大阪・堺出身のShout it Out、まっすぐな青さが光った東京初ワンマンライブをレポート!
Shout it Out | 2016.07.21
希望と未来とが幾重にも折り重なってとてつもなくハッピーな磁場を生み出しているかのような、少しの濁りも澱みもない、まさに始まりの夜だった。ステージも客席フロアも一体となった場内に満ち満ちているのは、この先に待つ冒険の旅へのうずうずとした期待感。“僕らの春はまだ青い”、彼らが掲げるキャッチフレーズそのままのまっすぐな青さにも激しく心揺さぶられてしまう。平均年齢19.5歳の4人組バンド、Shout it Out。7月6日にシングル「青春のすべて」でメジャーデビューしたばかりの彼らの、その測り知れないポテンシャルを存分に見せつけられた夜でもあった。
7月10日、渋谷チェルシーホテル。〈Shout it Outワンマンライブ
~大人になること~〉と冠されたこの日のステージはメジャーデビュー後初であり、大阪出身の彼らにとって東京で初めて行うワンマンライブとなる。昼には会場にほど近いタワーレコード渋谷店にて「青春のすべて」発売記念イベント、その名も〈青春交換会〉を開催し、イベントスペースから人が溢れ出さんばかりの大盛況を博した彼ら。その余韻も冷めやらぬまま、さらには山内彰馬(Vo.& G.)の20歳のバースデー当日ということも相まってだろう、チェルシーホテルの場内は開演前から汗が滴るほどの熱気が充満していた。
暗転した場内に清冽なピアノの音色が響き渡ると同時に黒幕が開いた。現れた4人はステージの中央で円陣を組み、それぞれの右手を重ねてスタートの儀式。フロアに向き直ると山内は深く息を吸い込むや、滔々と声を放った。1stミニアルバム『Prologue』(会場限定発売)に収録されている「opening」、ライブでは初披露となる楽曲だ。フロアに沁み入る山内の独唱、芯が強く温かみもある歌声に聴き入ったのも束の間、続く「青」では一転、疾走するバンドサウンドがダイナミックに空気を揺さぶる。この静から動への鮮やかな変遷に心掴まれないわけがないだろう。
だが曲がクライマックスを迎えようとしたそのとき、トラブルが起きた。たいたい(B.)のベースの音が出なくなってしまったのだ。申し訳なさそうに山内のもとに駆け寄るたいたい、当然ながら演奏は止まる。しかしながらライブならではの一幕にオーディエンスはむしろ大喜び。山内も「生きてるといろんなことがあります。ツラいことや悲しいこともたくさんあって、ライブのアタマでベースの音が出なくなることもある。みなさん、強く生きていきましょう」と自虐含みなトークで間を繋ぎ、その場の空気を和ませた。そうして仕切り直しの第一声、第一音にはそれまで以上の闘志がみなぎり、見守るフロアのクラップもいっそう大きく演奏を支える。「風を待っている」「あなたと、」と曲を追うごとに歌にもバンドアンサンブルにも力強さが増していくのが目に見えるようだ。
細川千弘(Dr.)が叩き出すリズムの駆動力、たいたいが紡ぐベース音は鋼の太さとしなやかさでグルーブを生み出し、露口仁也(G.)の指先が描き出す繊細にして広がりのあるギターサウンドも印象的な「列車」、ゆったりとした三拍子のテンポ感がのっぴきならない迫力を感じさせた「Teenage」。「今日ここに足を運んでくれた僕らの大切なあなたと、貴方の大切な誰かに歌います」と山内が言葉を添え、オーディエンスひとり一人に手渡すように奏でられた「生きている」の確かさが嬉しい。
それにしてもなんとエネルギーを宿した楽曲たちだろう。エモーショナルで激しい演奏にもけっして埋もれることのない歌詞、むしろその存在感はいっそう大きく、聴き手にメッセージを突きつけてくる。ライブの勢いに流されることなく、一語一句を丁寧に発している山内の“伝えたい”という揺るぎない意志、そして、彼の意志をサウンドに乗せて届けようとするメンバー一丸となった姿勢がそう思わせるのかもしれない。自らが放つ言葉の力を自覚し、それを届ける音楽の力を彼ら自身が信じているからこそ、人はShout it Outに惹かれてやまないのかもしれない。
20歳になるのがすごくイヤだったこと、けれど迎えた今朝、何も変わっていなかったこと、まるで実感がないこと、いつ大人になれるのか、あと5年は“大人が嫌いだ”と言ってるだろうこと……ライブも後半に差しかかった頃、山内は少し長めのMCでその心情を訥々と口にした。
「新しいステージに立っても、新しい何かを始めても、結局、僕たちは昨日の続きしか生きられない。どれだけ新しい気持ちで日々を過ごそうと思っていても、今日は昨日の続きで、そこからはどうしても逃げられない。逆に自分はすべてを失ってしまったと思ったときでも、そこにいるのは今日という日まで積み重ねてきたあなたで。だから実感はないですが、メジャーという新しいステージに立っても、今までと何も変わらないShout it Out、今までと何も変わらない山内彰馬で、これからもここにいるあなたと一緒に人生を歩んでいきたいなと思います」
願いでも誓いでもあるこの言葉を後押しするように「一から」がほとばしる。その瞬間、彼らがこのライブのタイトルに冠した“大人になること”とはつまり“生きていくこと”なのだと唐突に理解した。遮二無二、日常を生き抜いて、その日々を必死に積み上げていくこと。それは青春そのものであるとも言えないだろうか。望む望まずに関わらず、人はいつか大人になる。大人になってもなお胸の内に褪せない“青さ”を抱き続けられたらいい。そんなことも思う。
本編ラストはやはりデビューシングルのタイトル曲「青春のすべて」が飾った。昼間のタワーレコードで彼らから受け取った“青いアイスキャンディー”の味が甦ったオーディエンスも少なからずいただろう。“青春の行方を追いかけていたいんだ”と叫び、“僕らいつだって ここで今を生きている”と声を尽くして歌い上げ、最後に山内は「今を、今を生きろ」とひと言残し、メンバーとともにステージを降りた。実は冒頭のベーストラブルのみならず、中盤にも細川のハイハットが割れるハプニングがあったのだが、それらも込みで実に瑞々しい、Shout it Outらしいライブだったのではないだろうか。
アンコールでは「ギターと月と缶コーヒー」の披露後、メンバーから寿司が大好物だという山内にバースデー巨大寿司が贈られるというサプライズ企画も。フロアが祝福ムードに沸き返る中、「まだ涙腺が緩くなる歳ではないので泣きはしませんが」とうそぶきつつ、「カッコいいこと言おうと思ってたのに忘れた」と照れ隠しのように山内はギターをかき鳴らし始め、「4人で始めたバンドが4人だけのものじゃなくなって、気づけばこんなにたくさんの人と一緒に音楽をして歩いてきました。こんなに幸せなことは他にありません。これからもどうか一緒に歩いていってください」とオーディエンスに告げた。オーラスに朗々と鳴り渡る「光の唄」。それは間違いなくShout it Outの未来を照らす歌だった。
【取材・文:本間 夕子】
【撮影:本多大介(A.K.A.)】
リリース情報
青春のすべて
2016年07月06日
ポニーキャニオン
M2 列車
M3 一から
Bonus track ギターと月と缶コーヒー
セットリスト
Shout it Out ワンマンライブ〜大人になること〜
2016.7.10@渋谷CHELSEA HOTEL
- 1.opening
- 2.青
- 3.風を待っている
- 4.あなたと、
- 5.雨哀
- 6.列車
- 7.Teenage
- 8.生きている
- 9.17歳
- 10.トワイライト
- 11.ハナウタ
- 12.花になる
- 13.星降る夜に
- 14.一から
- 15.逆行
- 16.若者たち
- 17.青春のすべて
- en1.ギターと月と缶コーヒー
- en2.光の唄
お知らせ
音エモン presents 「HOT!! LIVE BURGER」
2016/07/22(金) あべのROCKTOWN
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2016/07/24(日) 大分club SPOT
2016/07/26(火) 小倉FUSE
2016/08/19(金) 小田原姿麗人
ツタロックDIG 「LIVE!!」 Vol.03
2016/07/28(木) TSUTAYA O-nest
Shout it Outワンマンライブ〜一から〜
2016/08/01(月) 愛知APOLLO BASE
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2016/08/03(水) 新宿LOFT
2016/08/30(火) 池下 CLUB UPSET
2016/08/31(水) OSAKA MUSE
GLICO LIVE “NEXT”
2016/08/04(木) Music Club JANUS
ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016
2016/08/07(日) 国営ひたち海浜公園
SUPER BEAVER 『27』 Release Tour 2016〜27こぶ、ラクダ〜
2016/09/03(土) KYOTO MUSE
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2016/09/15(木) Music Club JANUS
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2016/09/30(金) 渋谷eggman
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。