杉はフロアに降りてお客さんの近くでベースを弾いていた。伝えたいことがたくさんあるがゆえに、リスナーを鼓舞するライブがビーバーの魅力だけれど、この日のライブはそれだけじゃなかった。ビーバーが“あなた”と呼ぶお客さん一人ひとりと、その瞬間、その場所を楽しもうとするムードが溢れていた。
最新アルバム『愛する』から、バンドが一歩前に進んだことを感じさせる名曲「証明」を披露すると、ライブはクライマックスへ。柳沢、上杉、藤原の3人も、メインボーカルに引けをとらない、必死の形相でコーラスを歌う。そして、「言わなくてもいいというのは驕りだと思う。想いは言わないと伝わらない」と、優しい感謝のうた「ありがとう」へと繋いだ。このとき、フロアのお客さんから「愛してるよっ!」の声があがって、「恥ずかしいな(笑)」と少し照れた渋谷。だが、ひとたび歌がはじまれば渋谷は何の衒いもなく、そんなことも言えてしまうのだ。ラストナンバーは「愛する」。藤原の軽快なマーチングドラムにのせて、みんなでラララと大合唱をすると、フロアは言い様のない幸福感に包まれた。
全22曲の本編のあと、アンコールでは新曲が披露された。《言葉なんて信じない/信じてるのはあなただけ》と歌い出す「ことば(仮)」というタイトルの曲は、心地好い疾走感に、ビーバーらしい問いかけが詰まった1曲だった。そして、「10周年も、ツアーファイナルもただ節目だから。特別なものじゃないけれど、今日この景色を見ると特別なものだと思います」と、最後に言うと、柳沢のエレキギターに渋谷が歌をのせた「生活」、衝動的なロックナンバー「LIP」まで終えて、完全燃焼のライブは幕を閉じた。
結成10年で恵比寿リキッドルームとは、いまのシーンの速さからすると、SUPER BEAVERは遅咲きと言われるバンドかもしれない。だが、ようやく機は熟した。決して流行に左右されず、熱い想いを音楽にぶつけてきた彼らの音楽は、この先もっと多くの人に届くだろう。そして、一度届けばこのバンドは決してわたしたちを裏切らない。
【取材・文:秦理絵】
【撮影:HayachiN】
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リリース情報
お知らせ
「都会のラクダ」 Tour 2015
~秋味、サシ飲み~
2015/10/07(水) 仙台MACANA
2015/10/16(金) 高松DIME
2015/10/17(土) 福岡CB
2015/10/23(金) 金沢vanvan V4
2015/10/25(日) 名古屋Electric Lady Land
2015/11/05(木) 梅田Shangli-La
2015/11/13(金) 広島Cave-Be
2015/11/27(金) 赤坂BLITZ ※ワンマンライブ
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