“人間臭さ”を全面に出した TOC 2ndソロ・アルバム 『SAFARI PARK』

TOC | 2016.01.15

 HilcrhymeのTOCが、2作目となるソロ・アルバム『SAFARI PARK』をリリースした。これまでに安室奈美恵、EXILE、加藤ミリヤ、三代目J Soul Brothersといったアーティストをはじめとして、さらにTOCのファースト・ソロ・シングル「Birthday」のプロデュースも手がけていたZETTONと全面的にコラボレートしたこの作品では、多彩なトラックに乗せて、TOCのハードなラップが炸裂している。強いメッセージや、とてもパーソナルな内容を表現したリリックも印象的で、彼のもうひとつの表情というか、Hilcrhymeとは違った一面を知ることができる、とても興味深い内容になっている。

EMTG:『SAFARI PARK』は、TOCさんにとって2作目のソロ・アルバムになりますが、アルバムのコンセプトは?
TOC:“ワン・プロデューサーによるアルバム”というのを昔からやってみたくて、セカンド・アルバムというタイミングでやってみました。デビュー当時から関わってもらってるZETTONが手を上げてくれたので、彼にプロデュースをお願いしました。ラップのディレクションをガッチリ受けたかったし、全体のクオリティを揃えたかった。それに自分では引き出せない“自分”を出すには他人の手を借りることが必要だし、クリエイティビティの幅も広げたかったので。
EMTG:1作目のソロ・アルバム『IN PHASE』とは、制作アプローチやプロデュース面で何か変化はありますか?
TOC:福岡にマンションを借りて、1ヶ月半ほどショート・ステイして、ZETTONのスタジオでレコーディングからミックスまですべて完結しました。『IN PHASE』は自分がプロデューサー的な立ち位置だったし、ファーストということで好き勝手に作ったアルバムでした。すべて自分のスタジオで録ったし。今作はとことん“人に委ねる事”が自分の一番の仕事だったと思います。生活レベルまで変えて、とことんストイックにラップに没頭しました。とても良い経験になったし、もう2度としたくないとも思いました(笑)。基本的に地元を離れたくない人間なので。
EMTG:ZETTONさんのプロデュースについては、どのような印象をお持ちですか?
TOC:これはZETTONから言われた言葉ですが、コアな部分がフィールして、フィットしたんだと思います。魂の部分というか。だから俺たちが一緒にやることには必ず意味がある。まさにガイダンスだね。
EMTG:全体的に、生楽器を取り入れて、ロック、ジャズ、フィリー・ソウルなどの要素も取り入れたアプローチのトラックが多くなっていますね。
TOC:基本オケはZETTONに任せっぱなしだったので、ぼくからは特にありません。ただ、どのトラックも最高です。制作風景をユーストで見たんですけど、スタジオ・セッションがメインだったみたいですね。レゲエとか超久しぶりで、アガりました。
EMTG:生楽器によるインタールードが多く入っていますが、それにはどういった意味合いがあるのでしょうか?
TOC:元ネタを弾いたり、まったく意味のないタイトルだったり(笑)、そういう遊びを間奏として入れてます。インタールードが入ってるアルバムって日本のヒップホップだと最近極端に減ったなって。窮屈な思いもさせたくないし、いい“間”を作れてると思います。
EMTG:アルバム・タイトル曲の「SAFARI PARK」をはじめとして、全体的に、かなりメッセージ色が強いというか、ハードな内容のリリックが多いと感じるのですが、こういう方向性にした理由は?
TOC:プロデューサーから最初に言われていたのが、“今まで書いてこなかった部分をアートとしてラップして欲しい”ということでした。普段恥ずかしくて言えない事、ダサい自分、弱い自分、怒りの感情、情けなさ、そういう部分をアートして欲しいと。政治、外交は俺が好きなトピックなので、とことんラップしました。あと「TURN BANK LOOSE」では金を謳ったり。そういった“人間臭さ”を全面に出した一枚です。最高の出来です。
EMTG:「JIMOTO」「TSUMETAI-NICHIYOBI」「X9X」など、とてもパーソナルな内容のリリックもありますが、こういったテーマを選んだ理由は?
TOC:どれも、今まで書いてこなかった事なので。「JIMOTO」は“HOOD”のこと、「TSUMETAI-NICHIYOBI」はHilcrhymeのこと、「X9X」は昔からの仲間のこと、すべてに共通してるのは泥臭さ、人間臭さだと思います。今までは隠してた部分も書きました。金を貸してとんだ友や、Hilcrhymeの相方への情愛だったり、恋愛をテーマにするよりもよっぽど恥ずかしかったです(笑)。
EMTG:「HUMANOID」の反骨精神溢れるリリックは、ラッパーとしての本領発揮というか、見事な手法で構築されてると感じます。このリリックのアイディアは、どういったところから?
TOC:『RAP GENIUS』(USのリリック解説サイト)的なモノが日本にはまだ無いんですが、そういうサイトが出来たらぜひ取り扱って欲しいくらい、良く書けたラップです。“ART of RAP”を一番しっかり表現できたかも。テーマは“人造人間国家”。今までは無意識的に自主規制してきたかもしれないけど、書いてみたかったテーマです。肯定するけど否定もするよって感じ。歌詞カードを見て5回は聴いてほしいな。
EMTG:「MIGHTY CODE」に、ROWSHIさんがゲストとして参加していますが、彼が参加した経緯は?
TOC:ZETTONからの紹介でした。地方をレペゼン(Represent=表明)することに対して、がテーマで、全然ライフスタイルが違うのでおもしろい曲になったと思います。ROWSHIくんは本当に声が太くて厚いのでレコーディングは興味深かったです。学ぶことは多かったですね。人間的にも器が大きいし。
EMTG:アルバムの最後の「JENGA」は、このアルバムで唯一のラブ・ソングですね。
TOC:とても大きな範囲での“ラブ・ソング”です。この曲の立ち位置は制作チーム内でたくさん議論しました。リード曲にすべきかどうか。叙情的な曲だし、今までの俺の武器をまさに尖らせた曲なので。この曲を好きという人はとても多い、とてもね。だからこそ今回はリードにしなかった。アルバムの締めというある意味、一番大事なところに落とし込んだ。そして最高のアルバムになった。リードじゃなくて正解だったと思ってる。
EMTG:TOCさんにとって、ソロ作品とHilcrhymeの作品とでは、どのような色分け/区別をしているのでしょうか?
TOC:相方がいるか、一人か。区別してるとすればそれくらいです。細かい部分はたくさんあるけど大まかにはそれくらい。どちらにせよ1MCである事には変わりがないしね。
EMTG:今回のジャケットでは、サングラスを外していますが、公式の写真でサングラスを外しているのはとても珍しいですよね。ジャケット写真のコンセプトは?
TOC:初めてサングラスを取ってみました。おかげで気づかれないことが多いです。多分もう外すことは無いんじゃないかな。ちゃんと意味を持ってサングラスは付けてきたしね。でも、今作は外した。鋭い良い目をしてるでしょう?(笑)
EMTG:2月にソロ・ツアーが予定されていますが、どのようなライブになりそうですか?
TOC:間違いなく最高のライブになるでしょう。それは約束出来る。本能のままにライブしようと思ってます。BACK DJの松永とのコンビネーションもバッチリ見せます。もちろんグッズだったりツアーならではの楽しみも今まで以上に充実しています。タイトルが『SAFARI PARK』なので、ご来場ならぬ、ご来園お待ちしております。ひとつ言えるのが、体力をつけておいて下さい。獣のようなライブをしようと思ってるので(笑)。

【取材・文:熊谷美広】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル TOC Hilcrhyme

リリース情報

黒点

黒点

発売日: 2020年07月15日

価格: ¥ 1,500(本体)+税

レーベル: Cymusic

収録曲

01.黒点
02.DREAM EATER
03.Polar Bear
04.Orange
05.盤上のカランコエ
06.黒点 (Instrumental)
07.DREAM EATER (Instrumental)
08.Polar Bear (Instrumental)
09.Orange (Instrumental)
10.盤上のカランコエ (Instrumental)

リリース情報

SAFARI PARK

SAFARI PARK

2016年01月06日

naoplan

1.WELCOME TO THE JUNGLE (Intro)
2.SAFARI PARK
3.MIGHTY CODE feat.ROWSHI
4.Mr.K (Interlude)
5.JIMOTO
6.TSUMETAI-NICHIYOBI
7.SOLDER (Interlude)
8.HATE
9.HUMANOID
10.TURN BANK LOOSE
11.SAIKORO(Interlude)
12.SUGOROKU
13.X9X
14.IAM(Interlude)
15.JENGA

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お知らせ

■ライブ情報

TOC LIVE TOUR 2016 【SAFARI PARK】
2016/02/06(土)新潟 新潟LOTS
2016/02/13(土)福岡 DRUM Be-1
2016/02/20(土)大阪 心斎橋SUNHALL
2016/02/21(日)愛知 SPADEBOX
2016/02/28(日)東京 duo MUSIC EXCHANGE

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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