あゆみくりかまきの初の東名阪ワンマンツアー「ボクらの熊魂2016 ~チャーハン・シャケ缶・とーめーはーん！~」のファイナル、東京・恵比寿 LIQUIDROOM公演。ワンマンとしては過去最大キャパとなったこの日（チケットはソールドアウト。フロアはたくさんの“マタギ”でぎっしり！）、あゆみ、くりか、まきの３頭は凄まじい気合と熱気に満ちたステージを繰り広げた。昨年末の交通事故で、一時はワンマンツアーの開催も危ぶまれたが、メンバー自身の強い希望によって予定通りに行われたのだ。

　予想外のアクシデントを乗り越えて迎えたツアー最終日にかける思いは、オープニングから前面に現れていた。くりかが“復活”という文字が大きく書かれたフラッグを掲げ、メンバー3頭が登場した瞬間から会場のテンションは一気に上昇。「あゆみくりかまき、今日、ここ恵比寿LIQUIDROOMから復活です！リスタートします！」（まき）というシャウトとともにインディー時代からの爆音アンセム「ジェットクマスター」、「心友フォーエヴァー」を連発し、爆発的な一体感を生み出していく。ふだんのワンマンは“ＤＪセット＋ライブ”で行われることが多いが、今回のツアーは「持ち曲だけで勝負！」（まき）。エモーショナルなボーカルを響かせるあゆみ、シャープなダンスとＤＪプレイを繰り出すくりか、そして、ケガの為に右手を吊りながら、全身全霊のパフォーマンスでオーディエンスと積極的にコミュニケーションを取るまき。メロコア、エモ、ヘビィロックを基軸にしたサウンド、彼女たち自身の生々しい感情とメッセージを込めまくったリリックがひとつになった楽曲は、やはりライブでこそ真価を発揮する。楽曲の魅力をリアルに体現するステージング、３頭のリレーションシップも明らかに向上していた。

　ライブ中盤では、ワンマンならではのサプライズ的な演出も。まずは4月13日（水）リリースのメジャー１stフルアルバム『あゆみくりかまきがやって来る！　クマァ！クマァ！クマァ！』に収録される新曲「What’s my name?」をいち早くお披露目。ズッシリとしたヘビィネスをたたえたサウンド、メンバーの名前にちなんだ歌詞（あゆみ→“歩み出せ”、くりか→“繰り返せ”、まき→“巻き起こせ”）が印象的なこの曲は、この先、あゆみくりかまきのライブ定番曲になっていきそうだ。さらにメンバー３頭のソロコーナーも。あゆみはソロ時代に歌っていたという「ブルーバード」（いきものがかり）を熱唱、くりかは自分で振り付けたダンスとともに「ラバソー~lover soul~」（柴咲コウ）を披露。まきは“またぎをステージに上げて似顔絵を描く”という企画で会場を沸かせる。３頭の個性を活かしたステージングによって、メンバーとまたぎの親近感が増していく。

　そしてライブは終盤へ。「アルバムではもう一度オリコンのトップ10に入って、グループ名を歴史に残したいと思っています」「ひとりひとりの心にあゆみくりかまきの音楽を、3頭の熊娘の存在をぎっしり刻み込んでもらえるように、一生懸命歌います！」（まき）という気持ちのこもった言葉とともに「KILLLA TUNE」「森森森」「自分革命」というエモーショナルなナンバーが放たれ、フロアの興奮は一瞬にしてピークに達した。

　キュートな振り付けが楽しい「森のくまさん」からスタートしたアンコールでは、メンバーが今回のツアーについて改めてコメント。
「事故によっていろんなスタッフが駆けつけてくれて、そして、こうやって東名阪ツアーに会いにきてくれて。私たちはこんなにもたくさんの宝物を手に入れてたんだなと改めて感じました」（あゆみ）
「（事故の後）悔しくて、めっちゃ泣いたんですよ。みんなのコメントとかがなかったら、今こうやって戻ってこれなかったんじゃないかって思うくらい、みんなが大切だし、なくてはならない存在です。これからもずっと一緒に歩んでいきたいって、改めて心から思います」（くりか）
「年末のあの日、私たちの目の前は真っ暗になりました。こんなところで終わってたまるか！って３頭で手を握って、心のなかで唱えました。そのとき１本の強い光が見えました。ステージから見える、みんなの笑顔が光になってました。東名阪ツアーを経て、私たちは宇宙でいちばん幸せじゃないかなって思います」（まき）

　ラストは「ナキムシヒーロー」。涙を浮かべながら叫ぶ「さぁ行こう　遅すぎる夢はないんだ」というフレーズは、彼女たちのリアルな願望としっかりリンクしていた。

　「あゆみくりまかき自身と言っても過言ではない」（まき）というアルバム『あゆみくりかまきがやって来る！クマァ！クマァ！クマァ！』のリリース、その前後に行われるライブによって、３頭の熊娘の存在はさらに広いフィールドで認知されるはず。2016年の彼女たちの飛躍をしっかりとフォローしていきたいと思う。

【取材・文：森朋之】
【撮影：小澤仁美】