安岡 優 ソロツアー“バラードが聴こえる”ライブレポート
安岡 優 | 2015.11.09
暗転した会場内。バンドメンバーの福原将宜(G)、桜井正宏(Dr)、大坪稔明(Key)、山口寛雄(B)、宇佐美秀文(Mp)がスタンバイ。スティックカウントを合図に1曲目「もっと君と話したい」がスタートすると、ゆっくりと歩きながら安岡 優が登場した。ライトに照らされた笑顔が眩しい。そして、歌声が雄大に響き渡っていく。ギターソロに差し掛かかった時、腕を広げて観客に拍手を促す姿が、実に楽しそう。《もっと君と話したい》を《もっと今夜は歌いたい》にアレンジしてエンディングを迎えると、湧き起った大きな拍手。その盛り上がりをさらに熱いものとしたのが「Welcome to the brand new world」だった。「久しぶりのソロライブツアーです。最後まで一緒に盛り上がっていきましょう!」、安岡がイントロ中に呼びかけて本編に突入すると、それまで座っていた観客は一斉に立ち上がって手拍子。一体感に満ちた幕開けとなった。
「ツアーとしては2012年ぶりです。集まってくれて感謝しております」と挨拶をして、3年間に亘って年1回、自身の誕生日である8月5日にライブを行ってきた活動を振り返った安岡。これまでに何度か披露し、バンドメンバーたちとアレンジを重ねた曲を収録した1stアルバム『バラードが聴こえる』をリリースした喜びも語られた後、エルトン・ジョンのカヴァー「Your Song」が届けられた。ピアノの伴奏と歌から始まり、やがて他の楽器パートも合流。瑞々しく響き渡っていった。シンガーソングライターである主人公の心情を描いたこの曲のオリジナル版は、《If I was a sculptor(もしも僕が彫刻家だったら)》という部分を歌った直後、おどけたトーンの声を一瞬漏らす部分がある。そこも忠実になぞっていたのが印象深い。「原曲も聴いてみてください。曲を書いた人ならではの間合いがあります。音の源流に辿り着いて欲しいです」と歌い終わった後に語っていたが、彼のこの曲に対する愛情とリスペクトが伝わってきた。
「Your Song」を歌い終えた後、“僕の歌”ではなく“あなたの歌”にしようと思いながら積み重ねてきたのだという音楽活動を振り返った安岡。「でも、1曲くらいは僕の物語を曲にしたいと思いました。だけど、そう思えば思うほど最終的には“あなたの歌”になった気がします」と言い「Luz」。スペイン語やポルトガル語で“光”を意味するタイトルが掲げられたこの曲は、まさしく徐々に光量を増すかのように爽やかに響き渡っていた。そして「坂道のうた」へ。言葉の1つ1つを噛み締め、心を込めて届けられる歌声が胸に沁みた。東日本大震災の津波で被害を受けた大船渡の幼稚園のために書き下ろされたこの曲は、『バラードが聴こえる』に収録された唯一のカヴァー曲。こうして歌うことによって、多くの人にこの曲の存在を伝えたいのだという願いを、披露した後に語っていた。
清らかな2曲を経て、静かな感動が広がった会場内であったが、ここで突然、ゲストのダンス☆マンが登場! 一気にウキウキしたムードのパーティータイムとなった。トレードマークのアフロヘア、もみあげ、スパンコールの衣装をキラキラ輝かせながら現れた彼は、「坂道のうた」の余韻と自身のキャラクターのギャップを非常に申し訳なさそうにしていたが、「笑顔も涙も両方あった方がいいんです」と安岡に言われて一安心。そして、2人はお互いの交流や、『バラードが聴こえる』に収録されたダンス☆マンの提供曲「チャネリング☆ファンク」について語り合ったのだが……この2人のトークはいつも長くなることで知られている。バンドメンバーたちが演奏をスタートさせて、強引に曲へと突入する通称“タイマー”が発動し、観客は大爆笑。こうして披露された「チャネリング☆ファンク」は、2人の歌声がエネルギッシュに躍動。ウィットに富んだ歌詞も人々を大いに盛り上げたのであった。
「地球に収まらない男!」と讃えて、ダンス☆マンを送り出した後、再び迎えたインターバル。ソロライブを毎回支え、アルバム『バラードが聴こえる』の収録曲の数々も共に作り上げてくれたバンドメンバーの1人1人を、安岡は改めて紹介。「いい曲を書いてもらいました。ここに僕の物語を乗せて届けられるのが嬉しいです」と仲間たちに対する心からの感謝を滲ませ、「あなたのせいさ」を歌い始めた。哀愁を帯びたメロディが観客の瞳を自ずと潤ませる。そして、本編を締めくくったのは「Border line」。エモーショナルなロックサウンドが気持ちよい。パンチが利いた歌声を放つ安岡に刺激され、大きな手拍子と歓声がステージに向けて届けられた。
アンコールを求める声に応え、バンドメンバーたちと一緒にステージに戻ってきた安岡は、「今日(10月21日)がアルバムの発売日。初めて聴く曲があったかもしれませんが、こんなに盛り上げてくれて感謝します。ありがとうございます!」と挨拶。東京から始まる今回のツアーが終了した後もイベント出演がいくつか予定されており、現時点では全くの未確定ながらも機会を見つけて、ぜひツアーの続きをやりたいと思っていると語り、観客の喝采を浴びていた。そして、「メンバーが曲を持ち寄ってくれました。このバンドのデビューアルバムのような気持ちで歌ってます。同じメンバーと3年前から続けられているんです。次の旅のその先を信じて。このステージが、みなさんの心のドアを開けますように」という言葉を添えて、「Door」が届けられた。温かい楽器の音色と歌声が、会場の隅々まで潤していく。歌が終わった瞬間、観客は一斉に立ち上がって拍手。バンドメンバーたちと安岡が横1列に並び、互いに繋ぎ合った手を挙げると、拍手は一際力強く高鳴った。「ありがとうございました!」と言い、手を振りながらステージを後にした安岡は満足そう。観客も皆、心底明るい笑顔を浮かべている。穏やかな幸福感が漂うエンディングであった。
【取材・文:田中 大】
【撮影:(c)緒車寿一】
リリース情報
セットリスト
安岡 優 ソロツアー“バラードが聴こえる”
2015.10.21@Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
- もっと君と話したい
- Welcome to the brand new world
- Your Song
- Luz
- 坂道のうた
- チャネリング☆ファンク
- あなたのせいさ
- Border line
- Door