KOBUKURO LIVE TOUR 2015 “奇跡” さいたまスーパーアリーナ6/6ライブレポ
コブクロ | 2015.08.28
昨年のツアー "陽だまりの道"の時と同様、アリーナの真ん中にステージが設けられている。しかしまだ四方が白い幕で覆われ、中の様子は窺えない。そこにツアー・タイトルである“奇跡”の文字がクレーンで組み立てられてく映像が映され、否が応でもワクワクが膨らみ、いよいよ幕が下ろされる。オープニングはまさにその曲、「奇跡」だ。
バンジョー(のサンプリングの音)を加えたアレンジが、ライヴだとより一層、曲に疾走感を加え、客席の気持ちを引っ張る。そして場内がワイパー(挙げた手を左右に振る仕草)で揺れる「Summer rain」へ突入。さらにさらに「轍~わだち~」と、このあたりは攻めの選曲だ。「轍~わだち~」といえば、毎回注目するのが“♪そんなに遠い目をして”の黒田の歌い出し方のニュアンス。この夜は彼ならではのセンスに支えられた、極限までタメにタメた感覚で、いきなり鳥肌ものだった。
詰めかけた観客は21000人。さいたまスーパーアリーナは、横浜アリーナなどと較べたら比較的正方形に近い空間ゆえ、センター・ステージであることがより効いている印象だ。東西南北それぞれのお客さんを意識しつつ、それぞれとコール・アンド・レスポンスしたりして、どの方角も漏らさず、小渕と黒田が全員の心を掴んでいく。回転するメインのステージを核に、そこから四方へ花道が伸びた構造であり、その先まで二人がやってきてくれると、前の列のほうの人達などは手が届きそうな近さとなる。“今日は全員がご近所さん”といった表現を小渕がMCの中でしてたけど、まさにそんな感じだ。
「今、咲き誇る花たちよ」からはメロディアスな選曲となっていく。「永遠にともに」って久しぶりに聞いたような気がするが、彼らの“楽曲倉庫”には、他にもいくらでも沢山の名曲が出番を待っているのだ。この辺りまでくると注目したのが、今回のツアーの照明だ。おそらく『.image』(ドットイメージ)と呼ばれる装置で、相当数のLEDが上からつり下げられ、コンピューター制御されることで様々な光の形(「永遠にともに」では結婚リングを思わせる重なる輪であるとか、また別の時は星屑が降り注ぐよう点と点、であるとか…)を醸し出していく。それが作品のイメージを程良く広げてみる。観ていて実に実にファンタジックだ。
新曲の「hana」はロッテ「Ghana」の CMソングとして作られたもの。小渕の書く歌には自伝的というか私小説的なものもあるが、こちらは鮮やかに彼の作家性が発揮されたものだ。J-POPの歌詞としてはスタンダードな言葉の選び方だが、でもそこに彼にしかない愛することや生きることへの真摯さが響いてる。「水面の蝶」の黒田の歌はまさにソウルフル。ファルセットがポイントの「Twilight」では、二人の声が、あの時間帯ならではの光の加減を、脳裏に思い起こさせてくれたのだった。
コブクロのライヴの場合、バラードのコーナーに差し掛かると、小渕がMCで着席を勧める。でもこのほうがハッキリして好ましい。何度聴いても、ふと気づくと涙で前のピントがぼやけてしまう「遠くで」。
そして嬉しいことに、あの名曲「桜」も聴くことが出来た。しかもこの日はスペシャル・ヴァージョンだ。最後にバンドが音を止め、小渕と黒田だけで、しかもマイクも外し、アカペラで歌ってくれたのだ。21000人が静まりかえり、ハッキリと二人のネイキッドな声が届く。ふと、路上で歌っていた頃の彼らを想像する。でも、今も変らず、こうして聴き手との至近距離を保つことが出来るのがこの二人なのだ。静まりかえった場内に、「DOOR」の力強いイントロが響く、歌いながら僕が座る方角の花道の端まで黒田が移動しつつ熱唱する。いやこれは…、本当に近い!
MCに関しては、そのネタだけでライヴ評が一杯になるくらい毎回豊富なので、敢て控えつつレポートしていたが、例えばこの日でいえば、“膝に水がたまる”を“水に膝がたまる”と言い間違えたことを発端に、黒田が芸術的に、時にシュールに話を広げ、爆笑を誘うのだった。ちょっとした発端さえあれば、明日にでも、いや5分後にでも、これと同様の、そこに集まった人達をとびきり愉快にさせるトークが可能なのだ。
新曲を多く披露してくれるのも彼らのライヴの特徴で、次の「NO PAIN,NO GAIN」もそうだった。しかもこの曲は作詞を小渕と黒田が担当し、作曲を布袋寅泰が担当するという豪華版だ。明らかに曲調は布袋が得意とするエナジー溢れる感覚のものであり、言葉に関しても、いつものとはまた違ったアプローチの(二人が持ち寄ったフレーズをコラージュした的な…)ものに思えた。なお、この時、小渕が弾いていたギターは正真正銘、ホンモノの布袋モデルだった。
次は他のアーティストのカバーであり、それはTHE BOOM のブラジリアン・テイスト溢れる「風になりたい」。若き日に曲作りに悩んだ小渕に対して、“ひとりの人だけのために作ってみるのもいいのでは”とアドバイスしたのが宮沢和史だったそう。メジャー・デビュー前にライヴのオープニング・アクトに呼んでくれもした。そんな先輩へのリスペクトで、この作品が選ばれたのだった。「42.195km」ではマラソンで鍛えた小渕が花道からも降り、場内を疾走する。そして四方の花道の先にフラッグを差していき、いよいよゴール…、という時、そこでずっと待ち構えていた黒田が先にゴール・テープを切る、という、お約束のネタを披露する。しかし全力疾走してもすぐに息も乱さず歌唱することが出来る小渕の持久力…、凄いの一言。
最後は「memory」。黒田が観客にジャンプを促すかけ声とともに自らもジャンプして、文字通りアリーナ全体が揺れる中、本編が終了したのだった(この時、黒田が叫ぶ言葉は“ゥッチョイ! チョイ!”といったふうに僕には聞えたが、実際はなんと叫んでいたんだろう)。
アンコールの一曲目の前に小渕が次に歌う作品について語り始める。そしてその歌は、亡き父を送った、その日に見上げた星空のことが歌われたものだった。その星は、涙がまだ乾ききってない瞳のなかで、とても綺麗に輝いていたという。その光景を、歌を聴いてくれる人達にもみせてあげたくて…。メモを取ったわけじゃないので細かいところは実際の言葉と違うかもしれないけど、でも歌を聴きながら、「ああ、あんな星だったのかな。こんな明るさだったのかな」と、確かに心で感じながら、この歌を聴き終えたのだった。歌というのは本当に大きな力を持っていると思う。
アンコールの最後は「ココロの羽」。この日のMCは路上時代のエピソードが多かったが、この歌も、あの頃、聴きに来てくれた人達とのコール・アンド・レスポンスによって成り立っていたもの。最後の最後にさらにお互いの絆を深め、ライヴは終了したのだった。
ここで総評めいたことを書くなら、前回「陽だまりの道」の時の初センター・ステージから、さらに積極的にこのスタイルでのライヴを発展させようという意思が感じられた。最新鋭の照明も素晴らしかったし、そうしたハイテクの部分と、二人の肉体を駆使したパフォーマンスとが、確かに噛み合っていたと思う。バンドの演奏も、アップテンポで求められる推進力とバラードでの描写力を兼ね備えた懐の深いもので、大満足だった。
【取材・文:小貫信昭】
【撮影:森久】
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リリース情報
奇跡(初回限定盤) [CD+DVD]
2015年03月04日
ワーナーミュージック・ジャパン
1.奇跡
2.Twilight
3.信呼吸
4.奇跡(Instrumental)
5.Twilight(Instrumental)
6.信呼吸(Instrumental)
[DVD]
HUMMING LIFE (LIVE from Acoustic Twilight Tour 2014)
ベテルギウス (LIVE from Acoustic Twilight Tour 2014)
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セットリスト
KOBUKURO LIVE TOUR 2015 “奇跡”
2015.6.6@さいたまスーパーアリーナ
- 奇跡
- Summer rain
- 轍 -わだち-
- 願いの詩
- 今、咲き誇る花たちよ
- 信呼吸
- 永遠にともに
- hana
- 水面の蝶
- Twilight
- 遠くで…
- 桜
- DOOR
- NO PAIN,NO GAIN
- 風になりたい
- 42.195km
- サヨナラ HERO
- Memory
- 星が綺麗な夜でした
- ココロの羽