GOOD ON THE REEL史上、最大規模の全国ツアーファイナル公演をレポート
GOOD ON THE REEL | 2016.03.30
昨年12月にリリースされた2ndフルアルバム『ペトリが呼んでる』を中心に据えた全国ツアー「HAVE A "GOOD" NIGHT Vol.33~Vol.47」のファイナル、東京・Zepp DiverCity公演。バンド史上、最大規模となった今回のツアーでGOOD ON THE REELは、ロックバンドとしてのスケール感を大きく向上させると同時に、このバンドの表現の核にある“ひとりひとりに与えられた、かけがえのない人生を生きることの素晴らしさ”というメッセージ性をさらに濃密に表現してみせた。
ステージに掛けられた紗幕には、穏やかに降り続く雨模様のアニメーションが映し出されている。自分の部屋で雨音を聴いているような落ち着いた気分に浸っていると、心地よいエレクトロ系のSEが聴こえてきて、オーディエンスの手拍子とともに徐々に高揚感が増していく。そして、メンバーのシルエットが紗幕に描かれた瞬間、ついにライブがスタート。『ペトリが呼んでる』の1曲目「BYSTANDER」(“あなたは傍観者でいるのか? それとも主体的に生きるのか?”と突きつける歌詞に心を揺さぶられるロックチューン)と2曲目「サーチライト」(エッジの効いたバンドサウンドとともに「今君が生きていること/それだけあれば十分に 君が欲しがった鍵になる」というフレーズが突き刺さるナンバー)が続けて演奏され、今回のツアーの大きなテーマが明確に提示される。そのテーマとはもちろん、アルバム『ペトリが呼んでる』の楽曲をライブという場所で真っ直ぐに表現すること。冒頭の2曲だけでも、このツアーで彼らが獲得した豊かな成果がはっきりと伝わってきた。笑顔で演奏を楽しんでいるメンバーの姿も印象的だった。
アルバム『ペトリが呼んでる』のタイトルの由来となった「ペトリコール」とは、雨が降ったときにアスファルトから立ち上ってくる独特の匂いのこと。この日のMCでも語っていたが、千野隆尋(Vo)にとってペトリコールは小さい頃の情景が蘇らせてくれる匂いであり、幼少期の好奇心や純粋な気持ちはこの先の人生を生きるための力にもなっているという。周りの人の助けや力添えではなく、自分自身のインナーチャイルドが自らの助けになってくれるはずだという考え方は、GOOD ON THE REELの音楽を構成する大きな要素のひとつだと思う。
また『ペトリが呼んでる』は、バンドのカラフルな音楽性がさらに高い精度で示された作品であり、その豊かな表現力はこの日のライブでも存分に発揮されていた。伊丸岡亮太(G)、岡崎広平(G)のメロディアスなギターアンサンブルが印象的だった「さよならポラリス」、「たくさんの後悔とか悔しい思いは自分のなかでつぼみになって、それがいつか花開いて、振り返ったときには捨てたくない思いになると思います」というMCに導かれたミディアムバラード「つぼみ」、マーチングバンドを想起させる高橋誠(Dr)のビートとともに“音楽という名の形のない希望”をモチーフにした歌が広がる「So Late Me」。宇佐美友啓(Ba)の骨太なベースラインを軸にしたロックサウンドと「正しさだって間違えるから」というリリックがひとつになった「スケール美術館」、躍動感に満ちたグルーヴとキャッチーなメロディラインが混ざり合うアッパーチューン「REM」。強い個性を備えた楽曲に引っ張られるように、メンバー個々のプレイヤビリティも確実に向上していた。これまではどこか内省的な雰囲気もあったGOOD ON THE REELのステ―ジだが、この日は終始“オーディエンスに直接手渡す”という意識に貫かれていたことも強く心に残った。
その中心を担っているのはもちろん、千野の歌だ。震えるような繊細さ、感情を叩きつける力強さ、すべてを包み込むような大らかさ。楽曲のメッセージ性、世界観によって表情を変える彼のボーカルには、まるで演劇を見ているようなムードがある。短編小説にも似た物語性を持ったGOOD ON THE REELの楽曲の軸になっているのはまちがいなく、彼の表情豊かな歌声だろう。
ツアーの思い出をユルく話すMCコーナーを挟み、ライブ後半に披露された「rainbeat」もこの日のライブの大きなポイントだったと思う。4つ打ちのビート、シンガロング必至のコーラスを取り入れたこの曲は明らかにGOOD ON THE REELの新機軸。オーディエンスが気持ちよさそうに身体を揺らすことで生まれたナチュラルな一体感は、今後の彼らのライブにとっても大きな武器になりそうだ。
本編ラストはアルバムのタイトルチューンとも言える「ペトリコール」、「あなたの人生はあなたしか過ごすことが出来ない。何も特別なことがなくても、あなたの人生はかけがえのない日々だと思います」という千野のMCにリードされた「Mr.week」。そしてアンコールでは、花屋での何気ない出来事を綴った歌と浮遊感に溢れたサウンドが溶け合う「ノースポール」、すべての生を肯定するようなアンセムソング「ハッピーエンド」などを披露し、ツアーファイナル公演は幕を閉じた。
この日、10月9日(日)に日比谷野外音楽堂でのワンマン公演が決定したことを発表したGOOD ON THE REEL。オーディエンスの口コミを中心に知名度を上げ、ファンとの強い絆を作り上げてきた彼ら。その濃密なコミュニケ―ションはここから、さらに大きく広がっていくことになりそうだ。
【取材・文:森 朋之】
【撮影:Viola Kam】
リリース情報
セットリスト
『HAVE A "GOOD" NIGHT Vol.47』
ペトリコール ~ 雨天決行 ~
2016.3.25@Zepp DiverCity
- BYSTANDER
- サーチライト
- 素晴らしき今日の始まり
- さよならポラリス
- ただそれだけ
- ゴースト
- つぼみ
- So Late Me
- スケール美術館
- アイスランド
- REM
- 存在証明書
- シャボン玉
- rainbeat
- 夕映
- ホワイトライン
- ペトリコール
- Mr. week
- ノースポール
- シャワー
- パッピーエンド
お知らせ
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GOOD ON THE REELワンマンライブ
2016/10/09(日)日比谷野外音楽堂
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。