4月1日は“ウソツキの日”。初のホールワンマンで魅せた、「劇場版 USOTSUKA NIGHT」をレポート!
ウソツキ | 2016.04.11
やるならとことん、徹底的に。会場に足を踏み入れた瞬間、今日に懸けた彼らの本気と粋なエンタメ魂にハートを鷲掴みされてしまった。「劇場版 USOTSUKA NIGHT」と冠されたライブタイトルからも普通のステージではないだろうとは予想していたが、まさか映画仕様のポスターまで作っていたとは。“四つの異なる物語が紡ぐ驚愕の真実とは?”などと添えられた煽り文句までもがそれらしい。さらには開演前のBGMもサバイバー「バーニング・ハート」にベン・E・キング「スタンド・バイ・ミー」、シンディ・ローパー「グーニーズはグッド・イナフ」など名だたる映画作品のテーマソング。ここまで突き詰められたら降参するしかない。
ウソツキにとって特別な日、4月1日。バンド名に掛けて、この日を“ウソツキの日”とし、2014年からワンマンライブを恒例としてきた彼ら。3回目となる今回の会場は東京・Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE、すなわち4人が初めて挑むホールワンマンとなる。元は映画館だった会場ゆえに“劇場版”というコンセプトが生まれたのだろうか。ともあれ開演前から期待のメーターはMAXに振り切れた。
「本日は“劇場版ウソツカナイト”完成披露試写会にご来場くださいまして誠にありがとうございます」
暗転した場内にアナウンスが流れる。上映(!)中の撮影、録音、携帯電話の使用禁止といった注意事項に加え、上映後には出演者の舞台挨拶があることなどが告知されるとブザーが響いた。あくまでも映画設定、この徹底ぶりがオーディエンスの昂揚に火をつけるのだ。
徐々に近づき、大きくなる汽笛の音。4人を乗せてステージまで運ぶ銀河鉄道のイメージが浮かんだ。林山拓斗のドラムがダイナミックに鳴り渡ったのを合図に、これまで以上に厚みを増したアンサンブルがほとばしる。幕開けは「一日だけヒーロー」が飾った。全席指定の会場とあって勝手の違いに最初はオーディエンスも戸惑った様子を見せていたが、マイクスタンドの前に立った笑顔の竹田昌和が無言のまま人差し指を上に向けてクイクイと動かすと、たちまち空気がほぐれ、場内は総立ち状態に。満員御礼のホール、ステージから客席を見上げる4人の表情もほころんでいる。きっとこれまでになかった光景が彼らの目の前に広がっているに違いない。「ミライドライバー」「金星人に恋をした」と、曲を追うごとに空間に満ちた熱がぐんぐん膨らんでいくのがわかる。
アッパーに加速する「水の中からソラ見てる」では間奏で藤井浩太が人生初という渾身のベースソロを炸裂させ、沸き返る歓声に負けじと続いて吉田健二もアグレッシブなギターソロで応戦。いつにも増してロックパワー全開なのが楽しい。「我々は毎日がエイプリルフールですけど、今日はみなさんがウソツキになれる日。つまり、ひとつになろうぜ! ってことですよ」と竹田のMCもばっちりキマっての「旗揚げ運動」では場内一体となってMVでおなじみの振り付けを踊り、間髪入れずの「ネガチブ」では“ネガネガ”大合唱&“ネガティヴ”連呼でポジティブに盛り上がる。あまりに盛り上がりすぎ、さすがの竹田も曲が終わるや激しく息切れしてしまったほどだ。「座ろ。疲れたでしょ」と絞り出すようにしてオーディエンスに着席を促す声からもその全身全霊ぶりが伝わってくる。
開演前こそ“劇場版”や“上映”といった単語に気をとられていたが、始まってしまえばこれ以上ないくらいに純度の高いウソツキそのものなステージ。“ウソツキそのもの”とはつまり嘘がないということだ。真っ正直に観客のひとり一人と向き合って、丁寧に音楽を、そこに託した想いを手渡す。ライブハウスであろうとホールであろうとまるで熱量に違いはなく、むしろホールだからこそライブハウス以上のエネルギーを燃やして、隅々にまで楽曲を飛ばしているようにも思える。そうして彼らの音楽を噛み締めれば噛み締めるほど“劇場版”という言葉がしっくりと腑に落ちる気がした。ウソツキの音楽には物語がある。楽しいだけ、やさしいだけではない感情があって、風景があって、ファンタジーがある。京葉線に揺られる冴えない日常もあれば、駆け出したくなるようなときめきも。たしかに1曲1曲に描かれているのは作詞作曲を手がける竹田の、そして、それを演奏するウソツキの分身には違いない。けれど、だからこそ受け取る側の我々は曲の中に彼らのストーリーを見ては、自身に重ねる。そう、まるで映画のように。この日のステージはまさにウソツキが紡ぐオムニバス映画だと言っていいのではないだろうか。
実体験をもとに、異質を認めず排斥してしまう悲しい人間の性に踏み込んだ「転校生はエイリアン」、夏の夜の甘やかな匂いがノスタルジックな郷愁を誘う「綿飴とりんご飴」。「きっと友達」の、場内全員で声を揃えた♪ラララのシンガロングが身に沁みて温かい。終盤戦に突入すればもう一気だ。“信じること”の本質を浮き彫りにした「ピースする」では場内いっぱいにピースサインが誇らしげに突き上がり、「これからもみんなと一緒にいたいです。ラフに言うなら、僕と一緒にずっと遊んでいようよってこと」、そんな竹田の言葉に応えるように「過去から届いた光の手紙」では客席がはずむ。そうして“完成披露試写会”、すなわち本編を「新木場発、銀河鉄道」が締めくくった。始まりと同じ汽笛の音、集まったたくさんの想いを乗せた銀河鉄道が宇宙を駆け、天の川を渡る。「劇場版 USOTSUKA NIGHT」という大作のエンディングにこれほどふさわしい曲もないだろう。
スーツに着替えて4人が再登場したアンコールならぬ“舞台挨拶”では新作『一生分のラブレター』が7月13日にリリースされるという、うれしい発表も。いわく“次回作”とのこと、これまたしっかりポスターを用意しているのだからニクい。このミニアルバムで竹田はまさに一生分のラブソングを書いたという。実は本編とアンコール合わせて3曲がこの日、お披露目されたのだが、なるほど、すべてラブソングだった。恋の始まりを歌った「ボーイミーツガール」も、タイトルチューン「一生分のラブレター」の真っ直ぐな幸福感も、ウソツキの新たな未来を予感させたが、何を置いて胸に迫ったのは本編中に披露された「ハッピーエンドは来なくていい」。
「今日、ここに来てくれたみんなとこれからも一緒に進んでいこうと思っています。もっとカッコいい僕らを見せるから、楽しみにしていてください」
そう誓い、ありったけの気持ちを込めて奏でられたこの曲。ハッピーエンドもバッドエンドもどっちでもいい、終わりなんて来ないでほしい、声の限りを尽くして歌い上げる率直かつ切迫した願いが刺さって抜けない。当たり前に続く毎日なんてない。日々を共に進んでいく、それがどれほどの奇跡であることか。それを知ってなお一歩を踏みだそうとする彼らの覚悟に揺さぶられたのだ。
最後の1曲となったのは「ダル・セニョールの憂鬱」、シニカルながらも軽快なウソツキ流ブルースが聴く者の背中を明日へと柔らかく押す。5月には主催の3マンツアー“ウソツカナイトツアー~禁断の三角関係~”も控えているウソツキ。彼らのさらなる活躍をあちこちで確かめることができそうだ。
【取材・文:本間夕子】
【撮影:山野浩司】
リリース情報
セットリスト
劇場版USOTSUKA NIGHT
2016.4.1@Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
- 一日だけヒーロー
- ミライドライバー
- 金星人に恋をした
- 京葉線SOLDOUT
- 春風と風鈴
- 水の中からソラ見てる
- 旗揚げ運動
- ネガチブ
- 転校生はエイリアン
- 綿飴とりんご飴
- きっと友達
- Roll Roll Roll
- ボーイミーツガール(新曲)
- ハッピーエンドは来なくていい(新曲)
- ピースする
- 過去から届いた光の手紙
- 新木場発、銀河鉄道
- 一生分のラブレター(新曲)
- ダル・セニョールの憂鬱
お知らせ
ウソツカナイトツアー ~禁断の三角関係~
2015/05/15(日)名古屋CLUB UPSET
w:GOING UNDER GROUND/ココロオークション
2015/05/26(木)福岡DRUM SON
w:GOING UNDER GROUND/ココロオークション
2015/05/27(金)岡山Crazymama 2nd room
w:GOING UNDER GROUND/ircle
2015/05/28(土)心斎橋Pangea
w:GOING UNDER GROUND/Halo at 四畳半
2015/06/17(金)仙台enn 2nd
w:LOST IN TIME/ココロオークション
2015/06/19(日)代官山UNIT
w:GOING UNDER GROUND/ココロオークション
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。