前へ

次へ

世代もジャンルも超えた期待の4バンドが集結! TOKYO FM「ジャパネクレディオライブ powered by EMTG MUSIC」Vol.2を完全レポート!

ジャパネクレディオ | 2016.06.21

 今年2月に開催され大盛況となったVol.1に引き続き、「ジャパネクレディオライブ powered by EMTG MUSIC」のVol.2が渋谷クアトロで行われた。このライブは“ネクストブレイクアーティストをいち早く紹介する”をコンセプトに放送中のTOKYO FMの音楽プログラム『ジャパネクレディオ powered by EMTG MUSIC』が企画する対バンイベント。その第二弾となった今回はパノラマパナマタウン、そこに鳴る、Helsinki Lambda Club、LACCO TOWERという世代もジャンルも超えた4バンドが出演。前回以上に個性的なメンツが集まり、まるで異種格闘技戦のようなステージが繰り広げられた。

 番組ナビゲーターを務めるROCKIN’ON JAPAN 副編集長の小川智宏による前説で「オーラが半端ないバンドです」と呼び込まれた1組目は神戸発の4人組バンド、パノラマパナマタウンだった。ロッキングオンやMASH A&Rのオーディションで優勝を果たした実力を持つ彼らは1曲目「パノラマパナマタウンのテーマ」で、まず岩渕想太(Vo・Gt)がマシンガンのように捲し立てる独特のボーカルスタイルが目を惹いた。いかにもロックンローラー然とした浪越康平(Gt)が強烈なプレイで魅せた「ロールプレイング」から「地元福岡のシャッター街へ愛を込めて」(岩渕)と歌い出した哀愁のロックバラード「真夜中の虹」へ。最後にフロアに降りた岩渕はその中央に運んだテーブルに立ち、渾身の歌「世界最後になる歌は」を披露。窮屈で面白くもないジャンルの壁など「クソくらえ!」とばかりにロックの自由を謳歌するパノパナが独自のスタイルでその場所に爪痕を残していた。

 鈴木重厚(Gt・Vo)と藤原美咲(Ba・Vo)のふたりで活動することを発表した轟音テクニカル系バンド、そこに鳴るもまたバンドのオリジナリティを全面にぶつけるステージだった。1曲目は「6月の戦争」。白いワンピースを着たガーリーな雰囲気の美咲が爆音ベースを掻き鳴らし、線が細くナイーヴな佇まいの鈴木がナルシスティックなギターで煽る。凛として時雨に影響を受けたへヴィなサウンドに男女ツインボーカルのキャッチーなサビが駆け抜ける。「UTSUNOMIYA」で炸裂した鈴木の華麗なギターソロから、ダブルタッピングが鮮やかに絡み合う「pirorhythm stabilizer」へ。プレイヤー魂を全開にしたテクニックの数々と、時折ふたりが背中合わせでポーズを決めるパフォーマンスなど、ある種の“ベタさ”がそこに鳴るの売り。初見だと圧倒されるかもしれないが、このバンド独特の歪なバランス感覚は一度ハマると抜け出せない中毒性を持っていた。

 そこに鳴るがKEYTALKを輩出した下北沢の老舗レーベルKOGA RECORDSだとしたら、3組目のHelsinki Lambda Club(ヘルシンキラムダクラブ)もまた同じく下北沢を拠点に多くの人気バンドを生み出したUK.PROJECT所属のオルタナティヴバンドだ。橋本薫(Vo・Gt)を中心としたメンバー4人が生み出す、ガレージロックの影響を受けた泥臭いバンドサウンドと人懐こくてポップなメロディがフロアにじんわり沁み渡っていく。……と書くと一見クールそうなバンドなのだが、2曲目「バンドワゴネスク」で歌われているのは売れる未来を夢見るバンドマンの妄想物語。さらに6月8日にリリースされた解放的なニューシングル「しゃれこうべ しゃれこうべ」もダークファンタジーばりにシュールな歌詞がユニークで、一筋縄ではいかない捻くれたバンドの存在感を見せるライブだった。

 ネクストブレイクが集結するイベントだけに20代の若いバンドがここまで先陣を切ってきたが、トリを飾ったのは10年以上におよぶインディー活動でロックシーンに確固たる地位を築いているLACCO TOWERだった。昨年メジャーデビューを果たした彼らはここからより広いシーンでブレイクすることを予感させる存在でもある。松川ケイスケ(Vo)の紳士的な一礼から幕を開けたステージ。1曲目「柘榴」から「奇妙奇天烈摩訶不思議」へと、激情と耽美、そして狂騒が目まぐるしく交錯するバンド独自の世界観が全開になった。素晴しかったのはリリースされたばかりの最新アルバム『心臓文庫』から、松川が「未来が少しだけ明るくありますように」という願いを込めて披露された「未来前夜」。不安と葛藤を抱きながらも、視線の先にはたしかに未来を見据えているストレートなロックナンバーはこのイベントを締め括るのに相応しい1曲だった。
 アンコールでは、松川が細川大介(Gt)をエスコートするようにステージに登場して笑いを誘うと、本当のラストナンバーとしてメジャー1stシングル「薄紅」を披露。赤く染めたステージから響くキャッチーなメロディが会場を一体にする貫禄のフィナーレだった。

 “ネクストブレイク”という言葉はとても曖昧だ。実は根拠はなくて、それを掲げる人間が純粋に「こいつらマジでヤバいから聴いて」と思う期待値で成り立つものでもある。だから、それを主旨とするイベントは未知数であり、とても冒険的だ。この日出演した4組もいまは知らない人も多いかもしれない。だが、この日の会場にいたお客さんはきっと近い将来友だちに自慢できるようになると思う。「ジャパネクレディオライブ 」とは、これからも私たちのそういうワクワクを提供してくれる場所になりそうだ。

【取材・文:秦 理絵】
【撮影:山川 哲矢】

tag一覧 ジャパネクレディオ パノラマパナマタウン そこに鳴る Helsinki Lambda Club LACCO TOWER ライブ

リリース情報

[パノラマパナマタウン]SHINKAICHI

[パノラマパナマタウン]SHINKAICHI

2016年03月02日

JACKMAN RECORDS

1. SHINKAICHI
2. いい趣味してるね
3. とりこまれる
4. クラリス
5. 世界最後になる歌は

リリース情報

[そこに鳴る]YAMINABE

[そこに鳴る]YAMINABE

2016年03月09日

KOGA RECORDS

1. 6月の戦争 -extreme explosion ver.-
2. エメラルドグリーン
3. UTSUNOMIYA
4. もう二度と戻れないあの頃に
5. 少女の音色に導かれ
6. 内緒にしててよ、醜い私のことを嫌っても
7. pirolin -exskill of excalibur ver.-
8. draw -exact exodus ver.-

このアルバムを購入

リリース情報

[Helsinki Lambda Club]友達にもどろう

[Helsinki Lambda Club]友達にもどろう

2016年06月08日

UK.PROJECT

01.しゃれこうべ しゃれこうべ
02.TVHBD
03.ぢきぢき
04.メリールウ

リリース情報

[LACCO TOWER]心臓文庫

[LACCO TOWER]心臓文庫

2016年06月08日

Columbia

1.罪之罰
2.未来前夜
3.薄紅
4.蜂蜜
5.楽団奇譚
6.蛍
7.世界分之一人
8.秘密
9.珈琲
10.相思相逢

トップに戻る