パスピエ『印象E』東京公演でUNISON SQUARE GARDENとのステージ
パスピエ | 2016.07.08
毎回ゲストを迎えて行うパスピエの自主企画『印象』シリーズ。今回はついに第5弾の『印象E』。大阪でのandrop、愛知でのフジファブリックとの2マンを経て、ファイナル公演の東京に登場したのはUNISON SQUARE GARDEN。大きな歓声で迎えられた斎藤宏介(Vo・G)、田淵智也(B)、鈴木貴雄(Dr)は、気合たっぷりだった。3人によって瞬く間に構築された美しいアンサンブルに刺激され、観客は一気に興奮の極みへと到達。「マスターボリューム」「kid, I like quartet」「シュガーソングとビターステップ」など、連発される曲たちがとても熱かった。「パスピエと一緒にやりたくない(笑)。耳の肥えたお客さんが集まってるから」などと途中のMCで斎藤が謙虚に言っていたが、切れ味抜群な演奏はパスピエのファンも大喜びさせていたはず。間もなくリリースされる最新アルバム『Dr.Izzy』の収録曲「パンデミックサドンデス」も披露されて、最高の盛り上がりが生まれていた。
ステージに最初に登場し、腕を勢いよく振り上げて観客を煽った成田ハネダ(Key)。続いて、やおたくや(Dr)、露崎義邦(B)、三澤勝洸(G)も現れてスタンバイ。最後に大胡田なつき(Vo)がセンターに立ち、パスピエの1曲目「ヨアケマエ」がスタートした。高鳴るサウンドが猛烈に神々しい。たくさんの人々がひしめき合うフロアが、早速エネルギッシュに揺らぐ。そして、「七色の少年」「YES/NO」「チャイナタウン」も届けられ、会場全体から湧き起る歓声、手拍子は果てしなく熱を帯びていく。グリーンのマイクケーブルを波打たせながらステージ上を巡り、歌声を響かせる大胡田の圧倒的な存在感。表現力豊かなフレーズを放ち続ける楽器隊……5人のパワーを序盤からまざまざと実感した。
「ユニゾン、“かっこいい”の一言に尽きる。2マンやりたくないとか言っときながら、袖で“パスピエ、ぶっつぶすぞ!”って(笑)」、本番直前のバックステージでのUNISON SQUARE GARDENの様子を明かして観客を爆笑させた成田は、「こんな素敵な2マンはなかなかない。いい日です!」と非常に嬉しそうだった。そして「成田さんがこういうMCをするのは珍しい(笑)。最後まで楽しんでいってください!」、大胡田の力強いMCも経て再び演奏へ。イントロが鳴り響いてスタートしたのは「つくり囃子」。妖しい雰囲気のサウンドが恍惚を誘う。観客が掲げた腕がフロア全体で揺らぐ風景が、どこかこの世のものではないようにも見えた。続いて、近未来的な風味と和的情緒が独特の融合を果たしている「トーキョーシティ・アンダーグラウンド」。ダブルネックを手にした三澤が、バリトンギターと通常のエレキギターを巧みに弾き分けている姿が印象的だった「術中ハック」……幻想的なテイストの曲が連発された。そして、そんな夢見心地のひと時を一気に瑞々しいものへと塗り替えたのが「花」。郷愁を誘うメロディが響き渡り、観客は一心に耳を傾けていた。
「私たち、7月27日に久しぶりに両A面シングルを出すんです。今日はその内の1曲をライブでやろうと思います」と大胡田が言い、披露された新曲「永すぎた春」は、中盤で飛び出した嬉しいサプライズであった。最近のパスピエがより意識的に打ち出すようになっている和的な旋律、ロックバンドとしての強靭な肉体性が一体化したサウンドが気持ちいい。歌いながら優雅に踊り、黒髪を揺らす大胡田を眺めながら自ずと浮かんだのは、「いなせ」という言葉。日本のバンドとしてのオリジナリティを示しつつ開放的なダンスを誘うこの曲、今後のパスピエのライブに欠かせない存在の1つとなるのではないだろうか。
終盤は、とにかく会場全体が興奮で震え続ける場面の連続。激しいクラップと掛け声、《♪ウォーウォーウォーウォーウォー》という大合唱が最高の一体感を生み出していた「裏の裏」。そして、「トキノワ」で本編は締めくくられたが、鳴りやまない拍手に応えてメンバーたちはステージに再登場した。まずはデビュー5周年を記念した『パスピエ 5th Anniversary Hall Tour』を12月に行うことを発表。続いて、「A」「B」「C」「D」「E」と回を重ねてきた『印象』シリーズを今回で一旦終了させることも告げられたのは、まったくの予想外だった。「Zまでやってよ!」という声が上がっていたが、またやりたい時期がきたら企画する可能性もあるらしい。おそらく新しい何かも考えているのだと思う。
今後の活動予定の発表を終えると、これから演奏する曲について語り始めた成田。『印象』シリーズのアンコールでは、共演したバンドのカバーを披露するのが恒例となっているのだが、今回は何をやるのか? 「運がいいのかプレッシャーなのか(笑)。今日、ユニゾンがやってない曲です。ファンにはお馴染みだと思いますが……」と言い、スタートさせたのは「場違いハミングバード」だった。シャープにビートを刻んだやお、激しく身体を揺らしながらダイナミックにプレイしていた三澤と露崎、オルガンによるスタイリッシュなサウンドを添えていた成田、スタンドマイクに向かって力強く歌い上げた大胡田。5人の持ち味が存分に反映されたカバーであった。
ラストを飾った「S.S」の盛り上がりは、一際すごいものだった。華麗にステップを踏みながら歌う大胡田に負けないくらいの勢いで歌って踊った観客。《♪S.S!》というコールの一体感もものすごい。楽器隊の4人によるソロ回しを経て雪崩れ込んだ後半は手拍子の嵐。演奏が幕切れた時、とても清々しい余韻が会場内に漂っていた。「ありがとう。またね!」と言ってステージを後にした5人を見送った特大の拍手。パスピエのライブが、ますます頼もしい凄味を帯び始めていることを感じたライブだった。『印象』シリーズが今回で一旦終了となるのは少々寂しいが、彼らの雄姿は今後も様々な空間で煌めくに違いない。
【取材・文:田中 大】
【写真提供:ワーナーミュージック・ジャパン】
リリース情報
[パスピエ]永すぎた春/ハイパーリアリスト(初回限定盤)
2016年07月27日
ワーナーミュージック・ジャパン
2 ハイパーリアリスト
3 REM
4 今日も雨 *倉橋ヨエコのカバー
セットリスト
パスピエ presents『印象E』
6月17日(金)東京公演
新木場STUDIO COAST
- 1.ヨアケマエ
- 2.七色の少年
- 3.YES/NO
- 4.チャイナタウン
- 5.つくり囃子
- 6.トーキョーシティー・アンダーグラウンド
- 7.術中ハック
- 8.花
- 9.永すぎた春
- 10.裏の裏
- 11.MATATABISTEP
- 12.トキノワ
- EN-1.場違いハミングバード(UNISON SQUARE GARDENのカバー)
- EN-2.S.S
お知らせ
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO
2016/08/12(金)・13日(土) 石狩湾新港樽川ふ頭横野外特設ステージ
※パスピエの出演日はどちらか1日となります。
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016
2016/08/14(日) 国営ひたち海浜公園
ROCK KIDS 802 ラジ友夏祭り〜THE MUSIC CAMP 2016〜
2016/08/23(火) Music Club JANUS ※成田ハネダ(パスピエ)
J-WAVE "THE KINGS PLACE" LIVE Vol.11
2016/09/23(金)新木場 STUDIO COAST
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。