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アカシック全曲披露ライブ 2月8日渋谷duo MUSIC EXCHANGEをレポ

アカシック | 2016.02.26

 約半年前、アカシックの5人は自身初のワンマンライブを成功させた。後日、その時の様子について「鬼気迫る勢いだった」とメンバーに伝えたところ、「たしかにそうだったかもしれない」と認めていた。5人はそれだけこの日にかけていたのだ。

 今日、渋谷DUOで行われるのもワンマンライブだ。しかし、メンバーの心持ちは前回とはまた違っていただろう。なぜなら、今日は3月16日にリリースされるメジャー1stフルアルバム「凛々フルーツ」の初お披露目ライブなのだ。しかも、アルバムの曲順通りに演奏すると言うんだから気合いが入っている。近年、国内外を問わず、かつての名作から全曲披露するライブが流行っているが、それはあくまでもベテランバンドによるもので、彼らのような若手バンドが、しかも未発売の新作から全てライブ演奏するなんて前代未聞である。

 どうやってメンバーがこのアイデアにたどり着いたのかは分からない。しかし、この決断をしてからきっと一度は後悔したはずだ。だって、よく考えてみて欲しい。まず、何度も言うが、演奏する曲は全て新曲だということ。作品のレコーディングが終わった後、気を抜く暇もなく、すぐさまライブ練習に入らなければいけない。しかも、レコーディングしたからといって全ての曲が頭に入っているわけではないので(バンドによるが)、みっちり体に叩き込む作業はかなり大変だっただろう。通常のレコ発ツアーだって最後までやらない曲があってもおかしくないのに全曲って! さらに、当然曲をひとつも知らない観客の前でプレイするから、気持ちのキャッチボールも非常にやりづらいのだ。このステージに立てる状態にまでもってくるのは本当に大変な作業だったはずだ。演奏を間違っても気付かれないという気楽さはあるだろうが、そんなのは気休めにもならなかっただろう。実際、ライブ後の挨拶でボーカル理妃は「めちゃめちゃ緊張した」と話していた。心中お察しする。

 とにかく、自らに多大なハードルを課して臨んだこのライブ、自分としては5人全員が逃げることなくステージに姿を見せた時点で拍手喝采。オープニングナンバーは当然、アルバムの1曲目でもあるミディアムナンバー「結婚」。ゆったりとした大きなグルーヴで観客の体を揺らす。「今日は全曲新曲ライブに来てくれてありがとう! 今日は最後までよろしくね!」と理姫の元気な挨拶に続いてプレイしたのはアルバムのリードトラック「8ミリフィルム」。さわやかなメロディが印象的な春らしいナンバーだ。間奏では奥脇達也がステージ前まで進み出て、笑顔でギターをかき鳴らす。理姫も彼女独特な動きで踊りまくりである。続く「サンデイバージンディアボーイ」でも思ったのだが、やたらと旋律が洗練された印象がある。これまではいい意味でクセのある楽曲が特徴だったが、今日披露している曲、つまりニューアルバムの収録曲はどれもグッと垢抜けた。おそらく、メンバーもかなり手応えを感じていることだろう。それにしても、曲順通りに演奏するというのは本当に度胸のいる行為だと思う。作品の流れにも絶対の自信を持っていないとこれは無理だ。

 MCでは改めて自己紹介。今日のために2万円もする服を買ったという奥脇、ウイニングイレブンの世界大会のためにスペインに行ったというドラムの山田康二郎、理姫曰く「最近イケメンなんじゃないかと言われ始めた」というバンビこと黒川絢太に続いて、キーボードのHachiは今日のライブ、つまり新作についてこう説明した。「今日はバラエティ豊かな感じで、すごくポップに仕上げてきました。フルーツみたいな作品になったと思います」ライブ序盤ではあったがこの言葉に深く頷いた。「凛々フルーツ」は特定の色を持たないカラフルな作品である。そんな思いはライブが進むに連れてより強くなる。

 全曲未聴の新曲のみという貴重な機会を存分に味わうためか、じっと耳を傾けている様子が見受けられた観客も、ライブ中盤になると徐々に肩の力が抜けてきて、ステージから放たれる音に気持ちよく身を任せ始めた。そんな中、Hachiが初めて作曲を手掛けた曲が2つ続く。猫にまんまと翻弄される女を歌う小品「ギャングスタ」は、彼女の鍵盤をフィーチャーしたかわいらしいポップチューン。そして、「うたかたの日々」では一転して、現代音楽っぽさを感じさせるアバンギャルドな演奏でグッと観客を引き込む。ポップな面が前に出がちなバンドではあるが、こういうところで技術力の高さが光る。格好良い!

 終盤、「華金」では盛大な手拍子が巻き起こった。「パリパリパリパリパリパリナイト」というキャッチーなサビにフロアが興奮。そんな反応に煽られるようにステージのテンションも上がっていく。気付いてみれば、丁寧な演奏に徹していた序盤に比べ、より勢いを重視したものに変化していた。ここに来てようやく緊張がほぐれたのだろうか。ここまで聴いてきて思ったのは、「凛々フルーツ」はただポップであるだけでなく、バンドアンサンブルを強く意識した作りになっていること。この作品のポップさはそれなくしては成し得なかったのかもしれない。

 クロージングナンバーは「夢遊」。理姫は結いていた髪をほどいて、一礼してステージを後にした。ステージにはまだ演奏陣が残り、この日一番の熱がこもった演奏を会場中に響かせた。彼らはやり切った。この困難な企画に打ち勝ったのだ。それだけでなく、十分に新作の魅力を伝えることにも成功した。アンコールもなく、本当に新作の収録曲だけで成立させた70分は、アカシックの覚悟と矜持に満ちた濃密な時間だった。

【取材・文:阿刀 “DA” 大志】
【撮影:ハヤシサトル】

tag一覧 ライブ 女性ボーカル アカシック

リリース情報

凛々フルーツ

凛々フルーツ

2016年03月16日

ワーナーミュージック・ジャパン

1.結婚
2.8ミリフィルム
3.サンデイバージンディアボーイ
4.今日から夜は家にいるよ
5.ヨコハマカモメ
6.飴と日傘
7.ギャングスタ
8.うたかたの日々
9.ロリータ
10.華金
11.馬鹿なハスキーエイジ
12.恋は媚薬だなんて冷めるわ
13.夢遊

セットリスト

1stフルアルバム「凛々フルーツ」最速全曲ライブ
2016.2.8@渋谷duo MUSIC EXCHANGE

  1. 結婚
  2. 8ミリフィルム
  3. サンデイバージンディアボーイ
  4. 今日から夜は家にいるよ
  5. ヨコハマカモメ
  6. 飴と日傘
  7. ギャングスタ
  8. うたかたの日々
  9. ロリータ
  10. 華金
  11. 馬鹿なハスキーエイジ
  12. 恋は媚薬だなんて冷めるわ
  13. 夢遊

お知らせ

■ライブ情報

日本凛々ツアー
2016/05/06(金)横浜club Lizard ※対バン有
2016/05/21(土)名古屋ell.FITS ALL ※対バン有
2016/05/22(日)大阪ROCK TOWN ※対バン有
2016/06/11(土)福岡graf ※対バン有
2016/06/25(土)東京キネマ倶楽部 ※ワンマン

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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