Hilcrhymeの“覚悟”と“これから”が見えた 『Christmas LIVE 2015 ユキノフルマチ』
Hilcrhyme | 2016.01.25
『ユキノフルマチ』というサブ・タイトルが付けられた、Hilcrhymeのクリスマス・スペシャル・ライブ。彼らの東京での単独ライブは、2015年5月にNHKホールで行われた『Hilcrhyme Tour 2015 REVIVAL』ツアー・ファイナル公演以来となる。
会場の豊洲PITに入ると、開演前からDJ KATSUがステージ上で、DJとして様々なクリスマス・ソングなどをプレイしている。こういった演出からも、このライブのスペシャル感が伝わってくる。そしてステージ後方のスクリーンで、開演10分前からカウントダウンが始まり、それが0分0秒になったところでTOCも登場して、サード・アルバム『RISING』に収録されている彼らのオリジナル・クリスマス・ソング「マイクリスマスキャロル」からライブがスタートした。
その後「TOKYO CITY」「トラヴェル・マシン」というアップ・テンポのナンバーで、会場のボルテージも一気に盛り上がっていく。その後も「パーソナルCOLOR」「Changes」と、『RISING』からのナンバーが続き、さらに“ここからは、バック・トゥ・ベイシックです”とTOCが語って、「LOOP」「XYZ」「デタミネーション」「STAY ALIVE」と、彼らの過去のレパートリーから、ハードで、メッセージ色の強いナンバーが続けて披露されていく。その一方で、“Hilcrhymeの曲には、季節がある”というMCから、「YUKIDOKE」「ツボミ」「FLOWER BLOOM」といった、四季をテーマに選曲したコンセプトアルバム『春夏秋冬~Hilcrhyme 4Seasons Collection~』に収録された季節感溢れるナンバーも続けて歌われたが、こういった二面性が共存しているのも、Hilcrhymeの大きな魅力だ。バックに流れる様々な映像もこれまでよりバラエティ豊かなものになり、曲によってアニメーションだったり、風景の映像だったり、ビデオ・クリップだったり、またリリックだったり、様々な映像と楽曲とのシンクロも、より緻密なものになっている。TOCが“これが、Hilcrhymeの2016年への覚悟です”と話していたが、今回のステージングは、しっかりとこれまでの足跡を見つめ、その上で前に向かっていこうという彼らの姿勢が感じられるものだった。
その後、DJ KATSUのソロ・パフォーマンスでは、彼が坂本龍一の「戦場のメリー・クリスマス」のフレーズをピアノで弾くなど、クリスマス・ライブならではのアプローチも楽しい。
そして最新シングル「言えない言えない」に続いて、この日のひとつのハイライトともいうべき、TOCとDJ KATSUのアコースティック・メドレーが披露された。ステージ中央で二人が向かい合い、DJ KATSUのピアノとTOCのボーカルだけで、「春夏秋冬」「Your Smile」「想送歌」の3曲をパフォーマンス。こういったアコースティック・メドレーをライブでやるのは初めてだという。“もう、二度とやりません”とTOCは言っていたが、二人の絆みたいなものを感じさせる、とても温かいデュオで、ぜひ今後とも続けてほしいなと感じた。そして会場全体がしっとりとしたムードになったところで、“そんな空気をブチ壊すのが、オレたちの2015年”というTOCの言葉から「I’m Ready」「ウィライキ」「Moon Rise」「East Area」と、前のめりのヒップ・ホップ・チューンが畳みかけるように歌われ、さらに「エール」ではファンも含めての大合唱となり、会場のボルテージは一気に頂点へと達していった。
ところが、“クリスマス・ライブといっても、ハッピーに終わるのではなく、今日は悲しく終わりたい”というTOCの言葉から、「もうバイバイ」「HAKU-SAN」という切ないラブ・ソングがラストに歌われた。ライブ・タイトルの『ユキノフルマチ』は、「HAKU-SAN」のリリックの一節で、ステージ上にも雪が舞っている。“悲しい歌だけど、そこにオレたちのエネルギーが詰まっている。それがHilcrhyme”とTOCが語る。こういった、ちょっぴり“ひねくれた”展開も、ある意味とても彼ららしいといえる。こちらの予想どおりに進まないのも、Hilcrhymeらしさなのだ。
そしてアンコールでは、“でも、やっぱり悲しいまま終わるのは、つらいよね”ということで、「New Era」「リサイタル」という、ライブではおなじみのアッパーなナンバーでまたまた空気を変え、続いて「大丈夫」で、会場全体を優しく包み、さらに“渾身のクリスマス・ソングとして作りました”という、「マイクリスマスキャロル」が再び歌われて、この日のスペシャル・ライブはすべて終了した。
これまで彼らのワンマンライブには、ダンサーやバックバンドを加えることが多かったが、今回はすべて二人だけによるステージで、さらにアコースティック・メドレーのパートや、またポップなものとハードなものとの対比がさらに際立っていたりと、単なるクリスマス・ライブというだけではなく、Hilcrhymeがこれから進もうとしている方向性を指し示しているかのような、とてもクリエイティブなステージだった。Hilcrhymeの2016年、そしてこれからの彼らの活動がより楽しみになってくるような、スペシャルで、内容の詰まったライブだったといえるだろう。
【取材・文:熊谷 美広】
【撮影:濱谷幸江】
リリース情報
言えない 言えない(初回限定盤)[CD+DVD]
2015年09月02日
ユニバーサル ミュージック
1. 言えない 言えない
2. I’m Ready
[DVD]
「言えない 言えない」Music Video
セットリスト
Hilcrhyme Christmas LIVE 2015 ユキノフルマチ
2015.12.23@豊洲PIT
- マイクリスマスキャロル
- TOKYO CITY
- トラヴェルマシン
- パーソナルCOLOR
- Changes
- LOOP
- XYZ
- デタミネーション
- STAY ALIVE
- YUKIDOKE
- ツボミ
- FLOWER BLOOM
- SKY DRIVE Christmas Ver.
- 言えない 言えない
- Acoustic Medley
春夏秋冬
Your Smile
想送歌 - I’m Ready
- ウィライキ
- Moon Rise
- East Area
- エール
- もうバイバイ
- HAKU-SAN
- New Era
- リサイタル
- 大丈夫
- マイククリスマスキャロル