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全方位のオーディエンスに歌を届けたコブクロ@さいたまスーパーアリーナ

コブクロ | 2014.07.30

 最新シングル「陽だまりの道」のリリースに合わせて開催された今回のツアーは、結成16年にして初めてだという円形ステージが採用されていた。お客さんともっと近い距離でライブを楽しみたいという2人の気持ちが形になったわけだが、4本の花道をフルに使いながら、時には花道から降りて客席をも巻き込みながらのパフォーマンスはとにかくパワフル。さいたまスーパーアリーナ2デイズの2日目となったこの日も、終始、22,000人のオーディエンスと共に生み出したアツいエネルギーが渦巻いていた。

 壮大な景色の中を旅するオープニング映像が終わった瞬間、小渕が掻き鳴らすアコギの音が響き渡る。1曲目は現代のコミュニケーションの在り方を歌った「サイ(レ)ン」だ。回転し始めたステージから、「埼玉ー!」と小渕&黒田が声を揃えて呼びかける。力いっぱいの手拍子で応えるオーディエンス。2人の歌も、バンドの音も、どんどん熱を帯びていった。「君という名の翼」では黒田が花道へ。ひとりひとりの顔を見つめるように歌いかける。「ストリートのテーマ」では何度も何度もコール&レスポンスを重ね、ステージと客席の距離を一気に縮めていった。

 最初のMCでは、黒田が小渕の低すぎるジャンプをいじり始め(笑)、活動休止中に見ていたDVD-BOXの話、最前列にいたあまりにも長身の男の子とのやり取り、メンバー紹介などたっぷりと。次から次へと膨らんでいく話題は永遠に続きそうな勢いだ。「人間の声は、心の音。顔を見ながら、その音を聴きながら、こうして会える喜びやそこにある小さな幸せを優しく届けていくようなライブにしたい」と小渕が言っていたが、こうしたMCの時間に生まれるあったかい空気感も、この後のライブを作り上げる大切な要素になっていく気がした。

 「君への主題歌」、「流星」など、2人の力強い歌声に圧倒される楽曲が続く。小渕が三線を弾き、彼の実家から持ってきたという和太鼓を加えて披露された「大樹の影」は、黒田が作詞・作曲したナンバーだ。大らかなメロディーに身を委ねながら、しばし南の風を感じる。短いMCを挟み、次のセクションではオーディエンスも着席してじっくりと。ギターレスの「SATURDAY」は、ピアノとベースをバックに2人が感情たっぷりに歌い上げるバラードだ。アルバムのツアーではないこともあってか、こうして懐かしい楽曲ーーシングルだけでなく、アルバム収録曲としてリリース時のツアーでしか演奏されなかったような楽曲が聴けたのもこのツアーならではだろう。

 次のセクションでは、ソチオリンピック/パラリンピックのために作った「今、咲き誇る花たちよ」から。この曲は最後のサビの部分でバンドの音がフッと消え、いきなり2人のアカペラになるというドラマチックな展開だ。息を飲むような、そして鳥肌の立つような瞬間に大きな大きな拍手が寄せられた。「ダイヤモンド」、「陽だまりの道」と続いたこの3曲の流れは圧巻。2人の声が何倍にも膨れ上がり、言葉以上の思いを伝えてくる。その後のMCで「黒田がよく、「小渕が書いた言葉を伝えるために僕はいるんです」って言ってるんだけど、本当にわかってくれてるなと思って。自分で作った曲でも、僕が歌うと伝えられない景色がある。でも黒田の声だと伝わっていくんです」と小渕が語っていたが、そういう2人の関係性をあらためて感じるという意味でも胸が熱くなる3曲だった。

 「俺、寝転がってても立ってる時と全く同じクオリティーで歌えるから!」と言う黒田のひと言で、小渕も含め、バンドメンバーも寝転がって「陽だまりの道」を再演するという珍場面も飛び出した本編最後のMCコーナー。即興のカバーで盛り上がったり、みんなで写真を撮ったり、とことん自由な時間を楽しんだ後は「太陽」、「SPLASH」と爽やかなナンバーへ。きらびやかに銀テープが舞った「Moon Light Party!」では小渕のリードでコール&レスポンスを楽しみ、大盛り上がりのライブ定番曲「神風」で本編を締めくくった。

 アンコールでは、「ツアーが楽しいから新しい歌がたくさん出来ている。それをまたみんなに一番に届けたいと思っています。今日もみんなの声や拍手を生で感じることが出来たし、ぬくもりや喜びもたくさん体にしみ込みました。こういうライブをこれからもどんどんやっていくために、ひとつひとつ大切に歌っていきます」と小渕。2人がアカペラで歌い始めた「One Song From Two Hearts」は、まさにそんなコブクロとオーディエンスのあったかい関係性を描いた曲だ。そしてラストは「あの太陽が、この世界を照らし続けるように。」。黒田の歌には、今夜ここで倒れても構わない、そんな気迫のようなものがみなぎっていた。

 約3時間半、全方位のお客さんを全力で楽しませてくれた円形ステージでのライブ。形としては初の試みだったかもしれないが、花道の先でお客さんにグルッと囲まれている2人に、ストリートライブをやっていた頃の姿が重なるようだった。会場の大きさがどう変化しようと、2人の声と歌、そして聴いてくれるお客さんがいればそれがライブなんだーーそんな、シンプルで大切なことに気付かされたエンディングだった。

【取材・文:山田邦子】
【撮影:森久】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル コブクロ

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リリース情報

陽だまりの道

陽だまりの道

2014年06月04日

ワーナーミュージック・ジャパン

1. 陽だまりの道
2. BEST FRIEND
3. サイ(レ)ン
4. 陽だまりの道 (Instrumental)
5. BEST FRIEND (Instrumental)
6. サイ(レ)ン (Instrumental)

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お知らせ

■ライブ情報

KOBUKURO ACOUSTIC HALL TOUR 2014
2014/11/12(水)北海道 札幌・ニトリ文化ホール
2014/11/13(木)北海道 札幌・ニトリ文化ホール
2014/11/18(火)新潟 新潟テルサ
2014/11/19(水)新潟 新潟テルサ
2014/11/25(火)宮城 仙台サンプラザホール
2014/11/26(水)宮城 仙台サンプラザホール
2014/12/03(水)香川 アルファあなぶきホール
2014/12/04(木)香川 アルファあなぶきホール

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