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indigo la Endワンマンツアー東京ファイナル、渋谷公会堂をレポート

indigo la End | 2015.08.19

 夏の日を過ごす男女の姿がスクリーンに映し出され、「ナツヨのマジック」と、今回のツアータイトルが表示されると、後鳥亮介(B)、長田カーティス(G) 、川谷絵音(Vo・G)、佐藤栄太郎(Dr)がステージに姿を現した。全員が黒一色でまとめた衣装。ドラムスティックのカウントから歌い出した「瞳に映らない」から、絵音のハイトーンボイスが渋谷公会堂の広い天井にスッと伸びていく。「さよならベル」では、エモーショナルな4人のアンサンブルがざわりと胸を掻き立てた。indigo la Endが描く心の世界にあっと言う間に呑み込まれてしまう。

 オープニングの穏やかな空気を変えたのは、ベース後鳥のベーステクが唸りをあげた「ワンダーテンダー」だった。赤やむらさき色の渦が、その曲の“後悔”を象徴するようにスクリーンでぐるぐると回る「渇き」、さらに緻密に重なる音がソリッドに絡み合う「billion billion」など、鋭角的な演奏で圧倒してきた中盤。なかでも圧巻だったのは「実験前」だ。いつ終わるとも知れない長い長いセッションで、複雑に交錯するサウンドが、不協和音寸前の歪みを巻き起こしながら、聴き手へと迫ってくる。

 indigo la Endとは、一般的に“抒情的な歌ものギターロックバンド”として語られることが多いと思う。もちろん、それも間違いではないが、ライブでは、こんなにも凶暴、そして、刹那的で美しい姿を見せるのだ。この日のライブでは、後半の「幸せな街路樹」、本編ラストの「名もなきハッピーエンド」でも、同じような感じる場面があった。indigo la Endにとって、シングル表題曲と同じくらい、こうした表現もバンドの肝にはあるのだ。

 indigo la Endがホールワンマンを開催するのは、前回の「幸せが溢れたら」に続き、今回のツアーで2度目となる。前回はその特性を生かして、演奏中にも物語性のあるスクリーン映像を用いた演出が印象的だった。一方、今回は繊細な照明の光と、そこで生まれる影を大事にしながら、シンプルな構成でライブは進んでいく。「染まるまで」では歌詞に出てくる《夕焼け》を表すようにオレンジ色のライトがそっとメンバーを照らし、「心ふたつ」では、徐々に熱を帯びていくサウンドの変化と共に、光の色合いも変えていく。それが非現実的なまでに美しくて、さりげなくて、とてもindigo la Endらしい音楽の届け方だと思った。

 MCでは6月に出たシングルについて触れ、「ぜひCDで買って聴いてもらいたいです」と話して、終盤のハイライトとなる「悲しくなる前に」へ。客席からは手拍子が湧き起こり、長田のギターが鋭くむせび泣き、後鳥のスラップベースが炸裂、佐藤のドラムが激しくリズムを刻み、そこに絵音のファルセットを駆使した歌声を自由に弾む。それはドラムの佐藤を正式にメンバーに加えた4人編成になり、よりバンドとしてのダイナミズムを手に入れたindigo la Endのいまが凝縮された、とても力強いパフォーマンスだった。

 勢いのままに繋いだ「夜明けの街でサヨナラを」では、コーラス隊の清らかなハーモニーが昂揚感を掻き立て、ラストナンバー「名もなきハッピーエンド」で本編が華やかに締め括られた。

 本編16曲を終えたところで、アンコールでは、9月16日にリリースの新曲「雫に恋して」が披露された。たとえるなら、その長いタイトルだけで中身を主張するライトノベルとは対称的な、ぽつねんとある純愛小説のようなタイトルがまたindigo la Endらしい。いつも以上にシリアスで切なさを掻き立てるメロディがサビへ向かって駆けあがると、最後は、ツアータイトルにもなっている「夏夜のマジック」。ピアノソロをフィーチャーしたAOR風の演奏でしっとりと締めくくり、再びスクリーンには、最初に流れたカップルの映像が逆回しで映し出され、“The Fin”の文字。そんなエンディングを、ひとつの映画を見終えたような、という言葉で語るのも陳腐だが、この日、indigo la Endがくれた寂しさの余韻は、大切にしなければと思った。夏の夜、たまには感傷的な気分に浸ってみるのも悪くない。

【取材・文:秦理絵】
【撮影:井手 康郎】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル indigo la End

リリース情報

雫に恋して/忘れて花束

雫に恋して/忘れて花束

2015年09月16日

ワーナーミュージック・ジャパン

1. 雫に恋して
2. 忘れて花束
3. 夢のあとから

セットリスト

indigo la Endワンマンツアー
「ナツヨのマジック」
2015.7.31@渋谷公会堂

  1. 瞳に映らない
  2. 夜汽車は走る
  3. ダビングシーンa
  4. さよならベル
  5. ワンダーテンダー
  6. 渇き
  7. billiom billion
  8. 実験前
  9. 彼女の相談
  10. 染まるまで
  11. 心ふたつ
  12. 幸せな街路樹
  13. 悲しくなる前に
  14. 夜明けの街でサヨナラを
  15. 緑の少女
  16. 名もなきハッピーエンド
<アンコール>
  1. 雫に恋して(新曲)
  2. 夏夜のマジック

お知らせ

■ライブ情報

MONSTER baSH 2015
2015/08/22(土)香川県 国営讃岐まんのう公園

SPACE SHOWER SWEET LOVE SHOWER 2015 -20th ANNIVERSARY-
2015/08/29(土)山梨県 山中湖交流プラザ きらら

Spitz × VINTAGE ROCK std. presents
「 新木場サンセット 2015」

2015/09/02(水)新木場STUDIO COAST

京都音楽博覧会2015
2015/09/20(日)京都 梅小路公園 芝生広場

Bowline2015 curated by クリープハイプ&TOWER RECORDS
2015/09/27(日)幕張メッセ国際展示場9-11ホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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