パスピエ 日本武道館単独公演 “GOKURAKU” ライブレポート
パスピエ | 2016.01.20
スタート前から観客の注目を集めていた大きな謎の三角形。ステージ後方の高台に鎮座しているその物体は何なのか? 開演時間を迎えた時、正体が判明した。SEが流れ、三角形の上半分に仕込まれているスクリーンに浮かび上がった映像。そして、下半分の台形部分からやおたくや(Dr)を先頭として1人ずつメンバーが登場。何やらピラミッドパワーがステージに宿りつつあるかのようなムードが漂った中、華々しく鳴り響いたバンドサウンド。赤い振袖風の衣を纏った大胡田なつき(Vo)が両腕を広げたのを合図に「電波ジャック」の演奏が始まった。レーザー光線が眩しく飛び交い、会場全体で観客が身体を揺らしながら盛り上がる様が壮観。続いて「トロイメライ」「贅沢ないいわけ」「YES/NO」「裏の裏」……お馴染みのナンバーたちが日本武道館の隅々にまで広がっていく感触が、何とも言えずドラマチックであった。
「“GOKURAKU”に来てくれてありがとうございます。“GOKURAKU(極楽)”は“極めて楽しい”と書くので、僕らも楽しみます。みなさんも最後まで楽しんでください」、最初のMCで挨拶をした成田ハネダ(Key)。「今日、12月22日が、ここにいる全ての人にとって極めて楽しい1日になりますように。最後までよろしくお願いします!」、大胡田も観客に呼びかけた後、再び演奏へ。「トーキョーシティ・アンダーグラウンド」が鳴り響き、幻想的な空気に染まった会場内。続いて「蜘蛛の糸」へと突入し、恍惚の表情を浮かべた観客の間から自ずと手拍子が起こる。異界の扉を開き、あやかしの世界へと深く踏み入るかのような夢見心地を噛み締めた。
「名前のない鳥」と「花」も歌った後、ステージから姿を消した大胡田。そのままステージに残った楽器隊のメンバーたちは、各々のソロプレイも交えつつ、セッションを繰り広げた。そして、2人のダンサーを引き連れて戻ってきた大胡田。狐のお面を着用した3人がステージ前方へと踏み出してスタートしたのは「つくり囃子」。露崎義邦(Ba)による印象的なベースフレーズを経て終盤へと突入すると、観客は一斉に掲げた腕を左右に揺らして興奮を露わにした。続いて「術中ハック」。Wネックを手にして通常のギターとバリトンギターの音色を使い分けながら、多彩な色合いを添える三澤勝洸(Gt)の姿が目を引く。最新アルバム『娑婆ラバ』の中でも特に妖艶な趣きを帯びている2曲が、異彩を放ったひと時であった。
「とおりゃんせ」へと突入し、手拍子をして身体を揺らしている観客。躍動感に溢れたサウンドが、再び日本武道館を揺さぶる。この曲を歌い終えると、ステージ後方の高台に登った大胡田。用意されていた銅鑼を彼女が力強く叩いて「チャイナタウン」がスタートした。会場の盛り上がりも最高潮へ。その勢いのまま雪崩れ込んだ「フィーバー」も、アリーナから2階席まで、あらゆるエリアの人々を夢中で踊らせていた。そして、「脳内戦争」では、新鮮な光景が展開した。ショルダーキーボードを手にした成田は、ステージの端まで移動してエモーショナルにプレイ。演奏終了後、「成田ハネダが動いてるって珍しいですよ」と大胡田が言い、成田は「後にも先にも多分今回だけです(笑)」と照れくさそうに汗を拭っていた。
「自分たちのことを信じてやってきたけど、こういう景色を見ると信じられない感じもあって……1個1個のことが積み重なってできたライブだと思ってます。言うのが小っ恥ずかしいけど(笑)、このメンバーでこのステージに立てて良かった」と語った成田。「歌詞で小難しいこととか言ってるけど、胸がいっぱいで言葉が出てこないです。喋るのが得意じゃないので歌で伝えたいと思います」、大胡田も想いを語った後、披露されたのは「手加減のない未来」。爽やかな朝日のように広がるサウンドが気持ちいい。そして「ワールドエンド」と「シネマ」も届けられ、会場内に渦巻く熱気がさらに高まっていく。客席に向かって金色のテープが発射されて舞う中始まった「MATATABISTEP」は、《♪パパパリラ~》というフレーズの大合唱が起こっていた。
「トキノワ」が披露された後に迎えたMC。「みなさん、どうもありがとうございました。とっても幸せです。パスピエの大事なこの曲でおしまいにしたいと思います」、大胡田の言葉を添えて、本編を締め括ったのは「素顔」。鍵盤による伴奏と歌から始まり、やがて他の楽器も合流。観客は一心に耳を傾け、子守歌のように優しいサウンドに包まれている。音を奏でるメンバーたちの心の奥底にそっと触れたような気がする温かい曲であった。
アンコールを求める歓声に応えてステージに戻ってきたメンバーたち。「アルバムを出して、ツアーを回って。2つの山場がいい形を迎えられて良かった。1つの区切りみたいだけどスタート地点。一歩目を踏んだと思ってます。じゃあアンコールやろうか。あのアルファベット2文字の……」と成田が言ったところ、「何? その曲振り?(笑)」と少々困惑しながら笑っていた大胡田。微笑ましいやり取りを経て、アンコールの1曲目に披露されたアルファベット2文字の曲は「S.S」。そして、「また必ずお会いしましょう。パスピエでした!」と大胡田が観客に呼びかけ、「最終電車」がラストを飾った。光量を増していくかのように展開するサウンドが清々しい。成田による華麗なソロプレイを経て終盤へと差し掛かると、歌声と演奏は一層の瑞々しさを帯びながら迫ってきた。
大胡田が軽くジャンプをして着地。そして終了した演奏。観客の間から起こった拍手と歓声がものすごい。「ありがとうございました!」と挨拶をしながら、各エリアの観客に向かって何度も手を振ったメンバーたち。全員、とても満足そうな表情を浮かべていた。そして彼らがステージを後にすると、流れたエンディングSE。ステージ後方の三角形のスクリーンに映像が瞬いた。最後に浮かび上がったのは、線描による瞳のイラスト。その視線を浴びながら噛み締めた余韻は、まさしく「GOKURAKU=極楽」と呼ぶにふさわしい素敵な感触であった。
【取材・文:田中 大】
【撮影:鳥居洋介】
リリース情報
娑婆ラバ(初回限定盤)[CD+DVD]
2015年09月09日
ワーナーミュージック・ジャパン
01. 手加減の無い未来
02. 裏の裏
03. アンサー
04. 蜘蛛の糸
05. 術中ハック
06. 贅沢ないいわけ
07. 花
08. ハレとケ
09. つくり囃子
10. ギブとテイク
11. トキノワ
12. 素顔
[DVD]
パスピエ TOUR 2014 “幕の外ISM” at Zepp DiverCity(TOKYO)
01. - opening -
02. MATATABISTEP
03. トーキョーシティ・アンダーグラウンド
04. 七色の少年
05. - session -
06. チャイナタウン
07. はいからさん
08. 贅沢ないいわけ
09. S.S
10. シネマ
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セットリスト
日本武道館単独公演 “GOKURAKU”
2015.12.22@日本武道館
- 電波ジャック
- トロイメライ
- 贅沢ないいわけ
- YES/NO
- 裏の裏
- トーキョーシティ・アンダーグラウンド
- 蜘蛛の糸
- 名前のない鳥
- 花
- Session 武道館
- つくり囃子
- 術中ハック
- とおりゃんせ
- チャイナタウン
- フィーバー
- 脳内戦争
- 手加減のない未来
- ワールドエンド
- シネマ
- MATATABISTEP
- トキノワ
- 素顔
- S.S
- 最終電車
お知らせ
J-WAVE“THE KINGS PLACE”LIVE vol.10
2016/03/24(木)新木場・STUDIOCOAST
出演:KEYTALK / クリープハイプ / 04 Limited Sazabys / パスピエ
rockin’on presents JAPAN JAM BEACH 2016
2016/05/03(火・祝)、04(水・祝)、05(木・祝) 幕張海浜公園JAPAN JAM BEACH特設会場
※パスピエ出演日はいずれか一日となります
METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2016【大阪】
2016/05/14(土)、15(日)METROCK大阪特設会場
※パスピエ出演日はどちらか一日になります。
METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2016【東京】
2016/05/21(土)、22(日)新木場・若洲公園
※パスピエ出演日はどちらか一日となります
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。