THE NOVEMBERS、結成11年のバンドの歴史を織り込みながら未来へと繋いだ、11th Anniversary & 6th Album Release Live 「Hallelujah」。
THE NOVEMBERS | 2016.11.30
THE NOVEMBERSというバンド名にしたのは、文字にした時きれいだったからで、深い意味はなかったと小林祐介(Vo・Gt)は言っていたけれど、このバンド名にしたことで生まれたこだわりが、11月11日にライブをやることだった。しかも今年は結成11年目。「11年目の11月11日は1回しかない」と小林も言っていたこの日、新木場STUDIO COASTに集まったオーディエンスのためにTHE NOVEMBERSは、とびきりのライブをやってみせた。
「今日は来てくれてありがとう。じゃあ、始めます」と小林祐介が挨拶をし、始まったのは最新作のリードトラック「Hallelujah」。軽やかなギターリフとハイトーンのボーカルが、くすぐるような浮遊感を生み出していく。新作でTHE NOVEMBERSが示した新境地は、ライブでも魅力的だ。続けてシャープな「風」。爽やかなブルーの照明が4人を照らし、フロアに広がった。次第に熱を帯びていく演奏が「1000年」の起伏を大きくし、THE NOVEMBERSらしいダークサイドを覗かせると、小林のシャウトにオーディエンスが手を上げて応えた。新作で最もパンキッシュな「!!!!!!!!!!!」では歪んだギターと小林の絶叫が絡み合い、点滅するライトの中でカオスを作り出す。そのカオスを更に混沌とさせた「Xeno」は、いつにも増してノイジーで、フロント3人が体を揺らして演奏する姿を、巨大なミラーボールが高速で回転しながら照らした。
爆音での演奏が終わった後の張り詰めたような静寂。THE NOVEMBERSのライブでは、そんな瞬間がしばしば訪れる。その空気を動かすのは「愛はなけなし」のイントロだ。爪弾くギターの音と乾いたドラム、抑え気味のヴォーカルが愛の不条理を歌い出すと、おおらかな空気が流れた。風通しの良い新曲が続く。美しいギターリフが重なり合う「ただ遠くへ」、ソリッドなビートに乗って高揚していくボーカルが圧倒的な「時間さえも年老いて」は、彼ら本来の熱量を感じさせた。その高揚感を更に増幅した「236745981」は2年前の作品『Rhapsody in beauty』収録曲だが、あの頃より一段とスケールアップした演奏になっていた。 「未来について歌った曲」と小林が紹介した「GIFT」はおおらかなメロディが印象的な曲だ。「まだ、これから」と繰り返す歌が、おおらかだからこその緊張感を伝えてくる。弛緩することなく続いた「ブルックリン最終出口」はシングル「今日も生きたね」のカップリング曲だが、柔らかなメロディは「GIFT」から自然につながった。エンディングは歪ませたギターリフで新味を加え、ポップな「きれいな海へ」を導いた。テンションは保ちながらメロディアスな歌をしっかりと聴かせ、一体感のある演奏で包み込む。この3曲は、明快にTHE NOVEMBERSのそうした面を伝えるパートだった。
だが、それだけではないことを誰よりも彼ら自身が知っている。「ガンガン行きましょう」と小林が声をかけ、ノイジーなギターを鳴らして「鉄の夢」を始めると、フロアが大きく揺れた。一瞬のブレイクが温度を上げ、演奏もスケールアップする。ダイナミックなドラムが響きギターが重なる「dysphoria」は、小林のシャウトとスキャットが反復するコードに潜む感情を吐き出し、ケンゴが全身でギターを弾いて共鳴した。オーディエンスの上げる腕が林のようなシルエットを描き、「Blood Music.1985」のタイトなイントロに歓声が起こると、バンドも更にヒートアップ。長身のフロント3人が大きく体を揺らしてギターとベースを鳴らし、ドラムもそれに呼応する。このバンドならではの美しいノイズが渦巻くと、「こわれる」に。小林の振り絞るようなシャウト、スピート感のあるギター、タイトなリズムが一つとなり、光の中で4人の影が揺れた。そして最新作の「黒い虹」は、カラフルなライティングの中で響く心のダークサイドが痛快な情景となった。こんな空間を作れるのはTHE NOVEMBERSしかいない。荒々しくも美しい、このバンドの美学が、この日最高に炸裂した瞬間だった。
再び轟音から静寂が訪れた時、「今日11月11日、結成11周年、足を運んでくれてありがとう。どこかに到達したとかより、まだこれからという気持ちで、最後に1曲」と小林が告げた「美しい火」。アコギを持って穏やかに歌う小林からは一つの達成感のようなものが感じられた気がした。
アンコールに応えて一人でステージに現れた小林が、「後で皆も来るので」と言わずもがなの説明をして一人で歌った「あなたを愛したい」も、この夜の記憶に残る1曲だった。爆音ギターでの弾き語りはヴォーカリストとしての彼を改めてクローズアップすると同時に、3人の存在を感じさせるものでもあった。バンドとはそういうものなのだろう。そして他の3人もステージに現れると、「たぶん一生やらないと思うけど」と加入した順にメンバーを紹介。「マイメン」と呼んだギターのケンゴマツモト、「たぶんいまテレパシーか何かで、未来は俺らの手の中と言ったと思う」と小林が付け加えたのは、THA BLUE HERBへのオマージュとも思えず、さてどういう意味だったのか。ドラムス吉木諒祐は「僕らTHE NOVEMBERSの、優しさ」と言い、ベース高松浩史は「リーダー。僕と人生半分一緒にやってます」と紹介した。「そしてボーカル&ギター小林です。THE NOVEMBERSです」と自己紹介もして、大きな拍手を4人に送ったオーディエンスに「いい時間を過ごして、いい未来で会いましょう」と言葉をかけると、「いこうよ」。張りのあるボーカルと幻想的な演奏でいくべき未来を示した。
ダブルアンコールは「今日も生きたね」。小林自ら「アンセム」と呼ぶ、ゆったりとしたテンポで感情を昇華させていくようなこの曲は、フィナーレではなく次への布石のように思えた。11年のバンドの歴史を織り込みながら未来へと繋いだ、11th Anniversary & 6th Album Release Live 「Hallelujah」。未来は確かに彼らの手の中にある。
【取材・文:今井 智子】
【撮影:Yusuke Yamatani】
リリース情報
Hallelujah
2016年09月21日
MAGNIPH/Hostess
2.黒い虹
3.1000年
4.美しい火
5.愛はなけなし
6.風
7.時間さえも年老いて
8.!!!!!!!!!!!
9.ただ遠くへ
10.あなたを愛したい
11.いこうよ
セットリスト
11th Anniversary & 6th Album Release Live 「Hallelujah」
2016.11.11@新木場STUDIO COAST
- 1.Hallelujah
- 2.風
- 3.1000年
- 4.!!!!!!!!!!!
- 5.Xeno
- 6.愛はなけなし
- 7.ただ遠くへ
- 8.時間さえも年老いて
- 9.236745981
- 10.GIFT
- 11.ブルックリン最終出口
- 12.きれいな海へ
- 13.鉄の夢
- 14.dysphoria
- 15.Blood Music.1985
- 16.こわれる
- 17.黒い虹
- 18.美しい火
- En1.あなたを愛したい
- En2.いこうよ
- En3.今日も生きたね
お知らせ
FOREVER ※小林祐介ソロ出演
2016/12/3(土) 渋谷 7th FLOOR
RUDE GALLERY & SEXY STONES RECORDS 16TH ANNIVERSARY PARTY
浅井健一&THE INTERCHANGE KILLS / THE NOVEMBERS
2016/12/6(火) 渋谷CHELSEA HOTEL
BIG-O 60~大還暦祭~ ※小林祐介ソロ出演
2016/12/15(木) 下北沢CLUB Que
11th Anniversary & 6th Album Release Tour - Hallelujah -
2016/12/17(土) 台北The Wall
2016/12/18(日) 香港Hang Out
THE NOVEMBERS&cinema staff presents「想像上の首 」
2016/12/28(水) 新代田FEVER
Crypt City presents
2016/12/29(木) 新代田FEVER
BODY -20170113-
2017/01/13(金) 代官山UNIT
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。