本当に長いツアーだ。2月にZepp DiverCity からスタートしたKREVAの47都道府県ツアー「UNDER THE MOON」が、5ヵ月ぶりに再び東京・中野サンプラザに帰ってきた。本数にして52公演目。ツアーの前半はDJセット+ドラムスタイルで行なわれ、後半はバンドセットで構成された今回のツアー。バンドメンバーには、熊井吾郎（MPC・DJ）、白根佳尚（Dr）、岡雄三（B）、渡辺剛（Key）を迎えて、まさにKREVAのすべてが凝縮された、10周年イヤーを飾るのにふさわしいストイックかつエネルギッシュなライブだった。

　幸運にも今回のツアーではDJ＋ドラムスタイルで行なわれた初日のZepp DiverCityも見ることができた。そのときにも、「俺を見ろ！」とでも言わんばかりに、ステージ上で堂々とした立ち居振る舞いを見せ、身体ひとつでリスナーを惹きつけるKREVAの様はまるでアスリートのようだと思ったが、後半のバンドスタイルでは、よりバンドが鳴らすグルーヴを強く感じながら、KREVAがそのステージの支配者のように君臨する強烈な存在感が印象的だった。

　10周年をまわるツアーということもあり、ライブではシングル曲を中心に、エッジーなHIP HOPナンバーからバラードまで、新旧KREVAの代表曲が数多く披露された。これでもかと詰め込んだ曲数と、パフォーマンスの密度は、それを50公演も以上やり抜くことが、体力的にも精神的にも、どれほど過酷なものだったか想像は難くない。それもまた今回のツアーでは初めて訪れる場所も多く、そこで待っているお客さんを想えばこそなのだろう。

　この日のライブで特に印象的だったのは、KREVAが会場にいる一人ひとりとしっかりと目を合わせながら、お客さんと近い距離でコミュニケーションをとっていることだった。DJ＋ドラムセットで回ったツアー前半では、特にキャパシティ300人ほどの狭いライブハウスにも精力的に足を運んできたせいだろうか。2,000人以上を収容する中野サンプラザに立ちながら、ホールっぽい距離感を一切感じさせず、会場の最後列に至るまで誰ひとり置き去りにしない、一体感のあるライブだった。

　ツアータイトルの「UNDER THE MOON」は、KREVAが今回の47都道府県ツアーにあたり、“いつだって、みんな月の下にいる”と、全ての会場に当てはまる言葉として選んだものだ。人呼んで“Mr.向上心”。どんな状況でも常にポジティブな発想の転換で、困難を乗り越えようとするKREVAの音楽は、いつも自然と聴き手の気持ちを強くしてくれる。

　残すところツアーはメンバーの体調不良により振替公演として行なわれる8月25日の大阪フェスティバルホール公演のみ。そのまま翌日26、27日は、同じ場所で今年も「908 FESTIVAL in 大阪」を開催。さらに、9月07日、9月08日には日本武道館での「908 FESTIVAL」が予定されている。そして、KREVA曰く、今年のライブはそれでお終いになるそうだ。しばらくはじっくり腰を据えて曲作りに専念したい、とMCでも明言していた。

　だからこそ、今年のクレフェスはぜひ足を運んでもらいたい。そうでなくても、47都道府県ツアーというKREVA史上最もハードな全国行脚を終えたいま、さらなる自信を得て、より強固に進化したKREVAは、この10年で一番かっこいいはずだから。

【取材・文：秦 理絵】