ゲスの極み乙女。 1万2千人の観客とエネルギーに満ちた横浜アリーナ公演
ゲスの極み乙女。 | 2015.10.20
ステージを覆っている紗幕に「無垢な季節」のミュージックビデオ(Short ver.)が投影されてスタートした横浜アリーナ公演。幕が切って落とされ、「無垢な季節」の演奏が始まると、メンバーたちの登場を待ちわびていた観客は激しく手拍子。「踊れ~!」という言葉と共に突入した2曲目「星降る夜に花束を」は、サビで巻き起こったタテノリのダンスが会場全体を揺さぶる。続いて「パラレルスペック(funky ver.)」と「私以外私じゃないの」も届けられ、熱気の上昇はとどまることを知らない。1万2千人の観客が生み出すエネルギーのものすごさを、まざまざと実感した。
「やってみたかったことがあるんです。アリーナの人、コポゥ! スタンドの人、コポゥ!」、お馴染みの挨拶の言葉“コポゥ”を観客と交わし合うちゃんMARI(Key)が実に嬉しそう。会場の隅々までを見回して「すごいね」と話し合う川谷絵音(Vo・G)、休日課長(B)、ほな・いこか(Dr)の声からも、テンションが上がっている様子が伝わってきた。そして、コーラスのえつこ(katyusha)、オカシラの紹介を経て、「ロマンスがありあまる」がスタート。涙腺を刺激するメロディ、躍動する濃厚なグルーヴが素晴らしい。続いて「だけど僕は」も届けられ、横浜アリーナは完全にダンスフロアと化している。彼らのサウンドの威力を堂々と示す場面の連続であったが……演奏の合間では親しみやすいキャラクターも相変わらず発揮されていた。「スレッドダンス」の後、衣装替えのためにステージから姿を消したメンバーたち。このインターバルを埋めたVTRのタイトルは、「もしも『HERO』のバーをゲスの極み乙女。がやっていたら」。TVドラマ『HERO』に出てくるバーのマスターを4人が交替で演じ、観客の和やかな笑いを誘っていた。
「無垢な季節」ミュージックビデオ(フルver.)の“宇宙初公開”を経て、後半戦は「猟奇的なキスを私にして」からスタート。腕を激しく振り上げながら踊る観客のエネルギーがますますものすごい。そして、「デジタルモグラ」と「サイデンティティ」が、さらなる興奮を届けていく。「そろそろゲスの4箇条が聞きたいんじゃないの?」、ほな・いこかのサディスティックなトーンによる言葉と共に雪崩れ込んだ「ホワイトワルツ」の盛り上がりは、爆発的なものであった。曲の途中で読み上げられる“ゲスの4箇条”の1つ1つに対して熱い歓声で応えた1万2千人。“その四”である《ゲスである事》を会場中の人々が一斉に叫んだ瞬間の一体感は、すさまじかった。
MCでの話題はインディーズ時代のことへ。デビュー前は会社員だった休日課長。勤務先に内緒でバンド活動をしていたのだが、サングラスで顔を隠して出演した「ぶらっくパレード」のミュージックビデオを会議室で流されたり、上司の課長に「お前、課長なんだって?」と訊かれて冷や汗をかいたりしたらしい。しかし、当時の彼は睡眠時間を削りながらバンド活動に全力を注いでいたのだという。「普段、尊敬してないけど、その時は尊敬してた。スゲーなこの人と」、川谷が休日課長に対してかつては抱いていたリスペクトが告白され、何やら場の雰囲気が感動的な方向へ少し行きかけたのだが、「課長の話、心の底からどーでもよかった!」、ほな・いこかが容赦なく切り捨て、観客は大爆笑……というようなゆるいMCタイムにダメ出しをするかのように薄暗くなった照明。半ば強引に「オトナチック」がスタートするという演出は、とても洒落が利いていた。
前のめりの勢いで駆け抜けるサウンドがドラマチックだった「Ink」。メンバーが餅をばら撒く定番のパフォーマンスも繰り広げられた「餅ガール」。《♪パラリラパラリラ》という観客の明るい声が響き渡った「アソビ」。ちゃんMARIがショパン「幻想即興曲」を奏でるピアノソロの時、川谷、休日課長、ほな・いこかが彼女の背後に並び、EXILE「Choo Choo TRAIN」のようなダンスパフォーマンスを繰り広げた「キラーボール」……強力なナンバーの連続で締め括られた本編であったが、人々の興奮は収まらない。手拍子と歓声に応えてアンコールが行われた。まず届けられたのは、初披露となった新曲。続いて「ノーマルアタマ」も演奏すると、4人はステージから去っていった。
これにて終演かと思われたが、スクリーンに流れた映像。ライヴの感想を話し合うメンバーたちのやり取りが、LINE風のスタイルで展開した。愛してやまないほな・いこかに執拗に絡む休日課長が笑いを誘ったりもした後、映し出されたのは「インディーズの曲、やってなくない? 今から全部やっちゃいます」という言葉。こうして行われたダブルアンコールは、インディーズでリリースしたミニアルバム『ドレスの脱ぎ方』を曲順通りに披露するという予想外の内容となった。「ぶらっくパレード」「モニエは悲しむ」「ゲスの極み」……レアな曲を連発した後、「どう? 新鮮じゃない? 「ゲスの極み」は、初めてライヴでやった。「ぶらっくパレード」は、たまにやってたけど。「ゲスの極み」は、アリーナでやるような曲じゃない(笑)。でも、やれてよかった」と、川谷は満足そうな表情を浮かべていた。
ステージ上に招かれたゲストプレイヤー・景山奏。今年の2月に京都磔磔で対バンをしたインストバンド・Nabowaのギタリストだ。彼と一緒に演奏した「momoe」は、シャープなビートで彩られた叙情的なメロディが美しかった。そして、「横浜アリーナ、盛り上がってるか? 次でほんとに最後の曲でございます。でも、最高の最後の曲にしたいので、ここで一発、コール&レスポンスをやってもよろしいでしょうか? 私が“ドレスを”と叫んだら、“脱げ”と叫んでもらってもよろしいでしょうか?」、休日課長の呼びかけに応えて行われたコール&レスポンス。ラストを飾ったのは「ドレスを脱げ」。“GESU”という文字が印刷されたお札風の紙片が客席目がけて大量に降り注いだ。夢中になって紙片を掴み取りながら観客が大合唱する様が壮観。とても賑やかなエンディングとなった。
演奏を終えると、ステージ上を巡りながら何度も手を振ったメンバーたち。そして、「来年、武道館で会いましょう!」という言葉を残し、去って行った。大会場もとてもよく似合うバンドと化していることを鮮やかに示したこのライヴ。来年の3月30日、31日に予定されている日本武道館公演はもちろん、今後のあらゆる活動への期待も高まる内容であった。
【取材・文:田中 大】
【撮影:橋本塁(SOUND SHOOTER)】
リリース情報
オトナチック/無垢な季節(初回限定盤)[CD+DVD]
2015年10月14日
ワーナーミュージック・ジャパン
1. オトナチック
2. 無垢な季節
3. O.I.A
4 灰になるまで
[DVD]
1. 「星降る夜に花束を」ゲス乙女集会 vol.4 ~幕張編~
2. 「ドレスを脱げ」ゲス乙女集会 vol.4 ~幕張編~
3. 休日課長の愛のカレー作り
4. 突撃!ゲスな六本木街頭リサーチ
セットリスト
ゲスチック乙女 ~アリーナ編~
2015.10.14@横浜アリーナ
- 無垢な季節
- 星降る夜に花束を
- パラレルスペック(funky ver.)
- 私以外私じゃないの
- ロマンスがありあまる
- だけど僕は
- スレッドダンス
- 猟奇的なキスを私にして
- デジタルモグラ
- サイデンティティ
- ホワイトワルツ
- オトナチック
- Ink
- 餅ガール
- アソビ
- キラーボール
- 新曲(タイトル未発表曲)
- ノーマルアタマ
- ぶらっくパレード
- モニエは悲しむ
- ゲスの極み
- momoe
- ドレスを脱げ
お知らせ
テレビ朝日ドリームフェスティバル 2015
2015/11/21(土)、 22(日)、 23(月・祝)国立代々木競技場第一体育館
※ゲスの極み乙女。は11/21に出演。
ゲス乙女大集会 ~武道館編~
2016/03/30(水)日本武道館
2016/03/31(木)日本武道館
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。