SUPER BEAVER柳沢亮太プロデュース、Shout it Outメジャーデビューシングル『青春のすべて』

Shout it Out | 2016.07.04

 「みんなが“死にたい”って言うんやったら、俺がそれを越えるぐらい“生きる”っていう単語を吐いてやろうと思った」。7月6日にメジャーデビューする大阪・堺発の4人組Shout it Out(略してシャリラ)がデビューシングル『青春のすべて』で歌うことは、その一点だ。10代限定のオーディション「未確認フェスティバル2015」で3度目にしてグランプリを獲得した彼らは、短いキャリアながらも悔しさを乗り越えてここまで来た。10代最後の年にメジャーデビューを掴んだ彼らが、憧れの先輩バンドSUPER BEAVERの柳沢亮太をプロデューサーに迎えて描いた“青春”とは? バンドを代表して、山内彰馬(Vo・G)と細川千弘(Dr)の二人に話を訊いた。

EMTG:いまふたりは19歳なんですよね。
細川千弘(Dr):ベースのたいたいだけ先に20歳になりました。
山内彰馬(Vo ・G):僕はもうすぐ20歳になります。
EMTG:音楽を始めたのはいつ頃からだったんですか?
細川:僕は小学5年生のときです。上に姉と兄がいるんですけど、ふたりとも弦楽器をやってたから、僕はドラムをやろうと思ったんです。中学校の文化祭とかでライブをやっててモテてたんですよね(笑)。それで羨ましいなと思ったんです。BUMP OF CHICKENとかRADWIMPSのコピーとかをずっとやってましたね。
山内:僕も小学校5年生のときにギターを始めたんですけど、全然弾けるようにならんくってすぐに挫折したんです。幼稚園のときから音楽をやる人になりたくて、最初は公園で弾き語りをしてるお兄ちゃんに憧れてたからシンガーソングライターになりたかったんですよ。それが小5ぐらいからRADWIMPSとかフラワーカンパニーズとかも聴くようになってバンドをやりたいなと思うようになりました。
EMTG:シャリラと言えば「未確認フェスティバル2015」でグランプリを獲得したことで注目を集めたわけですけど、ようやく3回目で勝ち取ったというのは執念ですよね(※過去2年は前身となる「閃光ライオット」出演)。
山内:初めて出たのが高校2年生の春だったんですけど、井の中の蛙だったんですよ。周りの軽音部のバンドがコピーバンドをやってるなかで、僕らはオリジナル曲をやってるだけで頭ひとつ飛び抜けた気分だったんです。「いけるんじゃないか!?」とか思ってたんですけど、スタジオ審査で落ちました。審査員の前で演奏をするんですけど、噂で審査員が気に入ったバンドは2曲演奏させてもらえるっていうのを小耳に挟んでたんです。でも、僕らは1曲しか演奏させてもらえなかったんですよ。「なるほど、世界は広いな」と。
EMTG:結果を聞く前からダメなのがわかったんですね。
山内:だから悔しくてリベンジしたんですけど、2年目はスタジオ審査の次のライブ審査までいって負けてしまって。当時、仲が良かったバンドも2組出てたんですけど、その2バンドは決勝までいったんですよ。それがもうびっくりするぐらい悔しくて。僕は新木場のスタジオコーストまで決勝を見に行ったんですけど、そのうちの1バンドが準グランプリをとったんです。それも実はめっちゃ悔しかったんですね。
EMTG:そこから3回目のチャレンジに挑むわけですね。
山内:こいつらを超えるにはグランプリを獲るしかないなと思ったんです。でも19歳で最後の年だから、これで負けたらさすがに立ち直れないだろうなっていうのもあって、すごく迷ったんですよ。だけど周りの説得や鼓舞もあって応募して。そこからはグランプリを獲るしかないっていう一心でしたね。だから、「未確認フェスティバル2015」が1回目の挑戦だったら、ここまで走り切ることはできなかったと思います。2回負けてるっていう自分にとっての燃料があったからこそ、できたことだと思いますね。
EMTG:しかもグランプリの賞金100万円を使ってO-EASTで無料のライブをやったというのも驚きました。ふつうは次のCD制作とかにあてるものじゃない?
山内:実際にグランプリを獲る前は、たしかにCDを作ろうと思ったんですよ。でも獲ってみて、当日決勝に来てくれてた人の存在をステージの上から確認して気持ちが変わったんだと思います。「未確認フェスティバル」は、ラジオ番組『SCHOOL OF LOCK!』が主催しているオーディションじゃないですか。だから、決勝を見に来てくれた人のなかには普段ライブハウスに行かないラジオリスナーも多かったみたいなんです。それで、せっかくだからそこで出会った人たちをライブハウスに引き込みたいなと思ったんです。そしたら一晩で100万円がなくなりました(笑)。
EMTG:でも悔いはない?
山内:そうですね。CDを作らなくて良かったって言ったらアレですけど。やっぱり僕たちはライブをやりたいなっていう。自分たちのやりたいことを再確認できたんです。
細川:正直、会場は超パンパンにはならなかったんですよ。ある程度お客さんは入ってくれて良い感じだったんですけど。そこもShout it Outらしくて良かったかなって話しているんです。
山内:1個1個、課題を残していく感じだよね。
細川:今度はパンパンにしたいなとか、そういう目標もできましたね。
EMTG:そうやってバンドで一喜一憂してきたからこそ、今回のメジャーデビューシングル『青春のすべて』みたいな熱い曲ができたんだろうなって思います。
山内:そうかもしれないですね。
EMTG:今作にはSUPER BEAVERの柳沢さんがプロデューサーに入っていて、もともとすごく好きだったそうですけど、どういうところに惹かれてたんですか?
山内:時代に流されずに自分たちの信じることをやってる姿勢というか。あとは言葉の力強さですね。力強いのと、優しいのと、その両方を要素を持ってると思うんです。初めてライブを見たのはサーキットイベントで、事前に音源は聴いたことがなかったんですけど、度肝を抜かれました。そこからチケットを買ってライブに通うようになったんです。
細川:ボーカルの渋谷さんはメジャーで感じたこととかも全部ブログにあげてるんですよ。赤裸々にファンに向けて発信してて。だからこの人たちは完全に嘘がないんだなと思ったんです。そうやって言葉の力をガッと発信するのは彰馬も受け継いでいると思います。SUPER BRAVERみたいな信念を貫けるバンドになれたらなっていうのは常に目標にしてますね。
EMTG:ビーバーは一度メジャーで苦い経験をして、インディーでやることを選んだバンドじゃないですか。それを知ったうえでシャリラはメジャー進出をどう捉えてる?
山内:僕らが学生のときに聴いていたバンドってほとんどがメジャーにいるバンドだったんです。だから、あそこまで大きくなるためにはメジャーにならないとっていうのは自然な思考だったんですね。でも、いざバンド活動をしていると、やっぱりメジャーに行くことへの恐怖も感じるようになって。だから、デビューのタイミングで誰かにプロデュースをお願いするのであれば、現役のミュージシャンがいいって言ったんです。しかも一度メジャーを知ったにも関わらず、今あれだけかっこいい音楽をやってるSUPER BEAVERのヤナギさんだったら、きっと僕らの不安を理解してくれて、良い方向に導いてくれるんじゃないかと思ったんです。
EMTG:柳沢さんもプロデュースは初めてだと思うんだけど、どんな感じでした?
山内:僕が特にお世話になったのは歌詞の面でしたね。本当に悩んでて。「青春のすべて」はこのシングルのなかでいちばん最初に作った曲だったのに、レコーディングの前日まで悩んでたんです。それで「悩んでるんです」ってヤナギさんに連絡したら、「じゃあ、今から行くわ」って来てくれて、カフェで3時間ぐらい相談にのってくださったんです。すごく目線を合わせて、近い位置でやってくださったから信頼できましたね
細川:プロデューサーって音のやりとりを全部打ち込みとかでやるのかと思ってたんですけど、ヤナギさんはスタジオに何回も一緒に入ってくれたんですよ。僕らは演奏してると勢いでテンポが走っていくところもあったんですけど、そういうのもバンド感だから大事にしようって残してくれてるところがあって。本当にプロデューサーというより、バンドマンの先輩として傍にいてくれました。
EMTG:じゃあ一緒にできて良かったですね。
山内:本当にそう思います。『青春のすべて』っていう、今回の4曲入ったシングルがどうこうなったというよりは、柳沢さんというプロデューサーの力でShout it Out自体が変わったというか。バンドとしてレベルアップさせてもらったなと思ってます。
EMTG:今回のシングルは「青春のすべて」が表題曲ではあるんだけど、カップリングの「列車」も「一から」も全体としてひとつのメッセージを感じたんです。
山内:はい、そうですね。
EMTG:それは“生きる”とか“昨日とか明日はすべて今日と繋がってる”とか、そういうメッセージなんだけど、Shout it Outがメジャーデビューシングルを作るにあたって、何かひとつのメッセージを貫こうみたいな意図はあったんですか?
山内:シングルっていう多くない曲数だからこそ何か芯の部分を持たせないと、ブレると思ったんです。だから最初からそういうテーマでやろうっていうのは決めてました。このテーマになったのは、僕らの同世代といわれる10代から20代前半の人ってSNSとかTwitterで、すぐ「死にたい」とか書くんですよね。それが良くない流れだなと思って。だから意地というか。みんなが「死にたい」って言うんやったら、俺がそれを越えるぐらい「生きる」っていう単語を吐いてやろうと思って。そういうテーマで作ったんです。
EMTG:その「死にたい」っていう想いは、同じ10代として共感はできなくても、どこか理解できる部分はあったりする?
山内:僕も書かないだけで、死が身近なものになってるのはわかりますね。
細川:僕も「死にたい」ってわかるんです。でも、彰馬がすごいなと思うのは、このメジャーデビューっていう、いろんな人に聴いてもらえるタイミングで、「生きる」っていう言葉を「死にたい」の数だけ吐いてやろうと思えることですよね。今回は全曲に「生きる」っていう言葉が入ってて。こいつなら同世代の代弁者というか、そういう存在になれてるんじゃないかなと思ってるんです。
EMTG:細川くんから見て、山内くんはどういうフロントマン?
細川:こいつは完全に天才肌だと思ってます。声とか歌唱力もそうですけど、歌詞の言葉選びもすげえセンスがある。彰馬はいましか書けないことを書こうってずっと言ってるんです。だから、僕らは今若さを武器にしてて、それがなくなったらどうするんだ?とかいろんな人から言われるんですけど。でも、全然心配してないです。彰馬はいましか書けない歌をこれからもずっと書いていくし、僕はそれを信じてやっていくだけだから。
EMTG:そうだね。30歳の山内くんが何を歌うか楽しみでもある。
山内:全然、想像できないですけどね(笑)。
EMTG:今回はプロデューサーに入ってもらう以外にレコーディングで今までと変わったところはありましたか?
山内:気持ち的な面を除くと、あえて変えないようにしたんです。急に背伸びをして新しいことをやっても、自分たちの曲に対するリアリティーが変わるんじゃないかなと思ってて。前作(「僕たちが歌う明日のこと」)はストリングスを入れてみたりもして、それも失敗だとは思ってないけど、今回は原点回帰というか、本当にバンドの音しか入れてないですね。
細川:僕らはずーっとそうなんですけど、今回も全曲「せーの」で音を鳴らして録ってるんです。4人が一斉に鳴らした塊っていうのを音源にしたいと思ってて。だから4曲目の「ギターと月と缶コーヒー」は、楽しくキャンプファイヤーを囲みながら4人で演奏してる感じを出そうって話から、レコーディングスタジオの照明も全部落としてるんですよ。曲ごとの風景とかも全員が意識してるんですよね。たとえば「青春のすべて」だったら、青空というよりも曇り空なんだっていうイメージを彰馬からもらったり。
山内:ケータイで曇り空の画像を出して「これで!」ってね。
EMTG:「青春のすべて」は曇り空? 真っ青な空が広がる感じかなと思ったんですけど。
山内:たしかに「青春のすべて」っていうタイトルから、爽やかでキラキラしたものを浮かぶと思うんですけど。もちろん、そういうものを描くのもわかるんですよ。映画とかドラマで描かれるのは、そういうものだし。でもどちらかと言うと、それはリアルタイムというより、過去を振り返った青春なんですよね。リアルアイムで19歳を生きていると、たとえば夜中に部屋を暗くしたあとに襲ってくる憂鬱だとか葛藤だとか。そういうものがリアルタイムで書ける「青春」だと思うんです。だから青空というより曇り空。
EMTG:すごく狭い世界で葛藤してたのが青春なんだったよね、そう言えば。わたしはアラサーだから完全にこの曲は青空だったけど(笑)。
細川:たぶん、いまリアルで10代の人は青春は曇り空なんだと思うんです。
EMTG:つまり曇り空の青春をちゃんと表現できるのが、Shout it Outというバンドということですね。
山内:まあ、俺もドラマとか映画では曇り空の青春は見たくないですけどね(笑)。そこはちゃんと青空であってほしい。でも、僕らがバンドで表現したいのは“いま”だから。そういうものがリアルに感じられるうちに、この感覚を曲にしておこうと思ったんです。

【取材・文:秦 理絵】

tag一覧 シングル 男性ボーカル Shout it Out

ビデオコメント

リリース情報

青春のすべて

青春のすべて

2016年07月06日

ポニーキャニオン

M1 青春のすべて
M2 列車
M3 一から
Bonus track ギターと月と缶コーヒー

お知らせ

■ライブ情報
Shout it Out ワンマンライブ
2016/07/05(火) 堺Tick-Tuck
2016/07/10(日) 渋谷チェルシーホテル

スペースシャワー列伝 第131巻 〜朔弦望(さくげんぼう)の宴〜
2016/07/06(水) shibuya WWW

UCHU FES 2016
2016/07/16(土) 服部緑地野外音楽堂

音エモン presents 「HOT!! LIVE BURGER」
2016/07/22(金) あべのROCKTOWN

Rhythmic Toy World ツアー 2016 『「HEY!」の「HEY!」による「HEY!」の為のツアー』
2016/07/24(日) 大分club SPOT
2016/07/26(火) 小倉FUSE
2016/08/19(金) 小田原姿麗人

ツタロックDIG 「LIVE!!」 Vol.03
2016/07/28(木) TSUTAYA O-nest

Shout it Outワンマンライブ〜一から〜
2016/08/01(月) 愛知APOLLO BASE

Shout it Out presents 『虎の威を借り、狩られる狐?東京編?』
2016/08/03(水) 新宿LOFT
2016/08/30(火) 池下 CLUB UPSET
2016/08/31(水) OSAKA MUSE

GLICO LIVE “NEXT”
2016/08/04(木) Music Club JANUS

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016
2016/08/07(日) 国営ひたち海浜公園

SUPER BEAVER 『27』 Release Tour 2016〜27こぶ、ラクダ〜
2016/09/03(土) KYOTO MUSE

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る