雨のパレードが初の単独ツアーを完走。未来のスタジアム・バンドが観せた可能性をレポート!
雨のパレード | 2016.04.25
3月にビクターから1stアルバム『New generation』をリリースした雨のパレード。バンド・サウンドに電子音を混合させる2016年最注目の新鋭だ。そんな彼らが4月9日、渋谷clubasiaにて初の全国単独ツアー“New generation”、そのファイナル公演を行った。
「Tokyo」のMVにも映る蛍光灯で彩られた舞台。そこにメンバーが登場すると、アルバムと同じく「epoch」から本編がスタート。固く張り詰めた空気の中、大澤実音穂(Dr.)のやわらかい笑顔が映えている。そして「Focus」、「breaking dawn」、「encore」と新譜収録曲を畳み掛けるのだが、マイクで拾ったドラムの生音と、サンプリング・パッドの電子音がおもしろいギャップを生み、観客を魅了していく。
このバンドの特筆すべき点は、各メンバーが1人分以上のプレイアビリティを発揮していること。ドラム・セットとサンプリング・パッドを併用する前述の大澤に加え、山崎康介(Gt.)はアナログ・シンセサイザーも演奏。さらに本職のギターでは、エフェクターによってギターらしくない音も鳴らしている。例えば「breaking dawn」ではシマー・リバーブで幻想的な音の壁を創出し、「encore」ではスライサーで実音とかけ離れたリズムを足しているのだ。一方、是永亮祐(Ba.)は5弦ベースのロー・フレットから4弦ベースのハイ・フレットまでを縦横無尽に活用。タッピングをしたり、スリー・フィンガーでアルペジオのように爪弾くなど、ギターの奏法も操りながらメロディを奏でている。
「ようこそ“New generation”へ。初ワンマン・ツアーなんですけど、チケットは即完だったらしいです。ありがとうございます! 最後まで楽しんでいって下さい」という福永浩平(Vo.)のMC後、フロアに語りかけるような「10-9」、『new place』(2015年)収録の「YES」と続ける。先日のインタビュー(▼こちら)における福永の「意外と僕らライブ・バンド」という言葉を最もわかりやすく証明していた楽曲が、次の「揺らぎ巡る君の中のそれ」。最新音源よりBPMを3程度上げ、ライブならではの高揚感で観る者を躍らせた。夢を追って上京して4年が経ちました。この東京は大好きな街です。ただ、夢を叶えた気になってるヤツも多いなと思います。まあ、みんなに言いたいのは、調子はどう?ということだけです」と語り、「Tokyo」へ。クールで軽やかに何でもこなしてしまいそうな彼らにとっても、バンドが売れない時代に夢を追うことは容易ではない。しかし東京という巨大都市に埋もれまいと歌う本曲の歌詞や、時折ステージで見せる必死の形相から、彼らなら戦い抜けるだろうと思わされる、飢渇した向上心を感じる。そうした覚悟や決意は、この日この場所に居合わせた観客にとっても、自らの人生と重ね合わせることで勇気として響いたはずだ。
ライブは瞬く間に終盤へ。トリップ感のある「Dear J&A」から珍しくギター・ソロを弾くシューゲイザー調の「Petrichor」。その後「bam」、「Movement」と続け、ラストは「new place」だ。前奏とともに福永は「本気で今後の音楽シーンを引っ張っていくつもりで毎日やってます。本気です。よかったら付いてきて下さい」と語り、歌に入る。楽曲の壮大な強さと、福永のクリス・マーティン(コールドプレイ)を想起させる大きなアクションから、思わずスタジアムで演奏している姿をイメージしてしまった。
一度ステージを去った後、本気の拍手に応じてアンコールを実施。福永は感謝を述べてから「幕張メッセブチ抜きでワンマンやるつもりでやってるんで」と野望を口にする。そして、真夜中の海や星空といった情景が目に浮かぶ「Noctiluca」で本当の終幕を飾った。伸びしろとともに未来への可能性を観せつけてくれた雨のパレード。6月にはCzecho No Republicを迎えた自主企画“&”の開催を発表するなど、今後も彼らから目が離せない。
【取材・文:秋摩 竜太郎】
リリース情報
セットリスト
雨のパレード全国単独ツアー
『New generation』
- epoch
- Focus
- breaking dawn
- encore
- 10-9
- YES
- 揺らぎ巡る君の中のそれ
- Tokyo
- Dear J&A
- Petrichor
- bam
- Movement
- new place
- en. Noctiluca
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