アカシック初のワンマンライブ、東京公演、渋谷クラブクアトロをレポート
アカシック | 2015.07.29
意表をついたポップセンスと演奏力、そしてボーカル理姫の独特なキュートさと存在感で、ジワジワとその評判を広げているレペゼン横浜な5人組、アカシック。6月にメジャーデビューミニアルバム『DANGEROUS くノ一』をリリースし、レコ発ツアーの東京公演を渋谷クラブクアトロで迎えた。しかも、初のワンマンライブである。
会場に到着してフロアを見渡すと、彼女たちの音楽性と同様、色とりどりな客層である。最近のロックバンドのライブと言えば、お気に入りのバンドTを着込んだ若者が多いイメージだけど、この場には当てはまらない。もちろん、アカシックのTシャツを着たファンは多く見かけたけど、それよりも普通の私服を着た男女が多く、一見すると音楽好きには見えないギャルの姿もあった。かと思えば、メタル雑誌「BURRN!」を熱心に読みふけってる人もいたり、「今日は一体誰のライブを観に来たんだっけ?」と一瞬戸惑うような光景が広がっていた。そんな会場の雰囲気にどぎまぎしてるうちに場内は暗転。
ステージ上に現れたメンバーのうち、奥脇達也(Gt.)と黒川絢太(B.)はさっそくステージ前方まで進み出し、フロアの様子をうかがう。満面の笑みだ。今日という日を楽しみにしていたことがありありと分かる。「ああ、もう俺、このまま死んでもいい」と言わんばかりの素直な表情が好感度高い。オープニングナンバーは「サイノロジック」。クールにパフォーマンスをするボーカルの理姫だったが、間奏の途中で思わず笑みが溢れる。彼女も本当にこの日を待ち望んでいたのだろう。アカシックというバンドをやる喜びを、楽しさを、今、自分たちの目の前にいる観客に伝えるだけ。そんな純粋な思いが最初から強烈に伝わってきた。良いバンドだ。
そんなバンドの思いが反映されているのか、勢いのあるセットリストで攻め立てる。ボーカル理姫のキャラクター、バンドの見た目やイメージとのギャップに驚かされながら「アルカイックセンチメント」では4声のコーラスワークを聴かせるなど、要所要所でハッとさせられる技巧や工夫が見られる。激キャッチーなキラーチューン「プリチー」の間奏中、理姫がフロアに向かって言う。「私たちは今日のためにこの半年間頑張ってきたので、悔いを残したくないんです! 今日は私たちもいろいろやってみるから、みんなもやりたいこと全部やってね!」普段、様々なライブを観ていると、事前に用意していたかのようなセリフっぽいMCを聞くことも多い。だけど、アカシックの場合はひと言ひと言に飾り気がないし、予定調和な雰囲気はゼロ。自分たちのバンドと音楽、そして観に来てくれた観客に対して真正面から向き合っていることがストレートに伝わってくる。しかも、飲み屋のステージバンドのメンバーとして、様々なタイプの音楽に接していたというキーボードのHachiや、タイトなリズムが心地いいドラムの山田康二郎など高度な演奏を支えるが、これみよがしな感じが一切ない。J-POPをリスペクトしているメンバーも多いとの事、大事なのはあくまでもメロディとボーカルという意識があるのだろうか。
理姫は見ているだけで楽しいボーカリストだ。MCの際には小さい鏡を見ながら汗を拭いたり、髪を整えたり、普通の女子のような姿を見せておきながら、パフォーマンス中は本能の赴くままに髪を振り乱し、自分の中の何かを発散させるかのように激しく動きまわる。
冒頭で気合いを入れすぎたのか、正直、ライブ中盤の数曲、間延びした雰囲気もあった。しかし、女性陣が衣装チェンジのためにステージ袖にはけて、男性陣が「香港ママ」の振付をレクチャーするあたりから、再び自分たちのペースを取り戻し始めた。一緒に踊るように煽っておきながら、「自分の言葉でこんなに人が動いたの初めて!」と奥脇達也(Gt.)。MVと同様のチャイナドレスをまとった女性陣が戻ってきてからプレイした「香港ママ」では、ミラーボールも回って大盛り上がり。続く「有楽」ではメンバー紹介と共にソロの披露もあり、各自の高いプレイアビリティを改めて見せつけた。けっして演奏力の高さを売りにしているバンドではないにしろ、フュージョンのテイストがある「女」のように、少々複雑なイントロでバシッと演奏を合わせてくるところなんて最高に気持ちがいい。
終盤のブロックに入る前、女性陣は再び衣装チェンジのために袖に引っ込む。まるでアイドルのようだ。理姫はステージに戻るとこう話した。「“曲はいいけど、ボーカルがめちゃDQNギャル”とか言われたりするんだけど、ギャルになりたくてやってるからうれしくて」その堂々たる姿が実に痛快。一本筋が通っている。「Galaxy Bang」で理姫は客席にあるテーブルの上に乗って熱唱、ピンクのマイクケーブルを使っている点など、彼女達の独特な美意識に惹かれるのである。
最後は、理姫一番のお気に入りだという「オールドミス」、そして「さめざめ」を披露してステージを後に。大きな拍手に促されて再び姿を現した4人はアンコールとして「ロマンス」と「終電」を演奏。そして、まだまだ満足しきれない観客の声援に応え、予定外のダブルアンコールも披露し、大充実のワンマンライブを終えた。
ライブを観た限り、現時点で高度に仕上がったバンドとはまだいえないかも知れない。しかしだからこそ彼女たちは面白い。時に無邪気に、時に戦略的に、5人がこれから日本のロックシーンをどれだけ引っ掻き回していくのか、今後も注目していきたい。
【取材・文:阿刀 “DA” 大志】
【撮影:ハヤシサトル】
リリース情報
セットリスト
『DANGEROUS くノ一』ツアー
2015.07.12@渋谷CLUB QUATTRO
- サイノロジック
- アルカイックセンチメント
- プリチー
- ヨコハマクール
- 溺愛
- CGギャル
- ベイビーミソカツ
- プラチナ文明共創
- 幸せじゃないから死ねない
- 香港ママ
- 有楽
- スーパーサマーライン
- 女
- 真夜中のクローンラベル
- Galaxy Bang
- 秘密のデート
- ツイニーヨコハマ
- オールドミス
- さめざめ
- ロマンス
- 終電
- 好き嫌い
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