黒沢 薫 LIVE TOUR 2015 “LOVE LIVES”~Urban Style~ライブレポート
黒沢 薫 | 2015.12.10
友人、家族、恋人と一緒にドリンクや食事を楽しみながら、ゆっくりと過ごしていた客席の人々。やがて開演時間となり、バンドメンバーたちがスタンバイ。演奏が始まり、コーラスが響き渡った。そして黒沢 薫が登場。「NIGHT FLIGHT」がスタートした。ファンキーなサウンドに誘われ、観客は一斉に手拍子を始める。2曲目「流星」へと突入すると、さらなる一体感に包まれたビルボードライブ東京。エネルギッシュな歌声、グルーヴィーなバンドサウンドが融合して生まれる熱気が、とても心地よかった。
黒沢によるラップパートも交えて盛り上げた「Love a flava」の後に迎えたインターバル。「改めまして今晩は。特別な場所で歌うことを嬉しく思います。美味しいお食事、スペシャルなドリンクもあります。思いっきり心を開放して、一緒に楽しみましょう」。挨拶をした黒沢は、事前にインスタグラムで告知していたドレスコード“Something blue”に触れつつ、観客が身に着けている青いアイテムを確認。そして、「10年間、ラブソングを歌ってきたけど、男と女のことは分からないです。分からないからこそ面白くて、分からないからこそ、もっともっと愛おしい……」と言い、「横顔」を歌い始めた。アコースティックサウンドに彩られながら歌声が瑞々しく響き渡る。じっくりと耳を傾けながら聴き入る観客の間に、感動が広がっていくのを感じた。
「ここからは大人の時間にしましょうか。夜の帳が落ちて、スウィートな時間の始まりです」、薄暗くなったステージ上で披露されたのは「電話のむこう」。ミラーボールが回転しながら光の粒子を放つ中、歌声がロマンティックなムードで会場を染め上げた。続いて、スティックカウントを合図にスタートした「Maybe, Baby...」。時にはひざまずいて狂おしく歌声を響かせるなど、楽曲の中に脈打つ世界がドラマティックに表現されていた。歌い終えると、一旦、ステージから姿を消した黒沢。そして、ブロードウェイミュージカル『RENT』の楽曲「Seasons of Love」が、コーラス2人の歌声で届けられた。
「ニューシングルから1曲歌いたいと思います。今回のシングル、デュエットソングが多いから、1人で歌うのが難しい。でも、今日は千秋楽です。この曲はこの人と……」、黒沢がステージに招き入れたスペシャルゲストは、なんとMs.OOJA。披露されたのは「愛とは…」。共に過ごす日々を重ねながら、少しずつ愛の本質を見つける男女の姿が、歌声によって浮き彫りにされていた。時折、視線を交わし合いながら響かせる2人のハーモニーが美しい。彼らが互いの手を取り合ってエンディングを迎えた時、ステージに向かって大きな拍手が届けられた。
「しっとりとした曲が続きました。もう後半戦です。そろそろ乱れてみる? 身体揺らしてみる? じゃあ、いこうか!」、黒沢が呼びかけたのを合図に、鳴り響いたファンキーなベースライン。観客が一斉に立ち上がって手拍子を始めたところで、「Supernova」がスタート。現れた2人の女性ダンサーと一緒に黒沢も軽快にステップを踏むと、客席の手拍子と歓声は一層高まった。その熱気のまま突入したのは、2012年リリースのゴスペラーズのアルバム『STEP FOR FIVE』収録曲「CLASH」。黒沢の歌をフィーチャーしたこの楽曲は、随所にマイケル・ジャクソンへのリスペクトが滲む。ステージで歌いながら激しく踊る黒沢の姿にも、あの偉大なアーティストに対する愛が溢れていた。続いて、「元気ある? もっと盛り上がれる?」、観客をさらに煽って歌い始めた「Break it down」。ダンサー2人のソロパートも交え、妖艶なテイストのこの楽曲を鮮やかに表現していた。そして、「思いっきり乱れたところで僕と踊りませんか?」と言って「Groovin’」。観客も一緒に踊りつつ、素晴らしい一体感を生んでいた。
アッパーなナンバーが連発された後半戦だったが「お座りください」と言い、ゆっくりと言葉を探しながら語り始めた黒沢。「現在、世界は痛ましい出来事で溢れています。そういう状況の中で、音楽で何ができるか? 立ち尽くしてしまいそうになります。だからこそ、ラブソングを歌うんです。愛し合うって素敵だと思って欲しいから。日常にある幸せを分かって欲しいから。これが僕の抗い方、戦い方。それが黒沢薫の歌です。しんどい時、また歌を聴きに来てください。僕はいつでもここで歌っています。今日は本当にありがとうございます」……彼の音楽に対する強い想いを噛み締めつつ、本編のラストは「After the Rain」。徐々に光量を増すかのように迫って来るサウンド、歌声が胸に深く沁みた。
アンコールを求める観客の手拍子に応えるかのように、ステージバックの幕が突然開いた。大きなガラス窓の向こう側に浮かび上がったイルミネーションを目にして、客席の人々の間にどよめくような声が広がる。バンドメンバーに続いてステージに戻ってきた黒沢は、プライヴェートでも何度も足を運んでいるのだというこの会場、ビルボードライブ東京のステージに立てている喜びを滲ませた後、アンコール楽曲について語った。「リリースした当時は壮大過ぎて、歌いこなせていたかは分かりません。今やっとちゃんとお届けできるようになったのかな」という言葉を添え、披露されたのはソロデビュー曲「遠い約束」。スタンドマイクに向かい、一心に歌い上げる姿がまぶしい。聴き入る人々を優しく包みこむように届けられていた。歌い終えると、黒沢は共にライヴを作り上げたメンバーたちと横1列となり、繋ぎ合った手を掲げて挨拶。「ありがとうございました」とお辞儀をしてステージを後にした。
愛して止まないブラックミュージックを、黒沢のスタイルでじっくりと表現していたこのライヴ。自身のルーツを大切にしつつ、グループ活動とはまた別のアプローチを模索してきたのが彼のソロワークの10年間だが、それを見事に結晶化させているのを感じた。今後、「黒沢 薫」というアーティスト、シンガーはさらにどのような音楽を生み、表現していくのか? 期待が大いに高まるステージであった。
【取材・文:田中 大】
【撮影:大塚日出樹】
リリース情報
セットリスト
黒沢 薫 LIVE TOUR 2015
“LOVE LIVES”~Urban Style~
2015.11.29(1st)@ビルボードライブ東京
- NIGHT FLIGHT
- 流星
- Love a flava
- 横顔
- 電話のむこう
- Maybe, Baby...
- Seasons Of Love
- 愛とは… duet with Ms.OOJA
- Supernova
- CLASH
- Break it down
- Groovin’
- After the Rain
- 遠い約束
お知らせ
Mercedes-Benz MUSIC FACTORY
CHRISTMAS PARTY@Mercedes-Benz CONNECTION
2015/12/22(火)Mercedes-Benz CONNECTION(六本木)
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。