SUPER BEAVER 新曲3曲を披露した赤坂BLITZワンマンライブをレポート
SUPER BEAVER | 2015.12.16
ライブは中盤に差し掛かろうとしていた。赤坂BLITZの満員のフロアから声援が飛ぶ。SUPER BEAVER。2015年4月、結成から10周年を迎えた4人組。タイトでダイナミックなバンドサウンド、1人の人間の“人生の価値観”を綴った歌詞が、ストレートなメッセージとなり、聴き手の心を掴んできた。ここ数年だけみれば、じわじわと確実に動員をあげてきた、今、スルーできないバンドである。しかし、彼らの歴史が始まったのは10年前だ。
フロアのあちこちから声援が飛んでいる。
ボーカルの渋谷が、話し始めた。「たかが10年、されど10年。それが長いか短いか意味があるかわからないけど、10って節目だからさ。たくさんの人の助けてもらって支えられて、この場所に立たせてもらいました。本当に、本当に、ありがとう」メンバー全員が観客に向かって頭をさげる。この後、渋谷は10年前の自分達を振り返った。曰く、文化祭バンドで一生バンドをやるなんて思っていなかった、1度デビューして社会に出たけど社会を舐めてた。何をするにもそれなりの覚悟が必要だと知った。解散の話も出た。でもそんな自分達をたくさんの人達が支えてくれた。この状況に、こう思ったと言う。「音楽には、こういう力があるんだと知った。覚悟を持ってやれば助けてくれる。これから10年、15年、20年と続けていく時、もっともっと素敵な光景をあなたに見せてあげたい。今日、ここに立てているのは、あなたのおかげ。だから俺らはあなた達じゃなくて“あなた”に歌っている!」
この長いMCの後、演奏されたのが「あなた」だった。優しくどっしりした演奏。会場中が ♪ ラララ~ ♪ のシンガロングを繰り返す。スタンドからマイクを引きちぎるようにして前に出てきた渋谷。そのマイクを真っ直ぐ観客に向け、最後の大合唱を全身で受け取った。このシーンこそ、SUPER BEAVERが丁寧に育んできた自分達と観客の関係性=居場所だと思った。
SUPER BEAVER、初の赤坂BLITZワンマン「“都会のラクダ”Tour 2015~秋味、サシ飲み~」。「リリースも無いのにツアーって、もう本当にただライブがやりたくてやったツアーだから(笑)」(渋谷)と言う通り、この日のセットリストは、新旧曲はもちろん、ライブのキラーチューンもしっかり入っていた。そんな中でも、やはりポイントは、2016年初頭から3カ月連続でリリースされる新曲3曲がすべて入っていたことだろう。とにかく早く新曲をライブで“あなた”に聴いてもらいたかったという、バンドの意志が強く見えてくる。
2015年4月に発売されたアルバム『愛する』のリード曲「愛する」からスタートしたライブは、2曲目からホットなアップチューンを畳み賭け、会場のテンションを一気にフライトさせていった。ポジティヴなエネルギーが、空間全体を高揚させ、全体にピースフルな空気が充満しいているような。この観客の高揚は、ライブ中、変わらずキープされていた。ステージ上の4人は、歌いながら、演奏しながら、観客1人1人を見て、大きな声で言葉をかける。間奏で、1人ずつに視線を移しながら“ありがとう、ありがとう”と繰り返す渋谷。観客の視線を捉えて離さない、彼ら独特のパフォーマンスだ。自分達が放ったSUPER BEAVERというグライダーが、観客の心の中で失速しないで飛び回るように、彼らが魂を込めて、1人1人に、エネルギーを共有しようとしているように見えた。普通、BLITZクラスの会場になると、視線を上に向けて歌うボーカリストも多い。自分の視線より上に客席があるし、その方がサマにもなるからだと思う。しかし彼らは違った。渋谷を筆頭に、柳沢(Gt)も上杉(Ba)も、藤原(Dr)も、ライブ中、ずーっとフロア……というより観客の顔を見ていた。
13曲目「鼓動」から、ライブは終盤へギアチェンジしていく。歌いながら左右に走る渋谷。他の3人も演奏しながら歌っている。ドラムの藤原に至っては、主メロを歌っていたと思ったら、他メンバーのコーラスが入った瞬間、コーラスパートにチェンジしていた。本当に4人全員で歌ってるんだなと、ちょっと感動したシーンだった。それまで白光を基本に、赤や青など、単色をメインにして楽曲の迫力を後押ししていたライティングが、ガラリと変わり「ルール」。彼らには珍しい(?)ラブソング。 ♪ そんなもんだ ♪ という歌詞で何色ものムービングライトが会場を彩った。「新曲をもってきました“うるさい”」という曲」という紹介から「うるさい」。4人のユニゾンアカペラから始まるこの曲は、新曲3曲の中でも、ソリッドでハードなチューンだ。Aメロのクールさとサビの激しさの対比も大きな特徴。彼らが“うるさい”と叫んでいる対象は何なのか。リリースされたら是非、歌詞で確かめて欲しい。たぶん、聴いたら、ちょっと自分が好きになるんじゃないかな。なぜなら、私がそうだったから。フロアもステージもジャンプしながらクラップした「361°」。ステージからのライトで、パーッと明るくなる客席。ステージも同じだ。そして、この日のハイライトシーンは、次の瞬間、訪れた。
上杉のタイトなベースがリズムを刻む。ドラムの藤原がスティックを振り下ろす。ギターの柳沢が大きくジャンプしてギターをライドオンさせていく。渋谷がサウンドに合わせて大きく拳を突き出した刹那、大量の銀のメタルテープが赤坂BLITZの空間一杯に孤を描いた。通常の何倍の量だろうか。まるで、空間自体が発光しているようだった。2階席の上空まで舞い上がりキラキラと降りてくる無数のメタルテープは、まさにその曲にぴったりだった――「東京流星群」。メタルテープを手にし、振りながら ♪ Oh Oh Oh ♪ と大合唱する満員のフロア。綺麗で眩しい。絶景だ。この景色から、彼らの歌から、私はこんな想いを受け取った。 個性は無数にある。その個性は光さえあたれば、必ず輝くんじゃないか。自分は、その光を真剣に探しているだろうか。未来のピリオドを決めるのは、まだ早いんじゃないか、と。「また会おうな、SUPER BEAVERでした!」と叫び、本編最後は「証明」。エンディングでは、4人がドラムの前に集まり、最後のブレイクを力強く決めた。
アンコールでは、1月「ことば」、2月「うるさい」、3月「青い春」と、3カ月連続でシングルが発売されること、さらに、2016年4月10日、Zepp Diver Cityでワンマンライブを開催することが発表された。
この日最後の渋谷のMC。「伝えたいことを伝えたいと思った瞬間に伝えるのがすべて。だから俺らから、最後の最後に、あなたに伝えます“ありがとう”」この日のライブの最後を締めくくったのは「ありがとう」。SUPER BEAVERの歴史、決意がわかる1曲。迷いなくありがとうと言える素直さ。そこに納得力を持たせる歴史と実績、そしてそこから芽生えた雑草のようなタフな信念。他人と関わることは、時にはストレスだ。現代社会の中では、ストレスになることの方が多いだろう。そんな中で、そこにありがとう、関わってくれたことに感謝していますと高らかに謳えるSUPER BEAVER。この信念に基づいた強さは、きっとこれから、もっともっと彼らの道を広げていくのではなかろうか。
だって彼らは、人間は、決して1人で生きられないことを、もう細胞で知っている。
【取材・文:伊藤亜希】
【撮影:KOHEI SUZUKI】
【撮影:MAYUMI -kiss it bitter-】
リリース情報
セットリスト
「都会のラクダ」Tour 2015
~秋味、サシ飲み~
2015.11.27@赤坂BLITZ
- 愛する
- 歓びの明日に
- わたくしごと
- ヒカリ
- サイレン
- らしさ
- ことば(※新曲)
- 言えって
- 生活
- おかげさま
- それでも世界が目を覚ますのなら
- あなた
- 鼓動
- ルール
- うるさい(※新曲)
- →
- 361°
- 東京流星群
- 証明
- 青い春(※新曲)
- ありがとう
お知らせ
SUPER BEAVER10周年記念〆
「都会のラクダSP ~スーパーフィーバー~」
2016/04/10(日)Zepp DiverCity
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。