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アリーナツアー追加公演、back number「ミラーボールとシャンデリア」日本武道館1日目を完全レポート!

back number | 2016.08.02

 「武道館、久々に来たけど、すごい造りだね。この建物を建てた建築業者に感謝します。すごい近いです」という清水依与吏(V&G)の発言がバンドの成長を端的に象徴していた。武道館を広いと感じていないからこそ、そして一体感あふれる空間が出現したからこそ、そんな言葉が飛びだしたのだろう。今年の1月24日からホールツアー、6月4日からアリーナツアーを回ってきた彼らだが、その追加公演が武道館2daysを含む3公演というところからも快進撃を続けるバンドの充実ぶりがうかがえる。ここではその武道館公演の1日目となる7月14日のステージの模様をレポートしていこう。

 開演前のステージには幕がかかっていて、中は見えない。ピアノの叙情的な調べとミュートのトランペットが印象的なオープニングSEが始まると、幕の内側からブルーの光に照らされたミラーボールが浮き彫りになっていく。メンバーのシルエットが幕に映し出されて、歓声が起こる中で始まったのは「Liar」だった。疾走感あふれるソリッドな演奏に観客がハンドクラップで参加していく。幕が開き、清水が「武道館~!」と叫ぶと、大きな歓声が上がった。ステージの両サイドに大きなLEDスクリーンがあり、さらにステージの後ろには額縁のような枠で複数に区切られたLEDスクリーンがある。それらの画面に気迫あふれるプレイをしているメンバーが映し出されている。センター後方には栗原寿(Dr)、上手に清水、下手に小島和也(B&Cho)、さらにはサポートで村田昭(Key)、矢澤壮太(AG・Cho)、藤田顕(G)が加わる6人編成。バンドの生み出す強靱なグルーヴに体が揺れる。ホールツアーとアリーナツアーを経て、バンドは確実にスケールアップしていた。観客を巻き込んでいくパワーがすさまじい。「青い春」では清水が「踊れ~!」と叫び、小島が飛び跳ねて、観客もジャンプしている。「SISTER」ではさらにそのうねりが大きくなっていく。跳躍が高くて、反応がよりダイレクトであると感じたのは、おそらく若い観客が多いからだろう。

 1曲ごとにイントロが演奏された瞬間に大きな歓声が起こる。待ち望まれている曲がたくさんあるということが客席の反応からもはっきりわかる。彼らがデビューしたのは2011年。それから5年あまり、ただひたすら、いい曲を作り続けることで、バンドは力を蓄えて、着実に大きくなってきた。ステージの最大の推進力となっていたのは彼らが生み出した名曲の数々だ。セミの鳴き声のSEに続いて、青空の映像が映り、空がオレンジ色に染まり、日が暮れて星が輝き、夏祭りの夜店の映像が映し出されて、ピアノのイントロが始まった瞬間に悲鳴にも似た歓声が起こったのは「わたがし」だった。思いを深く込めていくような歌と演奏に観客が聴き入っている。時には丹念に繊細に、時には激しく大胆に。曲ごとにその世界観をしっかり描き出していくメンバーの集中力は最初から最後まで途切れることがない。

 「明日のことは考えないよ。明日に体力を残そうなんて考えないよ。だって明日は明日のオレが頑張るから。一生懸命作った曲を一生懸命やるしか出来ないんですが、最後まで楽しんでください」と清水。カップリング曲やアルバム収録曲にもシングル曲と同じくらいの大きな歓声が起こるのがback numberのライブの大きな特徴だ。つまりシングル以外にも名曲がゴロゴロ転がっている。バンド史上最長タイトルが付いた「僕は君の事が好きだけど君は僕を別に好きじゃないみたい」もそうしたナンバーのひとつ。打ち込みも交えながら、栗原が力強いドラムを刻んでいく。会場内のハンドクラップが加わって、温かな空気が漂っていく。柔らかな清水の歌声からじわりとせつなさがにじむ。

 back numberのラブソングがリアルに届いてくるのは誰もが共感できる普遍的な思いが描かれているからだろう。ハッピーな歌はそんなに多くはない。「思い出せなくなるその日まで」「君がドアを閉めた後」など、たくさんの失恋ソングが演奏された。清水がアコースティックギターをつまびき、“君が帰ってくればいいのに”という一節を口ずさみ、ピアニカが加わって始まった「君がドアを閉めた後」では深い喪失感が染みてきた。この曲の後半ではバンドのダイナミックな演奏が加わり、パーソナルでありながら、とてつもなく大きな歌として響いてきた。back numberの歌が後ろを振り返るだけで完結しないのは過去としっかり対峙して、情けない自分、ふがいない自分を誤魔化したり美化したりすることなく描いているからだろう。後悔することは無駄な行為ではなくて、よりよい自分、よりよい未来をもたらす原動力になっていくこともあるのではないか。そう感じてしまったのは彼らの音楽の根底に成長への強い意志が宿っているから。そして彼らが失恋ソングを歌いながらもロックバンドであり続けているからだ。 「悲しい曲が続いたね。悲しいブロックでした。よく耐えてくれました」と清水。さらに「曲の聞こえ方も響き方も違うと思うんだよ。いろんな曲があるし、いろんな状況の主人公が出てくるので、自由に楽しんでくれたら」との発言もあった。ツアー・タイトルとなっている『MIRRORBALL and CH△NDELIER』は最新アルバムのタイトルが『シャンデリア』であること、そしてその新作の中に「ミラーボールとシンデレラ」という曲が収録されていることなどから付けられたのだろう。その「ミラーボールとシンデレラ」は大小6個のミラーボールがきらめく中での演奏。さらに情けない自分、ふがいない自分を誤魔化したり美化したりすることなく描いているからだろう。後悔することは無駄な行為ではなくて、よりよい自分、よりよい未来をもたらす原動力になっていくこともあるのではないか。そう感じてしまったのは彼らの音楽の根底に成長への強い意志が宿っているから。そして彼らが失恋ソングを歌いながらもロックバンドであり続けているからだ。

 夕焼けが描かれた水彩画の映像をバックにして歌われた「東京の夕焼け」では叙情が滲む歌がいい感じだった。1曲ごとに風景だけでなく、空気もガラッと変化していく。夏に突入しようかというこの時期に、突然、会場内に冬の澄んだ冷気が漂ったのは「ヒロイン」。スクリーンに雪の映像が映し出されている。アコギを弾きながらの清水の温かみのある歌がじわじわと染みこんでくる。小島のベースと栗原のドラムからも体温が伝わってくる。さらに冬の季節感のまま、「クリスマスソング」へ。三重になった円形の照明がまるでシャンデリアのように輝いている。back numberワールド全開。せつなさといとしさが会場内に充満していく。せつない名曲に続いて、またせつない名曲。こんなにせつなさが波状攻撃を仕掛けてくるコンサートはそうはない。現時点での最新シングル「僕の名前を」でのエモーショナルな歌声も胸に深く入ってきた。歌の中に詰まっている感情の搭載量がとてつもない。この曲の最後は清水のギターでのフィニッシュ。このギターのストロークも不思議な余韻を残していく。

「1曲1曲の消費カロリーが高いな。結構歌ってきたんですが、お気に入りの曲、あったでしょうか?まわりから“好きだ”って言われる曲がバラけてて。嬉しいんですが、セットリストを作るのが大変です。今83曲あって、もうすぐ84人目が産まれます」というと、客席から「歌って!」との声が上がる。その84曲目となる8月1日にデジタルシングルとしてリリースされる新曲「黒い猫の歌」のさわりの部分を清水が弾き語りで紹介する場面もあった。さらに「今日は『花束』はやりません」というと、「え~!」と声が上がって、弾き語りで「花束」を1コーラス歌うサービスもあった。「高嶺の花子さん」では観客のシンガロングに清水が「いいね!」と言い、小島も栗原も笑顔を浮かべていた。せつない歌なのに、みんなで共有することで、楽しい空間が出現していく。これはback numberならではだろう。本編ラストの「スーパースターになったら」では銀テープが舞い、会場内がはげしく揺れた。パーソナルなラブソングという解釈も出来るが、こういう場面で歌われると、バンドからリスナーへの約束の歌のようにも響いてくる。「お前ら、愛してるぞ~!」と清水が叫んでいる。バンドが大きく成長していくほどに、会場も大きくなっていく。その進歩の過程と「スーパースターになったら」という歌の歌詞とが見事にリンクしていた。

 「楽しいし、嬉しい1日になりました。すごく幸せな空間になって、ありがたいと思っています」という清水のMCに続いて、アンコールの1曲目で「アップルパイ」が演奏された。本編はせつない歌がたくさん演奏されたが、アンコールではほんわかムードが漂った。さらに親への感謝の思いが描かれたヒューマンな「手紙」、コミカルな「そのドレスちょっと待った」でフィニッシュ。せつない歌をたくさん聴いた夜なのに、体の中にはなぜか温かなエネルギーがたくさん蓄積された。
 「多分、これからもなんであの子はオレのことが好きじゃないんだとか、なんで自分たちの思いどおりにならないんだろうっていうようなちっちゃなことばっかり歌っていくと思いますが、良かったら横にいさせてください」との清水からの言葉もあった。最新アルバム『シャンデリア』のインタビュー時に清水は「僕らは誰かがスイッチを押したり、エネルギーを注いでくれたりしないと、光れないシャンデリアみたいなものなんです」と語っていた。その言葉どおり、彼らが生み出した歌の数々はリスナーによって光り輝いていた。エネルギーを注がれて輝くシャンデリア、そして光を当てられてキラキラ輝くミラーボール。バンドがシャンデリアで、観客がミラーボールなのか。それともバンドがシャンデリアであり、ミラーボールでもあるのか。考え出すと、ややこしくなってくるが、ひとつ確かなのは音楽と光は似ているということだ。それを浴びるとポカポカしてくることを実感した夜だった。

【取材・文:長谷川 誠】
【撮影:半田安政(Showcase)】

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リリース情報

黒い猫の歌[配信]

黒い猫の歌[配信]

2016年08月01日

ユニバーサル シグマ

1.黒い猫の歌
2.黒い猫の歌 (instrumental)

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セットリスト

『back number tour 2016 "ミラーボールとシャンデリア"』
2016/07/14@

  1. Liar
  2. 泡と羊
  3. 青い春
  4. SISTER
  5. わたがし
  6. 僕は君の事が好きだけど君は僕を別に好きじゃないみたい
  7. いつか忘れてしまっても
  8. 思い出せなくなるその日まで
  9. 君がドアを閉めた後
  10. サイレン
  11. ミラーボールとシンデレラ
  12. MOTTO
  13. 半透明人間
  14. 助演女優症2
  15. 東京の夕焼け
  16. ヒロイン
  17. クリスマスソング
  18. 僕の名前を
  19. Hey!Brother!
  20. 高嶺の花子さん
  21. スーパースターになったら
Encore
  1. EN01.アップルパイ
  2. EN02.手紙
  3. EN03.そのドレスちょっと待った

お知らせ

■ライブ情報

one room party vol.3
2016/09/29(木)【宮城】チームスマイル・仙台PIT
2016/10/01(土)【東京】新木場Studio Coast
2016/10/03(月)【愛知】ZEPP名古屋
2016/10/06(木)【大阪】なんばHatch
2016/10/08(土)【広島】BLUE LIVE HIROSHIMA
2016/10/13(木)【福岡】福岡DRUM LOGOS
2016/10/15(土)【香川】高松festhalle
2016/10/20(木)【東京】豊洲PIT
2016/10/24(月)【新潟】新潟LOTS
2016/10/27(木)【北海道】札幌 PENNY LANE 24
2016/10/28(金)【北海道】札幌 PENNY LANE 24
※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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