サカナクションによる新たな試みとして今年の7月より恵比寿LIQUIDROOMにて始まった複合型クラブイベント『NF』は、改題する前の初回と合わせると、これで3回目の開催となる。3回目となると、遊び方に慣れたというようなオーディエンスも多くなり、1FメインフロアでのDJ、2Fでのワークショップ、Time Out Cafeでのトークショー、ギャラリーKATAでのインスタレーション、という同時に進行する4つの濃密なプログラムをバランスよく楽しもうとする各々の積極的な動きが、これまでの『NF』よりも遥かにクラブイベントらしい自由な雰囲気を会場内に巡らせていた。またこの日、『NF』をきっかけに生まれた楽曲『「聴きたかったダンスミュージック、リキッドルームに」』で迎えたPart 2の大団円は、“LIQUIDROOMでの『NF』”がサカナクションのホームイベントとしてすでに多くのファンに親しまれていることを象徴していた。

　今回『NF #2 -SEN-』の最大の見所はやはり、9月にパリで行われたANREALAGEの『2016S/SCOLLECTION "REFLECT”』のショーのために結成された、ICHIRO YAMAGUCHI（山口一郎）とAOKI takamasaによるユニットと、その直後に登場したAkufenだった。

　ICHIRO YAMAGUCHI + AOKI takamasaが披露した、フロアの隅から隅まで染みわたるような低音と、空気中に滑らかに伝わるサンプリングによる音像は、“もともとショーのために共同制作した音源をフロア向けにアップデートした”という単純構造をゆうに超えていた。元のミニマルな印象とは裏腹な熱量がフロアを痺れさせていた。そして、ここからの余波が凄かった。

　続いてAkufenが登場してからも、かねてよりサカナクションのメンバーが愛聴していることを公言していたアーティストということもあってか、フロアには引き続き多くの人が残っていて、非常に良い雰囲気だった。そんな中で、Akufenの自身の作品にも通づる独特の手法のサンプリングや繊細な生音の扱い方が特徴的なハウスから、オールドスクールなファンキーなハウスまでを縦横無尽するプレイがハマらないわけがない。さすがベテランの凝縮感とも思える濃いミックスに、フロアの熱は上がる一方で、終始オーディエンスからAkufenへと熱い視線と歓声が送られていた。

　その後に登場したSO INAGAWAも巧みなスキルでフロアに起きた大波を完全にモノにし、『NF』のレギュラーアクトとも言えるRhizomatiksからのコンビ、Daito Manabe＋Setsuya KurotakiもBPM早めのプレイで、ハイになっているフロアをさらにハイに仕上げていった。

　海外アーティストの招聘に加え、ひとつの理想的な夜を演出することができた今回の『NF #2 -SEN-』は、今後も続いていく『NF』とっては想像以上に重要な回になったと言える。あの日、『NF #2 -SEN-』のフロアにいた方々は、あの高揚感をどうか覚えていて欲しい。その記憶は次の『NF』を再び最高なイベントにするピースでもあり、“LIQUIDROOMじゃなくてもダンスミュージックを聴きたい”という興味へのきっかけになるはずだ。

【取材・文：Hiromi Matsubara（HigherFrequency）】