「奥田民生 生誕50周年伝説“となりのベートーベン”」をレポート!
奥田民生 | 2016.01.04
OTの50歳イヤーの最後を飾るイベント「奥田民生 生誕50周年伝説“となりのベートーベン”」が、東京国際フォーラム ホールAで開催された。
2015年5月に広島で行なわれた、ユニコーン 奥田民生50祭“もみじまんごじゅう“では、ユニコーンやサンフジンズなどOTが参加するバンドを集めて出づっぱり。驚異のスタミナを見せつけた。
夏にはライジング・サンで“民生の部屋”を開設。松崎しげるやPerfumeを招いて、見事なホストぶりを披露した。
その後も、同じ50歳になったEBIのユニコーン EBI50祭“海老乃大漁祭”を祝ったり、MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島で“奥田民生ひとり股旅スペシャル@マツダスタジアム”を成功させたりと、大活躍だった。
もうやることがないんじゃないのと思っていたら、ラストの“となりのベートーベン”は、今まで誰もやったことのない、まさにOTならではのイベントになった。
ライブは2部構成になっている。
第1部は、交流のあるバンド・ボーカリストが大集合してOTナンバーをカバーする。バックを務めるのはOT自身。しかもバンドは、ソロ活動を共にしてきた新旧メンバーが勢ぞろいする。第1部の前半は、初期の古田たかし(dr)、根岸孝旨(b)、長田進(g)、斎藤有太(key)が担当。懐かしい音を聴かせてくれた。
まず、このイベントの“発案者”の斎藤が「奥田民生と一緒にメシを食ってきた僕たちミュージシャンやスタッフから、彼へのお祝いです。そして長年、民生の音楽を聴いてきたみんなへのプレゼントです」と挨拶して開会を宣言する。
トップバッターはOKAMOTO’Sのオカモトショウ。「マシマロ」を軽快に歌う。浜崎貴司は、名曲中の名曲「野ばら」だ。サビ前のOTのギター・フレーズが美しい。くるり岸田繁の「The STANDARD」では、OTが渾身のハモを付ける。OTのライブでは絶対に聴けないハモパートに応える、岸田の丁寧な歌いぶりが素敵だった。
圧巻は吉井和哉の「手紙」。「なんでやらないのって周りからよく言われる曲を」と言って歌い出す。メロディのクセが吉井と似ているこの歌が、ぴったり似合う。以前、OTが吉井(THE YELLOW MONKEY)の「バラ色の日々」をカバーした時、「OTのメロディのクセに似ている」と思ったものだが、その反対のことが起こったのだ。2人のつながりの深さを感じて、嬉しくなった。
ここでバンドがMTR&Yに交代。斎藤はそのままで、小原礼(b)、湊雅史(dr)が轟音を響かせる。
TRICERATOPS和田唱が歌ったのは「夕陽ヶ丘のサンセット」だった。「The STANDARD」のカップリングとして発表されたこの曲は、OTもお気に入りでよく歌っている。OTと同じく、歌もギターも名手の和田が、この曲を歌うのはなんとなく分かる。実際、OTは楽しそうに演奏していた。
前日、48歳の誕生日を迎えたというスピッツの草野マサムネが「素晴らしいイベント」と言うと、OTはすかさず「歌わなくて済んでるのが素晴らしい」と混ぜ返す。草野は「スカイウォーカー」を歌い、真心ブラザーズの桜井秀俊のアコギから始まった「息子」では、OTが切れっ切れのスライド・ギター・ソロを弾く。
凄みがあったのは、仲井戸麗市だった。「50歳、おめでと~。いいね、若くて。たみお~、今日から大人の仲間入り。俺が歌う曲は、有太が選んでくれました。名曲の一つに挑戦させてください。1995年のアルバム『29』に入ってる曲です」と「人間」を歌い始める。♪友達の名前 好きな人の顔 2、3個忘れて困る♪という歌詞がズシンと響く。ギター・ソロが鋭い。“大人仲間”の小原のベースがよく似合う。入魂の余り、仲井戸は次の出演者を紹介するのを忘れて帰ってしまい、あわてて戻ってCharを呼び込んで、握手を交わして去っていった。
ロックのレジェンドが続く。Charはエンジ色のストラトキャスターで「あくまでドライブ」のギター・ソロを目いっぱいワイルドに決める。このギターはCharがいちばん気に入っている1本で、この日の朝に急に弾きたくなったと、後で楽屋で教えてくれた。きっとそれが、民生へのプレゼントだったのだろう。
最後は第1部の出演者全員で「イージュー★ライダー」。「それでは皆さん、不朽の名作を……すみません。言うんじゃなかった(笑)」とOT。夢のようなメンバーの競演となった。
休憩をはさんで、第2部はフルオーケストラをバックにOTが歌う。斎藤がどうしてもやりたかった企画で、イベントのずっと以前から入念に準備を進めてきた。サザンのライブでお馴染みの金原千恵子率いるストリングスと、先日の椎名林檎のツアーに参加していた村田陽一を中心とするブラスが集結。凄腕たちが斎藤の書き下ろしたスコアを演奏する。
コンセプトは“ロックなオーケストラ”だ。OTはバンドを従えて、ギターを弾きながら歌う。そこにフルオーケストラが加わる。きれいなだけの管弦楽ではなく、迫力のあるサウンドを斎藤は考えていた。
面白ソング「股旅(ジョンと)」で、その本領が発揮される。ちょっとふざけたこの曲のマーチのリズムを、ステージ上の50人が大真面目に演奏するから、場内は大笑い。かと思うと、「さすらい」では真心ブラザーズの桜井がタキシード姿でバイオリン隊に参加して、感動を届ける。OTは「風は西から」のイントロで、和田唱たちのコーラスと一緒に英語バージョンを歌って拍手を浴びていた。
アンコールでOTはPUFFYの2人にはさまれて登場。生オーケストラで「アジアの純真」を歌ったから、オーディエンスは大喜び。続く「すばらしい日々」はインストで、斎藤が素晴らしいアレンジを聴かせる。
50歳イヤーの最後の曲は「CUSTOM」だった。この日の出演者全員が、OTの音楽に賭ける個人的な思いを込めたこの曲を歌う。「CUSTOM」は♪誰か 誰か 聞いてくれないか♪と歌った後、♪届いてる?♪と結ばれる。しっかり届いていることを表わすように、会場中がOTに大きな歓声と拍手を贈って、イベントは幕を閉じたのだった。
【取材・文:平山雄一】
リリース情報
セットリスト
奥田民生 生誕50周年伝説
“となりのベートーベン”
2015.12.22@東京国際フォーラム ホールA
<第1部>
- マシマロ(with オカモトショウ)
- 野ばら(with 浜崎貴司)
- 悩んで学んで(with Leyona&うつみようこ)
- The STANDARD(with 岸田繁)
- 愛のために(with 八熊慎一)
- 手紙(with 吉井和哉)
- 夕陽ヶ丘のサンセット(with 和田唱)
- スカイウォーカー(with 草野マサムネ)
- 息子(with 真心ブラザーズ)
- 明日はどうだ(with トータス松本)
- 人間(with 仲井戸麗市)
- あくまでドライブ(with Char)
- イージュー★ライダー(All Cast)
<第2部>
- ライオンはトラより美しい
- コーヒー
- 股旅(ジョンと)
- 手引きのようなもの
- ヘヘヘイ
- MILLEN BOX
- さすらい
- 風は西から
Encore
- アジアの純真(with PUFFY)
- すばらしい日々(Inst)
- CUSTOM(All Cast)
お知らせ
新春オペ(サンフジンズ)
2016/01/13 広島クラブクアトロ
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2016/01/23(土)福岡サンパレスホテル&ホール
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2016/02/06 福岡サンパレスホテル&ホール
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