THE BACK HORNの”マニアック”な味を十分噛み締めることができたスペシャルなライブ
THE BACK HORN | 2016.01.14
2005年に「マニアックヘブンVol.0」が行われて以来THE BACK HORNの年末恒例企画となり、ついに10回目を迎えた「マニアックヘブンVol.9」が12月23日に新木場スタジオコーストで行われた。最初の提案者である松田晋二(D)がライヴ中に言った言葉を引けば「THE BACK HORNによる、THE BACK HORNファンのためだけのイベントをやろう」との趣旨で始まっただけに、通常のツアーやイベントとは一味違ったものになっている。今回も入魂の展示と、ファンから募集したカヴァーを含むスペシャルなセットリストで、この日限りの特別なTHE BACK HORNを体験させてくれた。
回が重なるにつれ「自分たちでハードルを上げている」という展示物なども今回はひときわ充実。昼から開いたギャラリーでは、これまで販売してきたオリジナルTシャツやグッズ、描いたメンバーそれぞれの個性的な才能を感じさせるブックレットやポスターなどの原画などを展示。またメンバーの等身大パネルとの撮影ができたり特製ラコス・バーガーなどを食せたりと、この日ならではの体験も。そして毎年話題となるメンバー特製レシピによるオリジナルドリンクは、アルコール入りが「ダストデビル」(山田将司/Vo)「ブランクページ」(岡峰光舟/B)、ノンアルコールが「幻日」(菅波栄純/G)「汚れなき涙」(松田)。カウンターには長蛇の列ができていた。
準備万端のオーディエンスの前に登場したTHE BACK HORNの4人もパワー全開で、ドラマチックな躍動感をぶつけた「敗者の刑」を幕開けに、このシリーズならではのセットリストを進めていく。「ついにこの日がやってまいりました。今年も行うことができて嬉しく思っています。最後まで最高の時間にしたいと思います」という松田のMCを挟んで、「墓石フィーバー」や「水槽」などTHE BACK HORNのディープな部分を描いた曲や、滅多に演奏しないインディーズ時代の「カラス」や「ザクロ」を演奏。4人が全身でアグレッシヴな演奏する中、山田が「全国からお集まりでしょう。みんな会いたかったよ!」と呼びかけると、フロアは歓声と突き上げる腕で埋まった。
少し空気を落ち着かせるように、柔らかな「シアター」、フレットレス・ベースが唸った「羽衣」、そして歌詞集「生と死と詞」付属CD収録の「コオロギのバイオリン」が続いた後は、この日のスペシャル企画の一つ、リクエストコーナーへ。開催にあたって募った「THE BACK HORNにカヴァーして欲しい曲」から選ばれた曲を演奏するのだ。その前ふりとなるMCで、松田が「昔は、何がカヴァーだ、まずは自分たちの曲だろう」と言いかけると岡峰が「聞いたけど、最初バンド組んだ時にカヴァーじゃなくてコピーがうまくいかねえからオリジナルやったって?」とツッコみ、菅波が「やべえ、バンドの真実明かされたよ」と苦笑。松田が「いろんな曲コピーできたら、その楽しさで3年ぐらい行けたはずなのに」と返すと、菅波は「全然楽しくなかったね」、山田は「できることからやっていこうと」と苦笑した。そんな頃から17年彼らはこのバンドを続けてきたのだ。今だからこそ歌ったカヴァーは、「昭和の名曲」と山田が紹介した「なごり雪」、フジファブリック「若者のすべて」、洋楽で1番の投票数だったというニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」。そして「先日このバンドの武道館を見に行きました」と山田が言っただけで歓声が起こったフラワーカンパニーズ「深夜高速」。どれもオリジナルの良さを生かしながらTHE BACK HORNならではのサウンドと歌で、オーディエンスの耳を捉えていた。
やはりカヴァーは緊張していたのだろう。終盤は開放感に溢れて「マニアックヘブンVol.9、もっと行くぞ!」と山田が叫び、「神の悪戯」「パッパラ」と熱気を上げていき、フロント3人が前に進み出た「共鳴」、そして「最後の曲」と山田が告げ菅波が吠えた「カラビンカ」は、ヘヴィでシリアスな演奏とフロアからのオイコールが一体となって最高のカオスを生み出した。これぞTHE BACK HORN、と思わせるラスト・ソングだった。
アンコールは、「マニアックヘブン」だけの定番となりつつある「天気予報」から。山田がドラムセットに向かった途端に歓声が起こり、松田がハンドマイクでフロントに立ち歌い出すと大歓声で迎えられた。この曲がこんな風に愛されるようになるとは誰も思っていなかっただろう。この日の特製ドリンクの解説など4人が話して和んだ空気を一転させたのは、山田が「THE BACK HORNで最初にカヴァーした曲」と紹介したブランキー・ジェット・シティの「ガソリンの揺れかた」。イントロを菅波が間違えてやり直すという、これまたレアなことになったが、演奏が始まればまぎれもないTHE BACK HORNの「ガソリンの揺れかた」だ。伝説が紐解かれているようで鳥肌が立った。そして最後はマニアックヘブンの有終の美を飾る曲となっている「さらば、あの日」。明日への活力を生み出すような曲を誰もが心から楽しんだ。
10回の節目を迎えて4人がスタッフと共にひときわ力を入れた今回は、カヴァーで示した彼ららしさ、そしてオリジナルが持つ揺るがぬ姿勢とサウンドが重なり、まさにTHE BACK HORNの”マニアック”な味を十分噛み締めることができた。こうして1年を締めくくり新しい年を迎えたTHE BACK HORNは、2月から始まる「KYO-MEIツアー」で再び全国へと動きだす。
【取材・文:今井智子】
【撮影:AZUSA TAKADA】
リリース情報
運命開花(初回限定盤)[CD+DVD]
2015年11月25日
ビクターエンタテインメント
1. 暗闇でダンスを
2. ダストデビル
3. その先へ
4. tonight
5. コンクリートに咲いた花
6. 記憶列車
7. 胡散
8. 魂のアリバイ
9. 悪人
10. シュプレヒコールの片隅で
11. 君を守る
12. カナリア
[DVD]
『Document of 運命開花』
アルバム制作を追いかけたドキュメント。Music Video「悪人」「その先へ」の撮影ドキュメントを含む約45分の特別映像
セットリスト
マニアックヘブンVol.9
2015.12.23@新木場STUDIO COAST
- 敗者の刑
- 墓石フィーバー
- カラス
- 水槽
- サーカス
- ザクロ
- シアター
- 羽衣
- コオロギのバイオリン
- なごり雪
- 若者のすべて
- Smells Like Teen Spirit
- 深夜高速
- 神の悪戯
- パッパラ
- 共鳴
- カラビンカ
- 天気予報
- ガソリンの揺れかた
- さらば、あの日
お知らせ
THE BACK HORN「KYO-MEIワンマンツアー」~運命開歌~
2016/02/21(日) 渋谷TSUTAYA O-EAST
2016/02/23(火) 千葉LOOK
2016/02/25(木) HEAVEN’S ROCK KUMAGAYA VJ-1
2016/03/02(水) HEAVEN’S ROCK UTSUNOMIYA VJ-2
2016/03/03(木) 水戸LIGHT HOUSE
2016/03/11(金) 京都磔磔
2016/03/13(日) 米子AZTiC laughs
2016/03/18(金) 神戸VARIT.
2016/03/20(日) 和歌山CLUB GATE
2016/03/21(月・祝) 奈良NEVERLAND
2016/03/26(土) 松本Sound Hall aC
2016/03/27(日) 甲府CONVICTION
2016/03/31(木) 郡山HIP SHOT JAPAN
2016/04/02(土) 石巻BLUE RESISTANCE
2016/04/03(日) 盛岡CLUB CHANGE WAVE
2016/04/07(木) 浜松窓枠
2016/04/09(土) 名古屋DIAMOND HALL
2016/04/10(日) 金沢EIGHT HALL
2016/04/14(木) 大分DRUM Be-0
2016/04/16(土) 宮崎SR-BOX
2016/04/17(日) 鹿児島CAPARVO HALL
2016/04/21(木) 岡山YEBISU YA PRO
2016/04/23(土) 高知X-pt.
2016/04/24(日) 松山サロンキティ
2016/05/07(土) 広島クラブクアトロ
2016/05/08(日) 福岡DRUM LOGOS
2016/05/10(火) 熊本DRUM Be-9 V1
2016/05/14(土) 松江AZTiC canova
2016/05/15(日) 高松MONSTER
2016/05/21(土) 新潟Lots
2016/05/22(日) 仙台Rensa
2016/05/28(土) 旭川CASINO DRIVE
2016/05/29(日) 札幌ペニーレーン24
2016/06/10(金) なんばHatch
2016/06/12(日) 新木場STUDIO COAST
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。