4月5日、赤坂BLITZから待望の“唇ワンマンツアー～奈良まで続くよ道のりはツアー！～”をスタートさせたTHE ORAL CIGARETTES。全公演がソールドアウトのツアー初日だけに、期待感は高まる。チケット争奪戦を勝ち抜いた幸運なファンがビッシリ詰まった場内には、独特な熱い空気感があった。それは、上昇気流のバンドが持つ特殊な吸引力のようなものだろうか。その吸引力に煽られるように、観客の熱も上がっているようだ。

照明が暗転し、SEとともにメンバーが登場する。満員のオーディエンスに向かって、4人が一礼すると、温かい拍手が起こった。そして、山中拓也（Vo&G）の「楽しんでいくぞ！」というひと声から、惜しみなくキラーチューンが飛び出す。彼らのライブでは人気の鉄板ソングを連発する時間帯を“キラーチューン祭り”と称しているが、この日のライブは全編キラーチューン祭りのような高揚感があった。もともとメロディーセンスのあるバンドだが、この潔いセットリストは爽快。「mist...」「Mr. ファントム」など、おなじみのナンバーでは観客の歌声も響きわたり、開演直後からライブ終盤なみのテンションに！ステージ上のメンバーの動きも激しい。一見、物静かなイメージの鈴木重伸（G）も、今まで以上にアタマを振りまくってギターをかきならし、あきらかにあきら（B）も、足を高く上げるパフォーマンスで観客を揺さぶる。複雑なリズムを要するナンバーも中西雅哉（Dr）が力強く支え、アグレッシヴなパフォーマンスをビシっとシメていた。慣れ親しんだ楽曲達の合間には、「マナーモード」や「狂乱Hey Kids!!」など、1月にリリースした最新アルバム『FIXION』からの収録曲もプレイし、文句ナシのセットリストで攻めまくる。特にシングル曲でもある「狂乱 Hey Kids!!」で展開する観客との一体感は感動モノだった。うねるフロアにいどみかかるメンバーとのコンビネーションには、バンドとファンの両者が作り上げてきた絆がしっかりと感じられる。
　かと思えば、「次のステージに上がれる新曲」と紹介して新曲を披露。間違いなくキラーチューンの仲間入りを果たすであろう最新型のサウンドで場内を熱くする。観客のレスポンスも抜群で、キャッチーな仕上がりだ。今後のライブでも、大活躍してくれるのは間違いない。

　アンコールでは、ワンマンの恒例（？）となった中西のグッズ紹介のコーナーでホッとひと息。笑いもとりつつ、飄々とグッズを説明していく彼のトークは絶妙。各メンバーのキャラクターがハッキリしているのも彼らの魅力だと思う。気づけば、ほかのメンバーも絡んで、ほのぼのとしたムードに。

　こうして、アンコールのラスト曲まで走り抜き、ツアー初日は無事に終了。山中はライブ中、何度も“ワンマンっていいなぁ”とコメントしていたが、バンドのお膝元である、なら100年会館での凱旋公演（＝4月30日　“THE ORAL CIGARETTES 唇ワンマンライブ～故郷に錦を飾りまSHOW!!～”）に向け、上々の手応えをかみしめていたはずだ。思えば昨年の7月、Zepp DiverCityのワンマンで山中がノドの不調を訴えてライブが中断。当時は、“積み上げてきたものが0になったかもしれない”とまで思うほど、ダメージを受けたというが、年明け直後の1月4日にリベンジ公演につなげ、ピンチをチャンスに変えていった。この日のライブでも、そんな自信がバンドの底力へとつながっていたことを実感。この胎動するエネルギーが、この先どんな景色を作り出していくのか。次なるステージが楽しみだ。

【取材・文：海江敦士】