TOC、2ndソロアルバムリリースツアー『SAFARI PARK』ファイナル公演をレポート
TOC | 2016.03.08
TOCの、2作目となるソロ・アルバム『SAFARI PARK』リリース・ツアーのファイナル。会場となったshibuya duo MUSIC EXCHANGEは満員で、開演前からファンたちの熱気に溢れている。
DJ松永がプレイするSE「WELCOME TO THE JUNGLE」(Intro)に乗せてTOCが登場し、アルバムのタイトル曲「SAFARI PARK」から、ライブはアグレッシブにスタートした。
1曲目からTOCのラップが抜群のキレを聴かせ、客席を煽り、会場も一気に盛り上がっていく。さらに2曲目の「JIMOTO」では、彼の“地元”の仲間であり、昨年までHilcrhyme CREWとして活躍していたダンサーTHUG-HOMEYのメンバー2人がゲストとして登場、キレのあるダンスを披露して、ライブはさらに熱を帯びていった。そして「Bird」が歌われた後、“今日、オレは『SAFARI PARK』の調教師。みんなを死ぬほど楽しませるから”というMCを取っかかりに、『SAFARI PARK』からのナンバーに、ファースト・ソロ・アルバム『IN PHASE』の楽曲も交えて、一気に8曲が歌われていった。スロー・ファンクの「MIGHTY CODE」、ミディアム・マイナーの「TURN BANK LOOSE」、TOCのリリシストとしての才能が炸裂した「HUMANOID」、そしてインタールードの「SAIKORO」を挟んで、レゲエの「SUGOROKU」、ハードなループもの「World View」、ピアノのサウンドが印象的な「BirthDay」、アコースティック・ギターのサウンドを効果的に使った「Atonement」と畳みかけてくる構成は圧巻だ。
全体的に、Hilcrhymeの時よりもサウンドのエッジがより立ったものになっており、TOCのラップもよりアグレッシブな表情を見せている。ラッパーとしてのTOCのアイデンティティを全身で表現しようとしているかのように、言葉を次から次へと畳みかけてくる。さらに曲間でも、ア・カペラによるラップを挟み込んで次の曲に続けていくというアプローチも新鮮だ。そしてTOCの言葉、メッセージが、ストレートにこちらに伝わってくる。自分のメッセージをただ発信するだけではなく、そのメッセージをしっかりと聴き手に伝えるにはどうすればいいかということを、TOCは考えて歌っている。そこが、TOCのラッパーとしての大きな魅力であり、実力の高さなのだということを、あらためて実感させてくれるパフォーマンスだ。そしてそのリリックも、自分を必要以上に大きく見せようとすることもなく、声高に大仰なメッセージを発することもなく、あくまでも等身大で、TOCが感じる様々な感情を素直に表現している。そこも、彼のラップが多くのファンに支持される理由だろう。また楽曲も、ヒップ・ホップにありがちなシンプルなループものだけではなく、ファンク、ロック、R&B、レゲエ、ダンスホール、ディスコなど、様々な音楽の要素を取り入れたトラックになっており、Aメロ、Bメロ、サビといった構成もしっかりしている曲が多く、とてもバラエティに富んでいる。だからライブでも、まったく飽きさせることはない。そのあたりも、TOCのすごいところだと思う。DJ 松永との息もピッタリだ。また、Hilcrhymeでは様々な映像とのコラボレーションというのも、彼らのライブのひとつの特色だが、TOCのソロでは映像などは使用せず、また照明も、ステージ後方からの逆光照明が中心で、TOCの発信するメッセージをストレートに伝えようという意図が感じられた。まさに“生身”のTOCで勝負しよう、そんな意欲が伝わってくるステージだ。
さらに“これが世界にたったひとつのルーティーン”といってハードなラップで畳みかけてきた「CUT’S IN THE KICHEN(routine)」、一旦曲が始まったものの、客席のノリがまだまだおとなしかったため、観客を煽ってもう一度最初からやり直した「DISOBEY」、ダンスホールのビートに乗せて、彼のラップのスキルの高さを見せつけた「ミスターキャッチー」、客席に降りて、女性ファンに向かって歌ったラブ・バラード「2 FACE」、スタンド・マイクで、ほぼ照明なしの状態で歌った「TSUMETAI-NICHIYOBI」など、TOCの様々な表情とパフォーマンスで、観客をどんどん彼の世界に引き込んでいく。ほんとうに圧巻のステージだ。
そして、“みんなには、感謝しかありません。オレはほんとうに幸せです”とファンにメッセージを告げて、ミディアム・テンポのポップなナンバー「JENGA」で、ライブは一旦終了した。
アンコールでは、「Swag in my skill」が歌われた後、彼が主宰するレーベル“DRESS RECORDS”が、ユニバーサルJと契約し、今後同レーベルから彼の作品や、彼がプロデュースするアーティストの作品がリリースされることが発表され、さらにHilcrhymeとしても、新たな制作に入ることが発表された。また、“これからソロの時は、オレのことを「HilcrhymeのTOC(トク)」とは呼ばないでください。「TOC(ティー・オー・シー)」と呼んでください。ソロも命かけてやっていきますから”と、Hilcrhymeとソロ活動の両方で、精力的な活動を展開していくことも宣言された。そして再びTHUG-HOMEYも加わって、ミディアムのダンス・ホール風ナンバー「HATE」で会場もひとつになり、この日のライブは大盛りあがりのうちに幕を閉じた。
全体的に、これからはソロ・アーティストとしてもガンガン突っ走っていこうという、TOCの“覚悟”のようなものが感じられたライブだった。HilcrhymeのTOCとはまた違った、彼のもっとコアな部分、そして等身大の自分を、何の飾り気も、背伸びもなくストレートに表現して、そこでファンのみんなとコミュニケートしていきたいという、彼の強い意志が伝わってくるようだ。今後は、Hilcrhymeとソロ活動が、彼の“両輪”のような形になっていくのだろう。新しいTOCのスタートというか、これからのTOCの進化、そしてさらに幅広く、精力的な活動が楽しみになってくる、充実感に満ちたソロ・ライブだった。
【取材・文:熊谷美広】
リリース情報
SAFARI PARK
2016年01月06日
naoplan
2.SAFARI PARK
3.MIGHTY CODE feat.ROWSHI
4.Mr.K (Interlude)
5.JIMOTO
6.TSUMETAI-NICHIYOBI
7.SOLDER (Interlude)
8.HATE
9.HUMANOID
10.TURN BANK LOOSE
11.SAIKORO(Interlude)
12.SUGOROKU
13.X9X
14.IAM(Interlude)
15.JENGA
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セットリスト
LIVE TOUR 2016【SAFARI PARK】
2016.2.28@渋谷duo MUSIC EXCHANGE
-
SE WELCOME TO THE JUNGLE(Intro)
- SAFARI PARK
- JIMOTO
- Bird
- MIGHTY CODE
- TURN BANK LOOSE
- HUMANOID
- SUGOROKU
- World View
- BirthDay
- Atonement
- HATE
- CUT’S IN THE KITCHEN(routine)
- DISOBEY
- ミスターキャッチー
- 2 FACE
- TSUMETAI-NICHIYOBI
- X9X
- Ray
- JENGA
- Swag in my skill
- HATE
お知らせ
Mr. MUSICIAN “Bring back the Bacon” Release Party
2016/03/26(土)滋賀 石山 U★STONE
Hilcrhyme 10th Anniversary LIVE 「PARALLEL WORLD」
2016/04/15(金) 東京 ディファ有明
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。