SUPER BEAVERは、“意志”――新曲『らしさ / わたくしごと』に込めた想いとは
SUPER BEAVER | 2014.09.22
- EMTG:柳沢くんが入院したって聞いて心配してたんだけど。どんな容態なんですか?
- 渋谷:大丈夫だと思います。そう信じてます。全くご飯を食べられない状況から、牛乳を飲めたとかそういう話を聞くので。確実に良くはなってきてると思います。
- EMTG:というわけで、今回はひとり渋谷くんひとりインタビューです。
- 渋谷:よろしくお願いします!
- EMTG:初登場ということで、少しバンドの経緯をお聞きしたいんですけど。結成は高校生で、すぐにコンテストで優勝してますね?
- 渋谷:ヤマハの「TEENS MUSIC FESTIVAL」に2年連続で応募したんです。1年目で全国大会まで出させてもらって、優勝はできなかったんで、悔しかったから「来年優勝しよう」って、2年目に出て優勝しました。
- EMTG:それで「俺たちヤバいんじゃない?」みたいな感じになりませんでしたか?
- 渋谷:この当時はいろんなことを知らなかったので、夢やら希望しかなかったですね。調子にのるって言うよりも、「わーい!」って手離しで喜ぶ感じでした。
- EMTG:で、あれよあれよとエピックからメジャーデビューすることになって?
- 渋谷:正直、何も知らなかったから、メジャーデビューすれば売れるものだと思ってたんですよ。「安泰だ、やったぜ!」と思ってました。だから決まった当時はうれしかったですけど……。
- EMTG:ここからバンドの紆余曲折が始まる。
- 渋谷:まさかあんなことが起こるとは(笑)。
- EMTG:エピック時代は映画『ソラニン』の挿入歌を担当したり、他の新人バンドがうらやましがるような経験もしたと思うんですけど。
- 渋谷:まぁ……要は、世の中で言う“大人”っていう存在に僕らが勝てなかった結果なんです。自分たちの意志がともなってなかった。どういうものが自分のなかで音楽なのかっていうことすらわからなくて、「こうしなさい」って言われれば、こうするのが正しいとずっと思ってたんです。それをこなすことがプロの役割なんだと思ってたから。
- EMTG:若かったのもあったんでしょうね。
- 渋谷:うん……で、限界がきまして。『幸福軌道』っていうアルバムを出した時に、僕が完全にダメになっちゃいました。メンバー間もギクシャクしてて。もうこれが音楽って言われるんなら、二度と音楽をやらなくていいやってぐらい。で、僕が倒れて病院に運ばれたんです。病院の枕元にいるマネージャーに「僕はもう辞める」って言ったりして。
- EMTG:当時、渋谷くんにとって一番つらかったのは何でしたか?
- 渋谷:うーん……自分じゃなくなっちゃうような感覚っていうのが大きかったですね。アイデンティティの崩壊というか。僕らと関わってくれる大人も、みんな本気なんです。だけど、そのベクトルがバラバラに感じてしまった。そこに僕らの音楽が好きだっていうのが見えづらかった。それと……贅沢かもしれないんですけど、それまで僕らは自分らのお金でバンド活動をしたことがなかったんですよ。それがすべてではないけど、だから大人たちに対してちゃんと戦える知識も経験もなかったんですよね。
- ETMG:じゃあ、もっと自分たちで経験を積んでみようっていう想いで新しいレーベル「I×L×P×RECORDS(アイ・ラブ・ポップミュージック)」を立ち上げるわけですね。
- 渋谷:まぁ、メジャー辞める時はめちゃくちゃ暗かったし、全くそんな気はなかったですけどね。ただ、あの頃は横のつながりを大事にしてこなかったんです。だから今度は自分らの足でツアーを何本もまわって、今までお世話になった人に、誰も介さず、直接話がしたかったんです。
- EMTG:そうやってもう一度イチからやり直して……。今年の春に出した『361 °』からは、NOiD(eggman内に発足した新レーベル)と一緒になるわけですが。もう一度、誰かとやってみようと思ったのは?
- 渋谷:やっぱり次やるとしたら、僕らを真正面から見てくれる人、僕らの音楽、人間性を、まず第一に好きだって言ってくれる人と一緒にやりたかったんです。マネージャーの永井(優馬)は僕らと同世代なんですけど、すごく仲がよくて。柳沢がいろいろ窓口になって業務的なことをやっていくなかで、「お前は曲を作って、他の業務は俺がやるよ」って言ってくれた。「じゃあ、すみません、ぜひ力を貸してください」っていう感じですね。
- EMTG:で、最近のSUPER BEAVERはいろんなバンドと対バンしたりして、かなり注目が集まってきてると思うんですが。実感はありますか?
- 渋谷:やっぱり『361°』っていうすごく自信のあるフルアルバムができて。あのアルバムは360°=1周まわって帰ってきたけど同じ場所じゃないっていう意味を込めて作ったんですけど。それきっかけで、NOiDと一緒にやらせてもらって。パンク界隈のバンドに声をかけてもらったり、いろんな先輩から可愛がってもらうことが増えてきた。垣根がどんどんなくなってくるような、そういう意味で面白いことができてると思いますね。
- EMTG:垣根を超えるとは少し意味は違うかもしれなけど、SUPER BEAVERの音って、もちろんライブハウスで聴いてもすごく盛り上がれるロックなんだけど、テレビから流れてきても違和感なく聴いてもらえるようなポップさもあると思うんですね。
- 渋谷:それはすごくうれしいです。僕はずっと“やむを得ない感”っていうのを目指してて。
- EMTG:やむを得ない感?
- 渋谷:どんなに頭が固い人でも――「俺はパンクしか聞かない」とか「ヒップホップしか聞かない」っていう人でも、たとえばテレビから流れてくるアイドルとか、J-POPの音楽が頭から離れなくなっちゃって、うっかり口ずさんじゃうことってあると思うんです。それはポップミュージックにしかできないことだと思うんですね。それをどうしても体現したくて。誰もが、はからずとも良いなと思ってしまう状況を作ってやりたい。そのなかで、今年、10-FEETが僕らをフェスに呼んでくれたりとか、MAN WITH A MISSIONがツアーに連れて行ってくれたりとか、僕らと全然違うジャンルの人たちが、僕らの音楽を自分らのお客さんの前で披露する機会を与えてくれて。そこで何かを残せる自信が今はあるんです。
- EMTG:実際にどうでした?お客さんの反応は。
- 渋谷:いわゆるパンク界隈のバンドとやらせてもらう時は、踊りたかったり、ダイブしたりとか、ワーッて騒ぎたい人たちの前でやるわけですよ。そこで僕らはスタンドマイクでぐって始まる、歌ものから始めたりするんです。
- EMTG:攻めますね(笑)。
- 渋谷:僕ら、その感覚が大好きなんです。合わせに行かない。そうなると、お客さんは「え?」ってなる。「踊れねぇじゃん、何なん?」みたいになるんですけど。そこにMCとかでお客さんとの距離を近づけていく。で、偏見をもって見てた人でも、最後は「なんかよかったね、結局」とか言ってくれたりする、それがうれしいんですね。
- EMTG:なるほど。すでにライブで「らしさ」は披露してるんですか?
- 渋谷:もうやってますね。曲自体は今年の4月末ぐらいに話をもらって……。
- EMTG:話っていうのは、今回、主題歌になってる『ばらかもん』の?
- 渋谷:そうです。メンバーは全員、その『ばらかもん』っていうアニメを読んだ事がなかったんですけど。でもやってみようって。その時は、スケジュールも相当タイトだったんです。そしたら、メジャー期の感じをみんな覚えてるので、「あの時と一緒じゃね?」みたいな感じで(笑)、ニコニコしながら。柳沢が2日くらいでバーッと曲を書いて、スタジオで僕らが作り込んで、「あの時の経験生きたね、アハハハ」みたいな感じでした。
- EMTG:柳沢くんは漫画を読んだって?
- 渋谷:ヤナギは読んで作ったみたいです。それでも寄せてねーなと思ったんですけど(笑)。僕らが今歌いたいことを歌っただけ。だから、『361°』の「あなた」っていう曲と、あとは「×」っていう曲と、実は歌ってることがほとんど一緒なんです。
- EMTG:今回だけじゃなく、SUPER BEAVERの曲では、自分らしく生きることとか、意志を持つことの大切さみたいなことは、繰り返し歌われるテーマじゃないですか?
- 渋谷:いろんな情報がすごく多くて、世の中にはたくさんの指針が増えすぎちゃってると思うんですよ。今の世の中はこれがかっこいいんだよ。これをかっこいいと思わないんだったら、あなたおかしいんじゃない?とか。それって不自然なことだと思うんです。しかも提示されてることを噛み砕かずに自分の考えにしてしまっている風潮を感じる。それに対する一種のフラストレーションであり、もっとこうなったらいいのにっていう前向きな希望でもあるんです。それは当然柳沢も持ってる考えで。僕が表現すると少し硬くなっちゃうんですけど(笑)、柳沢の持つポップセンス、メロディーセンス、言葉の選び方のセンスによって、この曲にどんぴしゃにハマった。僕の中で「伝えたいのはこれだ!」っていう再発見ができるんです。今回のシングルは歴代で一番それが強いかもしれないですね。
- EMTG:SUPER BEAVERは歌い手と作詞・作曲を手がけるのが別の人なんですけど。そのメッセージにちゃんと歌い手も共感してるのは面白いところですね。
- 渋谷:結成当初はこんなにうまくいってなかったと思うんですよ。柳沢が書く歌詞について、「どういうことなんだろう?」って思いながら歌ってたことはあるんです。でも、僕は得意分野なことを得意なやつがやるのが、一番いいと思うんですね。ポップセンスのあるやつが曲を書いて、いろんなことを喋りたいやつがフロントに立って歌う。それがバンドとして、きれいなかたちだと思うんで。役割を決めつつも、その大枠が、SUPER BEAVERの意志として固まってるのが、僕らのバンドの特徴であり、強みだなぁと思うところですね。
- EMTG:今回は2曲目に入ってる「わたくしごと」も「らしさ」の延長っぽい印象でした。
- 渋谷:ほぼ一緒と言っても過言ではない。言い方が違う、アプローチが違うだけですね。
- EMTG:わりと王道なギターロックの「らしさ」と、今までのSUPER BEAVERになかったような、個々の演奏が奔放に暴れまわるソリッドな「わたくしごと」と。
- 渋谷:「わたくしごと」では、やったことないリズムを入れてみました。楽しい曲ですよね。僕はジャンル云々は、アプローチの違いでしかないとずっと思ってるんです。ハードコアパンクっていう手法をとろうが、メロディックコアっていう手法をとろうか、ヒップホップ、演歌、R&B、なんでも。ただのアプローチの仕方だと思うんで。1個言いたいことの基盤があって、余分なものをどんどん削っていって、芯のものを見れば大体みんな一緒だと思うので。それもこの1枚で体現できたんじゃないかと思います。だから両A面はあえてなんですよ。2曲目もカップリングじゃない。ぜひ両方聴いてもらいたいです。
「SUPER BEAVERはバンドである以前に人であり、人である以前に意志である」。SUPER BEAVERのボーカルの渋谷龍太はライブのMCでこんなふうに口にする。
結成は2005年。一度はメジャーデビューも果たした順風満帆なバンドの滑り出しから、紆余曲折を経て再びロックシーンで注目を集めるまでに這い上がってきた4人組ギターロックバンド、SUPER BEAVER。彼らが9月24日にリリースするニューシングル『らしさ / わたくしごと』は、ギター柳沢亮太が書くグッドメロディにのせて、聴き手に「自分らしさとは?」を問う2曲を収めた。EMTG MUSIC初登場となる今回は、いくつもの節目を乗り越えてきたバンドの歴史を振り返りながら、最新シングルのこと、そこにある“SUPER BEAVERの意志”について聞いた。取材の直前、ギター柳沢が入院したとの知らせがあり、今回は渋谷がひとりでインタビューに答えてくれた。
【取材・文:秦理絵】
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お知らせ
『らしさ / わたくしごと』Release Tour 2014 ~ラクダらしさ~
2014/11/24(月・祝)渋谷CLUB QUATTRO(ワンマン)
2014/11/28(金)HEAVEN’S ROCK Utunomiya VJ-2(対バン)
w)空想委員会 / Suck a Stew Dry / and more...
2014/11/29(土)仙台CLUB JUNK BOX(対バン)
w)空想委員会 / Suck a Stew Dry / 赤い公園
2014/12/12(金)名古屋CLUB UPSET(ワンマン)
2014/12/14(日)大阪LIVE SQUARE 2nd LINE(ワンマン)
2014/12/19(金)福岡Queblick(ワンマン)
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