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ドレスコーズ全国6都市を巡るツアー「Tour 2015 “Don’t Trust Ryohei Shima” JAPAN TOUR」東京公演

ドレスコーズ | 2016.01.04

 観るたびに、これほど変貌を遂げるバンドが他にいるだろうか。ドレスコーズはツアータイトル“Don’t Trust Ryohei Shima”のとおり、志磨遼平がまたまた“違うロックスター”となって現われた。志磨は「俺を信用するな」と言っているのではなく、「俺から目を離すな」と言っているのだ。
 ソロプロジェクトとなったドレスコーズは、ツアーごとに毎回メンバーを変える。今回は、ドラム中村達也、ベース有島コレスケ、ギターは元・毛皮のマリーズの越川和麿が志磨とステージを共にする。
 ドラムの椅子に座った中村が、「ワーオ!」と叫んで叩き始める。凄い音だ。ギターとベースが加わっても、その勢いは止まらない。バンド・ サウンドの半分以上をドラムが占めている。果たして志磨は対抗できるのか。

 1曲目は、毛皮のマリーズのラストアルバム『THE END』から「Heart Of Gold」だ。拍手を浴びて登場した志磨が歌い始めると、中村はスネアの音量だけ小さくなるように叩き方を変える。ボーカルとかぶる音域が下がったので、志磨の歌がはっきり聴こえてきた。
 その時、「これは凄いライブになる」と思った。瞬間瞬間のスリルと、音楽全体を見渡して組み立てる客観性を合わせ持つ中村は、オーケストラの指揮者のように音を支配する。この日、ファイナルを迎えただけあって、志磨は自分を中村に完全に預けて歌う。ミュージシャンたちが、これほど信頼しながらぶつかり合うライブは滅多にない。

 それでも2曲目「スローガン」では、志磨の歌とバックのバランスが一瞬ぐらつくシーンがあった。それはおそらく、ぶつかり合う者同士が相手の力を量るためだったのだろう。続く「ボニーとクライドは今夜も夢中」でバンド・サウンドがまとまっていく。つれてオーディエンスとステージが、早くも一体になる。そんな会場にかぶせるように、志磨は♪どうか神様お願い このまま朝まで♪と歌ったのだった。

「さて、今夜はツアー・ファイナルになります。2年ぶりの全国ツアーで、久しぶりのところにも行ってきました。ギターの西くん(越川のニックネーム)とも、本当に久しぶりだね」と志磨が言うと、かってのバンド仲間だった越川が「困ったときに連絡してくるの、止めてくれる」と言い返す。志磨が「それが友達ってヤツちゃうん?」と言うと、中村が「がははは」と笑った。そうしたユーモラスなやり取りがいいアクセントになって、ライブはジワリジワリと進んでいく。

 「Lily~ダンデライオン」あたりで熱が一段と上がり、名曲「トートロジー」で爆発する。志磨のボーカリゼーションは、セリフのようだ。演劇的な要素の強い志磨だが、ロックスターを演じる役者ぶりがますます堂に入ってきた。そんな彼のスピリットを鼓舞し、牽引するのは、やはり中村のドラムだ。歌い終わって志磨が水を飲んでいるとき、観客の誰かがたまりかねたように「タツヤ~!!」と叫んだ。・・・その気持ち、分かる。
 直後にピークがやって来た。中村がタイトなリズムを刻み始めると、志磨がラップで応じる。「ゴッホ」だ。♪ぼくはゴッホじゃやなんだ♪とアーティストとしての生き方を表明するこの歌に、タイトなリズムは必須の条件。それもコンピュータではなく、生々しいリズムが命。その命題に中村が壮絶に応える。
 ドレスコーズは、こんな凄いショーを全国でやってきたのか。僕は言葉を失って見入っていた。

 その後、「愛する or die」、「犬ロック」と凄まじいナンバーが繰り出される。志磨の絶叫が続く。アルペジオを弾く越川に、志磨が指でカウントを出して「ビューティフル」が始まる。もう、マイクのシールドの白しか見えない。
「また会う日まで、みなさん、お元気で。あと、メリークリスマス&ハッピーニューイヤー!」と挨拶して「みなさん、さようなら」でライブは幕を閉じた。アンコールは「愛に気をつけてね」、1曲のみ。

 終演後の関係者挨拶で、志磨は「凄いバンドをやろうとすればするほど、バンドが続かなくなる。このパラドックスをどうすればいいのか。でも今回のツアーは本当にバンドやっている実感があった」と述べた。
 ずっとバンドを続けることと、潔くやり切って解散すること。どちらもバンドの美学だ。その二つに引き裂かれ続けた志磨は、ファイナルにしか味わえない美酒を飲んだ。酔ったような口調がその気分を表わしていた。
 目の前にいるヨレヨレの志磨は、ブッダでもなく、キリストでもなかった。ただ、にこにこと笑っていた。

【取材・文:平山 雄一】
【撮影:HAJIME KAMIIISAKA】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル ドレスコーズ

リリース情報

オーディション(初回限定盤)[CD+DVD]

オーディション(初回限定盤)[CD+DVD]

2015年10月21日

キングレコード

[CD]
1. 嵐の季節(はじめに)
2. jiji
3. スローガン
4. 愛さなくなるまでは愛してる(発売は水曜日)
5. メロウゴールド
6. We Hate The Sun
7. もあ
8. しんせい
9. オーディション
10. みなさん、さようなら
11. 贅沢とユーモア
12. おわりに

[DVD]
MUSIC VIDEO、他収録予定

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セットリスト

Tour 2015 “Don’t Trust Ryohei Shima” JAPAN TOUR
2015.12.19@Zepp DiverCity TOKYO

  1. HEART OF GOLD
  2. スローガン
  3. ボニーとクライドは今夜も夢中
  4. jiji
  5. もあ
  6. 愛さなくなるまでは愛してる(発売は水曜日)
  7. Lily
  8. ダンデライオン
  9. それすらできない
  10. あん・はっぴいえんど
  11. ゴッホ
  12. 愛する or die
  13. 犬ロック
  14. ビューティフル
  15. みなさん、さようなら
<アンコール>
  1. 愛に気をつけてね

お知らせ

■ライブ情報

the dresscodes R.I.P. TOUR
2016/03/03(木)浜松 メスカリンドライブ
2016/03/05(土)広島 HIROSHIMA BACK BEAT
2016/03/06(日)神戸 SLOPE
2016/03/12(土)新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
2016/03/13(日)盛岡 the five morioka
2016/03/19(土)横浜 Bay Hall

「the dresscodes R.I.P. TOUR」
ファンサイト先行

受付期間:2016年1月7日(木)23:00まで
一般発売:2月6日(土)
前売 ¥3,800
当日 ¥4,300

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。



■ファンサイト情報
『the dresscodes magazine』

URL :http://sp.dresscodes.jp/

▼会費
[スマートフォン]月額432円(税込)
※docomo,au,Softbank決済、クレジットカード決済に対応

▼コンテンツ内容
「連載・本と音」
ドレスコーズが綴る、連載 本と音。
ここでしか読めない連載です。
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