水曜日のカンパネラ 全国ツアー初日、赤坂BLITZをレポート
水曜日のカンパネラ | 2015.11.27
黄金のピラミッドが輝く華麗なオープニングVTRと共に幕開けた全国ツアー初日。「お待たせしました。最後まで楽しんで行きましょう!」という言葉を合図に紗幕が外され、ステージが露わになった。後方の高台に立ち、スタンドマイクに向かっているコムアイ(主演/歌唱)が歌い始めたのは、『日清カレーメシ』とのコラボレーションでもお馴染みの「ラー」。真っ白なスモークが勢いよく吹き上がる中、身体を軽やかに揺らしながら歌声を響かせる姿が活き活きしている。観客の「ラー!」「Your Justice!」という掛け声も加わり、会場全体が異世界のような只事ではないムードで染め上げられていく。2曲目「シャクシャイン」が始まると、ハンドマイクで歌いながらステージ前方へと飛び出した彼女を包んだ激しい歓声。開演を待ちわびていた人々が、みるみる内に1つになっていた。
「お待たせしました~」と、三つ指をついて深々とお辞儀をしたコムアイに和やかな拍手が届けられて迎えた最初のインターバル。2年で終わると思っていた水曜日のカンパネラが3年目となったことに対する感慨、やりたいことがどんどん膨らんでいる現状を、心底嬉しそうに語っていた。そして、「やりたいことの一部をご覧頂けたらと。今日しかやらないことがたくさんあるので、最後まで楽しんでいってください」と呼びかけ、次の曲「ディアブロ」へ。「♪いい湯だね いい湯だね」と歌声を交わし合う彼女と観客の表情が眩しい。温泉をモチーフにした曲だけに、程よい温度の熱気が広がっていく。続いて「桃太郎」が始まると、ビートを利かせた「♪キ ヴィ ダーンッ」「♪お に たーいじっ」という歌声が、観客を一層ウキウキ大喜びさせる。たくさんの人々が夢中になって歌い、踊りつつも、なんだかほのぼのとしたムードが漂っているのが独特であった。
ライヴで披露するのは久しぶりなのだという「マルコ・ポーロ」の後、観客に語りかけたコムアイ。これまでの水曜日のカンパネラのPVを手掛けた様々なクリエイターが今回のライヴにも関わっていること、ニューアルバム『ジパング』についてなどに触れた後、某有名アーティストの展覧会で耳にした「好きになってもらおうという感じがしないよね」という言葉が、他人事ではなく感じられて衝撃を受けた――という体験を語って観客を笑わせていた。「ミュージシャンはやりたいことをやっている人ばかりじゃないから(笑)。でも、本当にやりたいことをやれるようになってきていて。だから応援してください!」と呼びかけた彼女に届けられた力強い歓声。そして、会場内はさらなる興奮で満たされていった。「ライト兄弟」「ツイッギー」「ウランちゃん」が立て続けに届けられ、フロアは踊る人々のエネルギーでグラグラ揺れる。「雨に日にぴったりの雨乞いの曲です(この日の東京は雨天だった)」と言って披露された「ユタ」も印象深い。宮古島の神歌を題材にしているこの曲を歌いながら優雅に身体を揺らすコムアイの姿は、シャーマンのような神々しさを放っていた。
PVでも使用していたシャンデリア型の光るオブジェを手にしながら歌った「メデューサ」。「踊れるでしょ?」と煽った彼女に応えて、観客はますます情熱的に踊る。すると、一旦ステージ上から姿を消した彼女……「どこへ行ったのだろう?」と思っていたら、なんと2階席に登場! 設置してあった照明機材で1階フロアを照らしたり、回転するミラーボールに光を当ててキラキラと煌めかせたりと、自由奔放なパフォーマンスを展開していた。その勢いのまま突入した「ナポレオン」では、大きな旗などを振りながら盛り立てる従者と共に1階フロアに現れたコムアイ。神輿のような台座に乗って担がれた彼女は観客の間を巡った後、ステージへと向かった。輝く冠を被り「♪皇帝だ、皇帝だ!」と歌いながら胸を張る姿は、キュートであると同時に威厳に満ちている。そして、再びMCタイム。関わっている人々へ改めて感謝した彼女は、「嬉しいな、この恰好」と、身を包んでいる女帝風の衣装を眺めた。「この衣装、ナポレオン関係ないけど(笑)。次はこの恰好に合いそうな曲です」と言ってスタートさせた「小野妹子」。オリエンタルな風味のメロディ、躍動するビートが観客のダンス衝動を加速する。続いて始まった「猪八戒」も、艶めかしい音像を渦巻かせながら素晴らしい盛り上がりを生んでいた。
『NYLON』内の対談企画『さぐりさぐり』の連載スタート、惑星をイメージしたピアス(オリジナルグッズとして販売中)を作る……という今年の2つの目標が達成された喜び、鍾乳洞が会場なのだという今回のツアーの沖縄公演などについて触れた後、「最後の曲なんですよ~」とコムアイが言ったところ、「えー!」という名残惜しそうな人々な声が上がる。すると、「やめよう。もうちょっと話すね」と、MCを延長してくれた。ツアーグッズの説明をしたり、マイクを振ると起こる不思議なサウンドを「風の音がする」などと言って無邪気に楽しんだり……自由過ぎるトークに対してスモークでツッコミを入れた照明スタッフ。すると彼女は、「そっちへ行くか」と、そのスタッフがいるPAスペースへと向かった。そんな予想外の展開のままスタートした「ドラキュラ」。「♪ちーすーたろか」という大合唱が、どんどん高まっていく。先ほどの照明スタッフにマイクを向けて歌わせるという場面も交えつつ、本編は賑やかに締め括られたのであった。
「今日だけのために用意した特別な「ラー」を聴いてもらおうと思います!」、アンコールのために再登場したコムアイは、「ラー」を歌いながら2人のダンサーと踊り始めた。大きな招き猫の風船が膨らんでユラユラ揺らめくのも目を引く。やがて、大人数のダンサーチームも合流。一気に賑やかになったステージ上に『カレーメシ』のキャラクターである黄色い米粒状の美味しそうな着ぐるみカレーメシ2くんが現れると、王を崇める民衆のようにひれ伏したダンサーたち。金色のテープが発射され、金色の紙吹雪も舞い散る……というゴージャス極まりないエンディングとなった。
「バイバイ。またね~!」と去って行ったコムアイを見送った観客の拍手。彼女はとても晴れやかな笑顔を浮かべていた。背景に流れるユニークな映像に彩られながら披露された各曲。個性豊かな衣装や小道具類。何が起こるのか分からない演出やパフォーマンスなど、とにかく見どころが満載だったこの日のライヴ。唯一無二のエンタテインメントを堪能した。J-POPシーンに突然変異の生命体のように現れた水曜日のカンパネラは、今後さらにどのような進化を遂げるのか? 誰も予想が出来ないような何かを、きっと生み出し続けてくれるはずだ。
【取材・文:田中 大】
【撮影:NoboruMiyamoto】
リリース情報
セットリスト
ワンマンライブツアー「ジパング」
2015.11.18@赤坂 BLITZ
- ラー
- シャクシャイン
- ディアブロ
- 桃太郎
- マルコ・ポーロ
- ライト兄弟
- ツイッギー
- ウランちゃん
- ユタ
- メデューサ
- ナポレオン
- 小野妹子
- 猪八戒
- ドラキュラ
- ラー(※特別バージョン)
お知らせ
ワンマンライブツアー~ジパング~
2015/11/27(金) 大阪 umeda AKASO (SOLD OUT)
2015/12/04(金) 札幌 Sound Lab mole (SOLD OUT)
2015/12/06(日) 仙台 CLUB JUNK BOX (SOLD OUT)
2015/12/12(土) 福岡 BEAT STATION (SOLD OUT)
2015/12/18(金) 名古屋 CLUB QUATTRO (SOLD OUT)
2015/12/23(祝・水) 沖縄 ガンガラーの谷・ケイブカフェ ※ゲスト:オオルタイチ(SOLD OUT)
ワンマンライブ NANIWA!
2016/02/24(水) 大阪 BIGCAT
ワンマンライブ OEDO!
2016/02/28(日) 東京 Zepp DiverCity
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。