TRICERATOPS『LIVE TOUR 2016』ファイナル公演、サプライズな演出も!
TRICERATOPS | 2016.07.19
歌が生きている! TRICERATOPSの『LIVE TOUR 2016』のファイナル公演を観て、まずそう感じた。新作のリリースを受けてのツアーではないのに、鮮度の高い音楽が届いてきたのは、彼らが今の表現力を駆使して、現在の自分たちの思いを曲に詰め込んで演奏していたからではないだろうか。オープニング・ナンバーは2015年11月発表のシングル「Shout!」。“僕は叫び続けよう”“君へ続く道だよ”と歌われるこの曲は「野球・ソフトボールを東京オリンピックの正式種目に!」というPR映像用に制作されたのだが、この夜はリスナーへの愛が詰まった歌として、そして未来を切り拓き続けていくという決意表明の歌として響いてきた。歌もコーラスも演奏も温かくて人懐こくて力強い。3人の人間性がそのままサウンドにも溶けこんでいると感じた。
「みんな、楽しむ準備はいいですか? 踊る準備もいい? 思う存分やっちゃってください」という和田の言葉に続いて演奏されたのは「Party」。楽しくて、気持ち良くて、フレンドリーなナンバーだ。観客がともに歌い、踊って、一体になって盛りあがっていく。アルバム・ツアーではないからこそ、久々に演奏される曲もたくさんあった。これはつまりお宝発掘ツアー。林のベースで始まった「ハートのショップ」もそんなナンバーのひとつ。この曲もラヴソングであると同時に、強い意志が詰まった歌として響いてきた。2ndアルバム収録の「LIP CREAM」はリラックスしたグルーヴが気持ちいい曲なのだが、伸びやかさがさらに増していた。和田のギターのつまびきから始まったのは「僕はゴースト」。現時点での最新アルバム『SONGS FOR THE STARLIGHT』収録曲なのだが、哀愁のにじむ歌とギター、陰影の濃いベースとドラムとが作り出すアンサンブルが不思議な魅力を放っていた。この最新作から「GRRR!GRRR!GRRR!」「ポスターフレーム」も演奏されたのだが、どの曲もレコーディングされた時点が完成ではなくて、ライヴで演奏される中でどんどん形を変えて、磨かれていくところは彼らならではだろう。
TRICERATOPSのライヴの大きな特徴のひとつは音楽への愛があちこちに散りばめられていること。和田がアメリカの伝説的なカントリーのギタリスト、チェット・アトキンスの「Mister Sandman」を演奏すると、客席からハンドクラップと歓声が起こった。小粋な演奏が場面転換の役割も果たしていく。ここからは和田がエレピを弾きながらのコーナー。「エメラルド」は思いを秘めた歌声とコーラス、深遠な演奏に聴き惚れた。「ビートルズの曲で、ポールのライヴでやってほしいと思い続けていて、やってくれていない曲をオレたちでやります」とのことで、「Honey Pie」をカバーする場面もあった。オリジナルの持っているクラシカルでジャジーでファンタジックなテイストを3人が見事に表現していく。聴いているだけで、顔がほころんでしまうようなゴキゲンなカバーだ。さらには「Finally」ではソウルフルでハート・ウォーミングな歌と演奏を披露。
シークレット・ゲストとしてSMAPの草彅剛が登場してTRICERATOPSと共演するサプライズもあった。この共演、2014年以来、2度目ということになる。前回は草彅がMCを務める番組「『ぷっ』すま」で和田が草彅にギターを教える「ギターマンへの道」というコーナーを受けての共演だった。今回、その発展的なコーナー「ギターマン・アルペジオへの道」が復活して、再び共演が実現した。草彅のアルペジオをフィーチャーしての「夜空ノムコウ」では猛練習の成果が見えてくるような草彅のひたむきなプレイのもと、和田が歌うレアな構図も出現。さらには番組で草彅とともにMCを務めているユースケ・サンタマリアも鈴で参加した。このメンバーで和田がSMAPに楽曲提供した「藍色のGANG」も演奏された。こんなハプニングが起こるのはTRICERATOPSが音楽を通じて、様々な人々と交流を深めているから。
スペシャルなのはゲスト登場シーンだけではない。すべての瞬間がスペシャルだったのはスリリングな演奏が次から次へ展開されたからだ。スペイシーな演奏から始まった「Zombies」でのタフなグルーヴと自在なセッションも見事だった。林と吉田による「Hayashi & Yoshifumi Groove!!」では、ファンキーかつソリッドなグルーヴに体が揺れた。スラップ奏法も駆使しつつの林のベースも、しなやかさと強さとが共存する吉田のドラムも圧巻。和田のギターの弾き語りで始まった本編ラストの「if」は1999年発表の3rdアルバム収録曲なのだが、より大きなラヴソングに成長していた。包容力があって、空間的な広がりがあって、表情豊か。音楽の楽しさや奥の深さをたっぷりと堪能させてくれた夜だった。
アンコールではフランク・シナトラの「Someone to Watch Over Me」のカバーも披露された。スタンダード・ソングにしっかり自分たちの思いを封じ込めていくような体温のかよった歌と演奏が染みてきた。「日々色々あると思いますが、そんなもんだと思います。でも楽しく笑顔で人生を送って下さい。人生のちょっとした時間の中でTRICERATOPSの音楽がみんなのエネルギーになれるような存在だったら、完璧だよ。そのためにオレらはいると思うので、ぜひ使ってやってください。オレの人生にとってもエネルギーが必要な時があって、そのエネルギーはみんなです」という和田の言葉も印象的だった。そんなMCに続いてのアンコール・ラストは「Fly Away」。この曲の中の“未来はこの手の中に今もある”というフレーズが真っ直ぐ届いてきたのは、彼らがデビューして19年間たった今も、未来に向かって着実に歩き続けているからだろう。バンドの成長と人としての成長と曲の成長とが見事に連動していた。次はどんな景色を見せてくれるのか? どんな歌を聴かせてくれるのか? 未来はバラ色ではないかもしれないが、彼ら3人が歩んでいく近未来が待ち遠しくなるようなステージだった。
【取材・文:長谷川誠】
【撮影:山本倫子】
リリース情報
セットリスト
TRICERATOPS LIVE TOUR 2016
2016.6.19@Zepp Tokyo
- 1.Shout!
- 2.Going To The Moon
- 3.Party
- 4.ハートのショップ
- 5.僕はゴースト
- 6.LIP CREAM
- 7.GRRR!GRRR!GRRR!
- 8.ポスターフレーム
- 9.〜Sho’s Guitar Solo〜 Mister Sandman
- 10.エメラルド
- 11.Honey Pie
- 12.Finally
- 13.夜空ノムコウ
- 14.藍色のGANG
- 15.Zombies
- 16.Made In Love
- 17.Hayashi & Yoshifumi Groove!!
- 18.Milk
- 19.Future Folder
- 20.if
- 21.Someone to Watch Over Me
- 22.Silly Scandals
- 23.Fly Away
お知らせ
TRICERATOPS ACOUSTIC LIVE TOUR 2016
11/03(木・祝) 広島_CLUB QUATTRO
11/05(土) 川崎_CLUB CITTA’
11/13(日) 名古屋_DIAMOND HALL
11/20(日) 仙台_Rensa
11/23(水・祝) 札幌cube garden
11/25(金) 大阪_なんばHatch
11/27(日) 福岡_イムズホール
12/04(日) Zepp DiverCity Tokyo
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。