くるりxキュウソネコカミ、ZeppTokyoで世代を超えた音楽の可能性に心踊らされるライブを披露!
MUSIC TAGS | 2015.09.01
京都のくるりと、兵庫は西宮のキュウソネコカミ、北海道札幌からの刺客THE BOYS&GIRLSという地方色の強いバンドが揃い踏みとなった、ビクター主催の音楽イベント「MUSIC TAGS vol.3」1日目。出演者が発表されたときには異色の対バン!?と思われたが、終わってみれば、それぞれがバンドのカラーをぶつけ合い、それを全力で受け止めるお客さんもいて、世代を超えた音楽の可能性に心踊らされるイベントだった。
オープニングアクトはTHE BOYS&GIRLS。上半身裸で飛び出してきたカネコトモヤ(Dr)のハイテンションな様子に会場からどよめきが起こるなか、ケントボーイズ(G)、ソトムラカイト(B)、ワタナベシンゴ(Vo)の3人がステージに現れた。ワタナベがひとりギターを掻き鳴らして歌い始めた「24」に続けて、疾走感のある演奏にメッセージを捲し立てる「ライク・ア・ローリング・ソング」。まるで自分たち以外の何も信じない、ジャックナイフのごとく尖った雰囲気は、札幌から東京へ、自らの力で乗り込んできた自負ゆえだろう。それでも、ワタナベの「くるりって本当にいるんだ」という素朴な一言が初々しい。そして、「俺たちは4曲でもいい!一生懸命うたいます!」という力強い言葉とともに、覆いかぶせるように演奏をはじめた「パレードは続く」へ。叫ぶように気持ちを吐露しながらも、どこか聴き手を優しく包み込むような温かさがワタナベの歌にはある。“THE BOYS&GIRLS”というバンド名からは、どこか甘酸っぱいバンドの姿も想像するけれど、めちゃくちゃ熱血漢。この日ステージに立つ3バンドでは最も経験値は少ないが、堂々とその爪痕を残すライブだった。
転換中のリハから「ウィーワーインディーズバンド!!」「良いDJ」の2曲を披露するという、あいかわらずサービス精神が満点のキュウソネコカミ。「あんなライブを見せられたあとやし、乗ってますよ」と言うヨコタ シンノスケ(Key・Vo)は、後輩ボイガルのステージですっかり対抗心に火が付いたのだろう。これが対バンの醍醐味だ。紹介映像を挟んで、「よっしゃ、来いやぁ!」とヤマサキ セイヤ(Vo・G)が叫び声あげると、このビクターイベントに相応しいメジャーデビュー曲「ビビった」からライブはスタート。メジャーデビュー以降、よりキレ味の増した演奏が一気に会場は熱狂の渦へと叩きこんでいく。最新シングル「MEGA SHAKE IT!」では途中でハウスミュージック(フリ付き)に切り替わる予測不能の展開も楽しい。印象的だったのは、この日のライブで初披露された「MEGA SHAKE IT!」のカップリング曲「伝統芸能」。なんちゃって演歌とゴリゴリのロックサウンドが融合した斬新なナンバーは、キュウソらしい遊び心がたっぷり詰まっていた。
そして、《ヤンキーこーわいー》でお馴染みの「DQNなりたい、40代で死にたい」では、セイヤがお客さんの頭上へとダイブ。泳ぎ進むと、なんと目の前に「MUSIC STATION」と書かれたタオルを持った人がいた。このライブの週末に初のMステ出演が決まっていたので、応援にかけつけたファンが持ってきたのだろう。セイヤが「そのタオル貸してくれ!」と高く掲げれば、会場は、さらにヒートアップ。ちなみに終演後にセイヤは、「あれは仕込みじゃありませんからね」と強く主張していたことも、ここに書き留めておく。さらに、中国風のシンセサイザーがフックの「お願いシェンロン」では曲の途中で、くるりの「赤い電車」をカバー。手作り感溢れるダンボール製の“赤い電車”にセイヤが乗り込む場面もあり、およそ45分間のライブでキュウソは完全にお客さんの心を鷲掴みにしてしまった。
威勢のいい後輩たちによる熱演のあと、貫禄のステージを見せたのがトリを飾るくるりだった。岸田繁(Vo・G)が「くるりでございます」と静かに告げると、1曲目は軽やかに弾むピアノの伴奏にのせた「Time」からスタート。2013年にリリースした『Remember me』のカップリング曲という選曲に驚きを感じながらも、フロアにはゆったりとした時間が流れていく。続いて、アルバム『ワルツを踊れ』に収録の「BLUE LOVER BLUE」。こういうイベントで披露されるのは、往々にしてバンドの代表曲・人気曲に偏りがちだが、そんなことはお構いなし。いわゆる隠れた名曲を冒頭でガンガン披露してくれるのもくるりらしい。サポートに松本大樹(G)と野崎泰弘(Key)を迎えた緻密なアンサンブルが、くるりの豊かな音楽性を感じさせてくれる。
MCではキュウソが用意した「赤い電車」のダンボール阪急電車について、「ご丁寧にも曲をカバーしてもらって……。赤い電車も走らせてもろうて。でも、作りが雑やな。音楽はともかく、そのへんはまだまだやな」と、岸田。かわいい後輩への手厳しい指摘に会場から笑いが起こった。そして、温かいメロディがぶわっと気分を底上げする「ブレーメン」で大きな歓声に包まれると、ギラギラとした照明を浴びながら聴かせたロックンロールナンバー「Liberty & Gravity」へ。ここからmabanua(Dr)も加わり、5人編成に変わると、次第に演奏はエモーショナルな色合いを強くしていく。そして、終盤に披露された「東京」。この曲を聴くといつも心の奥をガツンと揺さぶられるような感覚になるのは、わたしだけではないはずだ。キュウソ、ボイガルら、若いバンドマンたちにも引けをとらない、いや、それ以上の衝動的なステージを見せつける結成20年目のくるり。その凄味を感じさせるライブだった。
「(アンコールは)なしでもええねん。100%の気持ちを振り絞って演奏したんやから(笑)」と、岸田らしい口調で言いながらも、フロアからの熱い声援に応えたアンコールでは、これも人気の「虹」が披露された。力強く響くメロディとリズム。アウトロの長いセッションでは岸田が身をくねらせるようにして、激しくギターを掻き鳴らしていた。
この日、世代を超えた名対バンを繰り広げた3組はレーベルメイトであると同時に、良きライバル同士のようにも見えた。そこに先輩後輩も大きな意味はなく、馴れ合いもない。それぞれが全く異なる個性をぶつけ合った競演は、そんなバンドマンたちの矜持を強く感じさせるものだった。
【取材・文:秦理絵】
【撮影:浜野カズシ】
セットリスト
MUSIC TAGS vol.3 ~先輩、宜しくお願い致します。~
2015.7.22@Zepp Tokyo
◆THE BOYS&GIRLS(opening act)
- 24
- ライク・ア・ローリング・ソング
- パレードは続く
- ハローグッバイサンキュー
◆キュウソネコカミ
- ビビった
- MEGA SHAKE IT !
- ファントムヴァイブレーション
- GALAXY
- 伝統芸能
- サブカル女子
- DQNなりたい、40代で死にたい
- お願いシェンロン
- ハッピーポンコツ
◆くるり
- Time
- BLUE LOVER BLUE
- ブレーメン
- Liberty & Gravity
- ハヴェルカ
- everybody feels the same
- ばらの花
- 東京
- ロックンロール
- 虹