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サカナクション、ツアーで新たな「場」を作り上げ、次なるステージへ

サカナクション | 2016.04.21

昨年(2015年)10月から約半年をかけて全国を回ってきたサカナクション。約15万人を動員したツアーのファイナル公演として、4月9日、10日と幕張メッセ2daysの公演が行われた。

彼らが現時点での最新オリジナルアルバム『sakanaction』をリリースしてから3年近く経つ。昨年にはベース・草刈愛美が第一子を出産したことも報じられた。妊娠と出産に伴ってしばらくライブ活動は休止していたが、7月にはバンドがオーガナイズし数々のクリエイターが集う複合型クラブイベント「Night Fishing」を初開催し、9月には「NF」としてそれをレギュラーイベント化。同時に自らのレーベル「NF Records」を立ち上げたことを発表した。

つまり、彼らにとって2015年は新しい「場」を作るための期間だったのだ。音楽だけでなく、テクノロジーや、ファッションや、様々なカルチャーが行き交うハブとして自らを位置づけるようになった。そして始まったのが今回のツアー。そのことによって、「チーム・サカナクション」のライブは、より総合芸術として磨き上げられた体験を味あわせてくれるものへと進化していった。

そういうツアーの一つの終着点が、この幕張メッセのファイナル公演だった。筆者が訪れたのは、4月9日。そこで見たものは、ツアーの集大成であると同時に、バンドの新たな始まりを感じさせるステージだった。

ライブは、まずは12名の大所帯バンド「GOCOO+GoRo」による、和太鼓とディジュリドゥのオープニングセッションから始まる。迫力あるビートとトライバルなフレーズによるレイヴ的な興奮で会場を包んだセッションが終わると、ステージを覆う白い幕が左右に開き、そこにひし形の空間の中央に5人のメンバーが登場する。

ラップトップスタイルで一列に並んだ5人は、まず「N.F.I.G REMIX」を披露。最先鋭のエレクトロ・ビートで2万人を踊らせる。そしてバンドスタイルに移り、序盤は「アルクアラウンド」から「モノクロトウキョー」「表参道26時」「Aoi」とキャッチーなロックナンバーを立て続けにプレイする。山口一郎(Vo, G)を中心に、岩寺基晴(G)の情熱的なギター、草刈愛美のグルーヴィーなベースライン、江島啓一(Dr)のパワフルなドラミング、岡崎英美(Key)のきらびやかなシンセでアンサンブルを組み上げていく。ダンス・ミュージック主体のパートでサウンドが進化している分、これらの曲ではぐんとパワーアップしたバンドの演奏力が前面に出てくる印象だ。

中盤は「壁」「years」「ネプトゥーヌス」など、ゆったりと浮遊感のあるサウンドのメロウな歌でオーディエンスを深みのある世界へ引き込んでいく展開。山口一郎がアコースティック・ギターを弾きながら歌った「ネプトゥーヌス」では、オイルアートの幻想的な光が背後に広がる。「さよならはエモーション」では、江島啓一が叩く人力ドラムンベースのクールなリズムから徐々にテンションを上げ、オーディエンスに高揚感をもたらす。

後半からはダンサブルなナンバーが続く展開だ。レーザーが舞い2万人の手拍子が響いた「ネイティブダンサー」から、「みんな一緒に踊ろう! 自由に、自分のステップで」と山口一郎がオーディエンスに呼びかけた「ホーリーダンス」。そして着物姿の2名の女性ダンサーが舞い踊る「夜の踊り子」と続け様に披露する。2万人が興奮に包まれる。

そして、「行くぞ、SAKANATRIBE!」と山口一郎が叫び、ステージにはオープニングセッションで登場したGOCOOとGoRoが再び登場する。和太鼓バンドとディジェリドゥと共に、着物姿の女性ダンサーを従えて披露した「SAKANATRIBE TRANCEMIX With GOCOO+GoRo」はライブの1つのハイライトだった。トランスビートに「和」の要素を融合させた独自のグルーヴを放つ。新しい日本のトライバル・ダンス・ミュージックの誕生を見る思いだった。

そのままノンストップで「アイデンティティ」「ルーキー」とヒットチューンを連発。熱狂を巻き起こし、本編ラストは「新宝島」。端正なエレクトロ・ポップの原曲に比べて、かなり荒々しい勢いを感じさせる演奏だ。ロックバンドとしての肉体性を見せるプレイで本編を締めくくった。

アンコールで再び登場した5人は、DJスタイルで「グッドバイ(NEXT WORLD REMIX)」を披露。「ミュージック」を経て、資生堂「アネッサ」のCMソングとしてオンエアされている新曲を披露。洒脱たビートにシンセフレーズが印象的なダンス・ポップのこの曲。MCによると、もともとCMでオンエアされるサビの部分だけを先に作っていたらしく、実はこの日の朝までかけて歌詞を書いていたそう。終わった後には「どう?」とオーディエンスに問いかけていた。これも新たなアンセムになる予感がする。

「懐かしい曲をやろうと思います」と「Ame(A)」を披露し、続いては、その前にあったこの日唯一のMCタイム。メンバーそれぞれに話を振ってツアーやライブの感想を語り合いつつ、「新しいアルバムを作っています。年内には必ず出します」と、山口一郎がこの先への意気込みを語っていた。

「バンドって何なのかってずっと思ってましたけど……。メンバーが結婚して子供が産まれたり、そういう中で曲が生まれていって。普通のことなんだな、と、最近は感じてます。僕らの身の回りに起こっていることが全部音楽になっていくし、それを聴いて共感してくれたり、何かを代弁していると思ってもらえるように、頑張っていかなきゃなと感じてます」

続けて、マジョリティとマイノリティの間に立って両方の橋渡しをできる存在でいたいと、山口一郎はデビュー以来の信念を改めて告げる。

「『理解できない』とか、逆に『わかりやすいことやっちゃってるよ』とか、いろんなことがあると思うけれど、それも全部僕らなんで。その気持ちだけはずっと保ちつつ、音楽とたわむれていたいと思います」

そして、ラストに披露したのは「白波トップウォーター」。活動のフィールドもできることの可能性もどんどんと広がってきた今のサカナクションが、改めてバンドの原点をもう一度確かめるかのような終幕だった。

NF Recordsという新たな「場」を作り上げたサカナクションが、新作を携え次に向かうのはどこになるだろう。今はそこをとても楽しみに思っている。

【取材・文:柴 那典】
【撮影:山本マオ】

※掲載されている写真は幕張メッセ公演2日目の4月10日(日)のライブになります。

tag一覧 ライブ 男性ボーカル サカナクション

リリース情報

[Blu-ray] SAKANAQUARIUM 2015-2016 “NF Records launch tour”  -LIVE at NIPPON BUDOKAN 2015.10.27-

[Blu-ray] SAKANAQUARIUM 2015-2016 “NF Records launch tour” -LIVE at NIPPON BUDOKAN 2015.10.27-

2016年05月25日

ビクターエンタテインメント

【収録内容】
01. N.F.I.G REMIX
02. アルクアラウンド
03. セントレイ
04. Klee
05. Ali
06. 蓮の花
07. 壁
08. years
09. ネプトゥーヌス
10. さよならはエモーション
11. ネイティブダンサー
12. ホーリーダンス
13. 夜の踊り子
14. SAKANATRIBE TRANCEMIX WITH GOCOO+GoRo
15. アイデンティティ
16. ルーキー
17. 新宝島
EN1. グッドバイ(NEXT WORLD REMIX)
EN2. ミュージック
EN3. モノクロトウキョー
EN4. 白波トップウォーター

特典映像収録(40分を超えるドキュメンタリー映像)

お知らせ

■ライブ情報

ARABAKI ROCK FEST. 16
2016/04/29(金/祝)みちのく公園北地区エコキャンプみちのく

JAPAN JAM BEACH 2016
2016/05/5(木)幕張海浜公園JAPAN JAM BEACH特設会場

METROCK2016
2016/05/14(土)[大阪]特設会場(海とのふれあい広場)
2016/05/21(土)[東京]新木場 若洲公園

VIVA LA ROCK 2016
2016/05/28(土) さいたまスーパーアリーナ

taicoclub’16
2016/06/04(土)こだまの森
2016/06/05(日)こだまの森

JOIN ALIVE 2016
2016/07/17(日)いわみざわ公園

NUMBER SHOT 2016
2016/07/24(日)海の中道海浜公園野外劇場(福岡市東区)

SUMMER SONIC 2016
2016/08/20(土)舞洲サマーソニック大阪特設会場
2016/08/21(日)QVCマリンフィールド&幕張メッセ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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