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岡村靖幸ツアー追加公演。中野サンプラザは試金石となるライブだった。

岡村靖幸 | 2015.12.18

 岡村靖幸はこのところ、ライブシーンでジワジワと存在感を増している。ほとんどMCなしで、ノンストップのダンスジェニックなショーを展開。仲のいい友達と話しているような独特の歌詞と相まって、親近感とカリスマ性を両立させたオンリーワンのライブのスタイルを完成させつつある。今夏のフジロックでも、RED MARQUEEステージに登場して、 超満員のオーディエンスを“岡村ちゃんグルーヴ”に巻き込むことに成功していた。

 “岡村靖幸 2015 FALL WINTER TOUR 愛の意味”の追加公演となったこの日の会場は、中野サンプラザ。渋公が幕を降ろした後、都内に残る数少ない“椅子付きホール” だ。このところZeppなどオールスタンディングでワンマンを行なってきた岡村にとっては、ある意味、試金石となるライブだ。
 観客にリラックスしてグルーヴを楽しんでもらうには、やはりオールスタンディングの方がいい。しかし、歌をじっくり聴かせたり、パフォーマンスをゆっくり見てもらうにはホールの方が適している。今後、ツアーの規模を拡大する時、場所によっては当然ホールでのライブが必然になってくる。さて“ホールの岡村”は、どんなライブを見せてくれるのだろうか。

 低音の効いたズシンとくるオープニングSEが流れると、客席がざわめく。サンプラのステージは白いカーテンで覆われ、シルエットが揺らめく。生ドラムが加わって音に厚みが増し、カーテンが割れると、岡村とバンドメンバーが現われた。「キャー!」という歓声が上がる。ドラム、ベース、キーボード、ギターの4リズムにブラスが2人とマニピュレーターという7人を従えているのはいつもと同じだが、何より広々としたステージが岡村によく似合う。特に“足の運び”がしっかり見えるのが嬉しい。 岡村のダンスは上半身も楽しいが、インスピレーションに富んでいるのは、なんといっても下半身なのだ。そう思っていたから、1曲目「ヘアー」の ♪君のヘアーと戯れたいぜ ♪ という歌詞にドキッとしてしまった。

 ダンサー2人が合流する「ぶーしゃかLoop」では、岡村がストップモーションするたびに歓声があがる。続く最新シングル「ラブメッセージ」で、“僕は愛の意味を知りたい。君は知ってるの? 今日は2人で勉強しよう よ”とアオる。
 ここで場内の様子に気が付いた。全員総立ちになって身体を動かしてはいるが、Zeppなどオールスタンディングの会場と比べると、リアクションがやや冷静なのだ。やはりホールはステージと客席の距離があるので、落ち着いて見られるのはいいのだが、“熱の伝導率”に難がある。それでも岡村はじっくり温めていく姿勢でライブを進めていったのが、さすがだった。スパッと本題には入らないものの、このジワジワ感がたまらない。

 変化が起こったのは7曲目「どぉなっちゃってんだよ」あたりからだった。21世紀 にアップデートされたエッジーなアレンジで押す岡村。会場も一緒に歌うと、岡村は「なかなかいい~よ」と感触を確かめる。川本真琴に提供した「愛の才能」では、♪愛の才能ないの 今も勉強中よ♪ と、このライブのテーマそのものが歌われて、会場の温度が2度ほど上がる。
 次のヤマは「愛はおしゃれじゃない」、「ビバナミダ」。またまた温度が2度上がって、「いじわる」が終わると、男性ファンから「抱いて~♡」という掛け声がかかったのだった。

 完全に岡村ちゃんペースで本編が終了。美しかったのは、1回目のアンコールの「SUPER GIRL」だった。以前の曲をしっかりアップデートしてライブで歌う岡村だが、この曲はオリジナル・バージョンのアレンジ。パキッとした曲の本質を、作られたときのまま再現する。ブルーノートはさらにブルーに、カラフルなコード感はさらに極彩色に蘇らせていた。

 僕の隣の女性オーディエンスが、一緒に来ている同性の友達に「キュンキュンするね」とささやいている。そのとき僕の脳裏に“ジェネレー ション・ミュージック”という言葉が浮かんだ。同じ時間を過ごしてきた同世代のアーティストとファンが、自分たちの過去と現在を確かめ合える音楽。その役割が果たされていればいるほど、他の世代も参加できる。そんな至福の音楽がここにあると思った。

 2回目のアンコールの最後は、デビュー曲「Out of Blue」。アコギを掻き鳴らしながら吠える岡村に、会場は熱狂する。広いステージから、広い客席に投げキスする靖幸。やっぱり岡村にはホールもよく似合うと痛感したライブだった。

【取材・文:平山雄一】




※掲載写真にはZepp DiverCity公演のものも含まれています。

tag一覧 ライブ 男性ボーカル 岡村靖幸

リリース情報

幸福

幸福

2016年01月27日

V4 Record

1. できるだけ純情でいたい
2. 新時代思想
3. ラブメッセージ
4. 揺れるお年頃
5. 愛はおしゃれじゃない
6. ヘアー
7. ビバナミダ
8. 彼氏になって優しくなって
9. ぶーしゃかLOOP

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お知らせ

■ライブ情報

岡村靖幸 2016 スプリングツアー
2016/04/09(土)福岡県 Zepp Fukuoka
2016/04/15(金)広島県 JMSアステールプラザ
2016/04/24(日)北海道 Zepp Sapporo
2016/04/28(木)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
2016/04/29(金・祝)東京都 Zepp DiverCity TOKYO
2016/05/01(日)静岡県 静岡市民文化会館 中ホール
2016/05/03(火・祝)神奈川県 神奈川県民ホール
2016/05/05(木・祝)愛知県 Zepp Nagoya
2016/05/13(金)青森県 リンクモア平安閣市民ホール
2016/05/15(日)宮城県 仙台市民会館
2016/05/21(土)大阪府 Zepp Namba
2016/05/27(金)東京都 中野サンプラザホール
2016/05/28(土)東京都 中野サンプラザホール
2016/05/29(日)新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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