安田レイ ワンマンツアーファイナル 赤坂BLITZをレポ
安田レイ | 2016.06.03
昨年末、日本レコード大賞新人賞を受賞した安田レイが、半年振りとなる通算4度目の全国ワンマンツアー「PRISM」のファイナルを赤坂BLITZで迎えた。開演前から会場内の照明が落とされており、BGMとして、彼女の音楽的ツールであるR&Bやソウルなどのブラックミュージックが流れていた。クラブのラウンジのような雰囲気の中、紗幕に7色のライトが投影され、2ndシングル「Brand New Day」のDJ mixがかかった。やがて、マシーンビートが生のバスドラとなり、シンセも加わり、ブレイクと同時に紗幕が落とされ、キラキラの衣装と弾ける笑顔で光り輝く安田レイが登場。スポットライトを全身に浴びた彼女に反射して、客席にも眩しい光があたる。今年2月にリリースした2ndアルバムと本ツアーのタイトルでもある“PRISM”を体現したようなオープニングだった。
安田レイは、光を分散させたり、反射させる多面体であるプリズムのようなシンガーだと思う。プリズムに太陽の光を通すと虹が見えるように、彼女は自身の歌や心、経験を通して、聴き手に様々な“光”と“色”を見せてくれる。光でドレスアップして、自分の色を纏おうというメッセージを込めた「シグナル」。ポケモン・ザ・ムービーXY「光輪(リング)の超魔神 フーパ」の主題歌で、仲間への感謝の気持ちを込めた「Tweedia」。冒頭の2曲は、タイトルからも分かる通り、まさに光の歌。本人が作詞し、「100%、メイド・バイ・レイ」と語った’90SマナーのR&B「You color my world」で、あなたの世界を私色で染めて見せると宣言し、自然とクラップが沸き起こった「styles」では、落ち込んだ時に新しい色をくれる友達の存在の大切さを歌っていた。安田レイにとっての自分らしい色とは一体何色だろうか??。
登場時から「すごい景色です! もう感極まって泣きそう」と語っていた彼女は、4曲続けて歌い終えたところで、会場に集まってくれた観客にお礼を述べ、何度も「嬉しいーな。ありがとう」と伝え、「R&Bのかっこよさをたくさん学んだ」というアリシア・キースのカバー「If ain’t got you」をエモーショナルに歌い上げた。低いトーンのハミングから始まるバラードで、改めて歌のうまさだけで聴き手を感動させる、ヴォーカリストであることを再確認させられた。続く「Mirror」はアニメ主題歌で和メロのバラードで、ウェディング系のCMソングに成っていた「sweet home」はハートウォーミングなバラード。この日のMCでも本人が言ってたように、2ndアルバム『PRISM』は「ジェットコースターのようなアルバム」で、ダンスミュージックからJ-POP、バラードまで多様なジャンルが混在しているが、この日の歌いっぷりを生で体験すると、どうしても本格的なR&Bを追求して欲しいと願ってしまう。コアとポピュラリティーのバランスは考えないといけないのだろうが、J-POPよりもR&Bのメロディの方が、彼女の感受性の高さと、感情を自由自在に歌に乗せる技術の高さが生かせるのではないかと思う。
6人の女性ダンサーと一緒に踊った「Just for you」と彼女の原点である元気ロケッツの名曲「Heavenly star」のミックスで観客を興奮させたところで安田は一旦、ステージを降りた。ダンスパート、ドラムとキーボードのソロバトルを経て、真っ赤な衣装で再登場すると、ポップナンバー「Supercar」から細かいリズムと大きなメロディを組みあわせた「You’re the one」、いきものがかりのカバーで昭和歌謡テイストの「恋詩」、デビューシングル「Best of my Love」の元気ロケッツREMIX、タオルが回り、コール&レスポンスで盛り上がった「Lots of Love」と、まさにジェットーコースターのような展開を一気に見せ、観客の熱狂とジャンプを誘った。
ライブはいよいよ最終盤へ。幼い頃に描いた夢を忘れずに、涙を未来を照らす光に変えるという思いを綴った「フォゲミナ」で切なくも明るい笑顔を見せた彼女は、涙を流しながら明日の色を夢想するラストナンバー「あしたいろ」を歌う前に、涙をこらえながら、こう語った。
「安田レイの輪をどんどん広げていきたいなと思っています。私にはいろんな夢があるんですけども、ここにいるみんなとだったら、叶えていけそうな気がします。めっちゃ悔しいこともいっぱいあるけどさ、人生! でも、みんなとだったら乗り越えていける気がします。そんな未来について、見えない明日について歌った曲を歌いたいと思います。この曲をでっかい会場で歌う未来を想像しながら聴いてください」
ここで初めて、ステージ後方に設置されていたミラーボールが回り、全方向に光の粒を反射させ、本編は光の余韻を残しながら終わった。
アンコールの声に応えてステージに現れた彼女は、全身に光を浴びて夢へ向かう決意を込めた「Inside Out」で再び観客を躍らせ、夢に向かう自身の背中を押してくれた中学生時代の恩師への思いを語り、「今度は夢を持った人を今度は私が応援する番なのかな。それが、私の役目、使命なのかなって思っているので、夢を追いかけていく中で、学校や親、友達の反対があったりするかもしれないけど、ちゃんと自分がやりたいこと、自分がやっていて一番輝けるものをあきらめないで頑張ってて欲しいなっていう気持ちがある」と続け、そんな気持ちを込めた「Message」を伸びやかに歌い上げた。シングルとして彼女が初めて作詞を手がけた彼女からのメッセージは、きっと観客の心にまっすぐに届いただろう。溢れ出す光が七色の未来を誘うシンセポップ「I&U」、そして、華やいだ街の色からたくさんの夢を抱えて未来へと歩き出す「Brand New Day」へ。オープニング曲へと戻る構成となっていたが、彼女が歌った全20曲から浮かび上がってきたのは、この7月でメジャーデビュー3年目に突入するシンガーとしてのブレない軸のようなものだろう。
光、色、明日、未来、夢……。泣き虫を自称し、様々な悩みや葛藤を乗り越えた末に、自分が歌う意味、役目を見つけた彼女の歌声は実に力強く、まばゆく輝いていた。
彼女の未来は、きっと彼女が想像するよりもはるかに明るく、さらに多様な色を放っているだろうし、聴き手にも自分の色を見つけるヒントをくれるはずだ。
【取材・文:永堀アツオ】
【撮影:Satoshi Hata】
リリース情報
セットリスト
安田レイ TOUR 2016 "PRISM"
2016/05/27@赤坂BLITZ (東京都)
- 1.シグナル
- 2.Tweedia
- 3.You color my world
- 4.styles
- 5.If I Ain’t Got You(cover)
- 6.Mirror(acoustic ver)
- 7.sweet home
- 8.Just for you
- 9.Heavenly Star
- 10.Supercar
- 11.You’re the one
- 12.恋詩
- 13.Best of my Love
- 14.Lots of Love
- 15.フォゲミナ
- 16.あしたいろ
- EN1.Inside Out
- EN2.Message
- EN3.I&U
- EN4.Brand New Day