ドレスコーズ「the dresscodes R.I.P. TOUR」 Yokohama Bay Hallをレポート
ドレスコーズ | 2016.03.24
駅を出ると海の匂い。雨上がりの横浜は心も綺麗にしてくれた。水たまりをよけながら、駅から少し遠い会場まで。自分の好きなものを着る、といった個性的なファッションの人々が整然と列をなしている。紛れもなくドレスコーズに愛されている人々だ。「the dresscodes R.I.P. TOUR」のファイナル公演。ひとり、ではない、10年前から親交のあるおとぎ話の4人を加えた、“5人のドレスコーズ”が間もなくここ、Yokohama Bay Hallのステージに立つ。
シャンデリア輝くムーディな会場。その最も深い場所に立つと、中央のマイクスタンドは、やや遠い。チケットはソールドアウト。満員の場内は人いきれでムンムンとしていた。開演を待つオーディエンスに向けた天の声。その前説は、やけに抑揚がついていてウィットが効いている。声の主は元・ドレスコーズのドラマー菅大智であった。大きな歓声、そして拍手。
ゆっくりと客電が落ち、おとぎ話の4人が登場。続いて志磨が投げキッスを振りまき、ステージに上がる。目の周りに赤いメイクを施して。オープニングナンバーは、来月アナログ盤としてリリースされる毛皮のマリーズ『戦争をしよう』に収録された「BOYS」。『なんかずっとイライラしっぱなしなんだぁ I can’t get No Satisfaction 何をやってもつまんねーんだもん』。歓喜するボーイズ&ガールズ。聴き覚えのあるギター、イントロから歓声があがった「COWGIRL」。毛皮のマリーズの楽曲が続く。時折、額に手を当て大きく会場を眺める志磨。タンバリンを手に「小鳥と私」。『報われない曲だけを、珍しい曲をやるから、ゆっくり楽しんでいって』。春のうた「或るGIRLの死」からドレスコーズの「レモンツリー」へ。イントロ無しのアレンジが新鮮に響く。ハンドマイクで歌う志磨が前の客の手を取るシーンも。メロウな曲が続く。「(She gets) the coat.」を聴きながら、4人時代のドレスコーズが頭をかすめ、懐かしさでいっぱいになる。今回のツアーコンセプトは、「レア曲を葬る」。悲しみすら感じさせるそのフレーズ、なぜ大切な楽曲を葬らなければならなかったのか、なぜだかそこでわかったような気がした。
親しい仲間に自分のファンを誇らしげに紹介するようなMC。『今日は1曲1曲、心を込めて演奏します。一音も漏らさないように超集中して聴いて』。志磨に2本のスポットが当たった「Silly song, Million lights」。それは毛皮のマリーズと4人のドレスコーズが今の志磨を鮮やかに浮かび上がらせるかのごとく。大きく手を上げ、天を見上げた「嵐の季節(はじめに)」。牛尾のドラマチックなギターソロ。圧巻の演奏。「平和」では一語一語、噛み締めるように歌う志磨。その顔が紅潮しているのが遠くからでもわかった。高く掲げられたピースサイン。ドレスコーズと毛皮のマリーズが交錯する。毛皮のマリーズのラスト作『THE END』から「JUBILEE」。鮮やかなライトの中で浮かび上がる“5人のドレスコーズ”。過去の楽曲からひとりになった現在のドレスコーズにも脈々と流れている血は、やはり同じものだと、ここで確信した。
『音楽が喜んでる』と有馬は言った。『僕の大好きな友達と作った曲をおとぎ話に演奏してもらう。なぜおとぎ話とやったのか。それがわかる』。そんな志磨の紹介で、おとぎ話がオリジナル曲「COSMOS」を披露した。黒のチャイナ服に着替えた志磨が再び登場。志磨が打ちならす銅鑼で幕開けした後半戦。盛り上がるオーディエンス、ステージ狭しと動く志磨。その表情はさっきとはまるで違う。何かに憑かれたような、ギリギリの精神状態でステージに立っているような。「クライベイビー」では感極まって歌えなくなるシーンも。そう、泣きながらダンスを踊る志磨、歌い終えるととびきりの笑顔を見せた。本編ラストの「BABY DOLL」ではCheap Trickの「I Want You To Want Me」になぞらえて『コール&レスポンスをやりたいんだよー!』『今、やっとこの曲は完成するんだよー!』と叫び、オーディエンスにコール&レスポンスを求める。『ダーリン ダーリン』の大合唱。ああ、なんてハッピーな空気。横浜の真ん中で愛を叫ぶ志磨。
アンコール1曲目は『牛尾、やっちまえ!』の声で「ベイビーモートン」。志磨の『やっちまえ』は信頼の証だ。『いいかい皆さん、人生にはいろいろあるよなー。僕は全部好きだよ。僕は全部愛してるよー』と叫んだ志磨、ラストの曲は「愛に気をつけてね」。『Baby Baby あんたなんか』。オーディエンスの叫びにも似た大合唱の中に飛び込んだ志磨は、人・人・人の波の上を泳ぎ続ける。柱に寄りかかり立ちあがった志磨は、大地に寝そべるように、再び笑顔と泣き顔のオーディエンスに身を委ねた。これを愛情の交感という以外に何と呼べばいいのか。このライブは「葬式」などではなく「結婚式」なんじゃないか。
毛皮のマリーズと4人のドレスコーズ、そして志磨ひとりのドレスコーズを繋いでくれたおとぎ話。地をならすように、これまでの志磨の歴史がひとかたまりになって溶け合った瞬間に立ち会えたような気がした。なぜ彼が『葬る』としたのか知る術もないが、葬られようとした楽曲は、5人の手によってイキイキと息を吹き返したことだけは間違いない。盤の中で、心の中で生き続ける素晴らしい音楽。今日のライブをずっと抱きしめる。
【取材・文:篠原美江】
【撮影:HAJIME KAMIIISAKA】
リリース情報
[DVD] SWEET HAPPENING ~the dresscodes 2015 “Don’t Trust Ryohei Shima”JAPAN TOUR~
2016年05月11日
キングレコード
1. HEART OF GOLD
2. スローガン
3. ボニーとクライドは今夜も夢中
4. jiji
5. もあ
6. 愛さなくなるまでは愛してる(発売は水曜日)
7. Lily~ダンデライオン
8. それすらできない
9. トートロジー
10. あん・はっぴいえんど
11. ゴッホ
12. 愛する or die
13. 犬ロック
14. ビューティフル
15. みなさん、さようなら
【ENCORE】
16. 愛に気をつけてね
【映像特典】
“Don’t Trust Ryohei Shima”JAPAN TOURダイジェスト映像
お知らせ
ニコ タッチズ ザ ウォールズ ノ フェスト’16
2016/04/22(金)Zepp DiverCity TOKYO
Barbate Rock 5th Anniversary ~Hige Mirage~ Powered by QUATTRO MIRAGE
2016/05/26(木)名古屋CLUB QUATTRO
2016/05/27(金)梅田CLUB QUATTRO
HOTSTUFF presents TUMBLING DICE 5
2016/06/10(金)恵比寿LIQUIDROOM
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。