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TRICERATOPS、初のアコースティックツアー最終日をレポート!

TRICERATOPS | 2017.01.04

 TRICERATOPSにとって、初のアコースティックツアーの本公演の最終日となる2016年12月4日のZepp DiverCityは、3ピースバンドの表現の可能性を広げていく見事なステージとなった。ジャズのエッセンスも取り入れていて、粋でジャジーでソウルフルでファンタジックな空間が出現していく。と同時に、アコースティック編成でありながら、体で楽しめる音楽としても成立している。時にはグルービーに、時にはスイングしつつ、彼らは観客を音楽の魅惑の旅へと誘っていた。

 メンバーが登場した瞬間からいつもとは景色が違っていた。通常は上手に和田 唱(Vocal & Guitar)、中央奥に吉田佳史(Drums & Backing Vocal)、下手に林 幸治(Bass & Backing Vocal)がいるのだが、この日は上手から和田、林、吉田が横一列に並んでいる。アコースティックツアーということで使用楽器も違う。和田はフルアコースティックエレキギーとアコースティックギター、林はアコースティックベース、吉田はブラシなども駆使しつつの演奏だ。

 オープニングナンバーはフランク・シナトラの「Come Fly With Me」のカバーだった。元々この曲は世界旅行がテーマとなった1960年代のナンバー。つまりこの夜のTRICERATOPSの音楽の旅の始まりを告げる曲にもなっていた。和田のスイートな歌声とフルアコのソフトなクリーントーン、林の温かみと深みのあるベース、吉田の柔らかさと軽快さとしなやかさを備えたドラムが一体となって、観客をドリーミーな世界へと誘っていく。「PUMPKIN」も音楽の魔法が強くかかったようなファンタジックな演奏がいい。林と吉田によるコーラスも繊細で優美。音楽で酔わせていく大人な始まり方についつい顔がほころんでしまう。「氷のブルー」ではロックンロールのノリ、ブルースのルーズな感覚をこの編成で見事に表現。彼らの音楽の引き出しの豊富さを実感する演奏だ。

「アコースティックツアーを回るのは実験的なことでした。いい感じで来たので、その積み上げてきたものをお見せできたら。ツアータイトルはオーソドックスですが、内容はオーソドックスにはしないので」と和田が語っていたが、そのとおり、スリルとアイデアに満ちあふれた溢れた音楽的に豊かな夜となった。彼らはこれまでもアコースティック編成ライブを行ってきているが、ツアーはこれが初めて。集中的にステージを踏むことによって、バンドは着実に新境地を開拓していた。

 それぞれの曲がアコースティック編成で演奏されることであらたな表情を見せていく。「ホログラム」はアコースティックギターの弦を強くはじいてパーカッシブな音のアクセントを加えつつ。「スターライト スターライト」もキレがあってソリッドで超ファンキーなダンスミュージックになっていた。曲の核にある魅力を実に見事に活かしている。観客からも感嘆と賛辞の歓声が上がっている。純粋に音楽そのものによって、会場内を熱狂させていくところが素晴らしい。カバーも何曲か演奏された。カーペンターズの「I Need to Be in Love」では人間味溢れる歌と演奏によって、極上のラブソングとして響いてきた。バート・バカラックが作曲した映画音楽の名曲「Alfie」は和田の弾き語りでの演奏。ハートフルな歌声と演奏に、つい目をつぶって堪能したくなった。

 中盤は和田のキーボードをフィーチャーしての演奏で「Happy Saddy Mountain」、さらにはザ・ビートルズの「Lady Madonna」、「虹色のレコード」も披露された。和田のボーカルとキーボードと林と吉田のコーラスが見事にマッチしている。バンドとしてはもちろんのこと、それぞれがプレイヤーとして、音楽家として成長していることも見えてくる。“HAYASHI & YOSHIFUMI SPECIAL GROOVE”と名付けられたセッションはエレクトリック編成のステージでも披露されてきたのだが、アコースティックになることでひと味もふた味も違うものになっていた。ジャズロック的なテイストが濃厚に漂う自在なセッション。ここからは「Scar」「LOVE IS LIVE」「I GO WILD」「夜のSTRANGER」とロックなナンバーでたたみかけていく。コール&レスポンスやシンガロングで会場内も熱狂の渦に包まれていく。本編最後は「SPACE GROOVE Ⅱ」。冒頭のシナトラのカバーで始まった音楽旅行は星空が見えてきそうなスケールが大きくて広がりがある演奏でエンディングを迎えた。

 アンコールでは和田がピアノを弾きながらの「僕らの一歩」も披露された。彼らはまた新しい一歩を刻んだところだろう。ダンスミュージックはリズミカルに、ラブソングはハートフルに、スタンダードはドリーミーに、そしてロックナンバーはソリッドにエネルギッシュに。

 こんな和田の言葉も印象的だった。「俺ら的にはあらたな可能性が広がったかなと思っています。みんなも楽しんでくれたなら、何よりです」という言葉に続いて、アンコールの最後も1920年代のスタンダードナンバー「I’ll See You In My Dreams」。これも実に粋な演奏だ。軽やかでさりげないのだが、だからこそ、この曲に込められた彼らの思いもしっかり伝わってきた。アコースティック編成になることで、彼らの人間性と音楽性とがより直結していることも感じた。音楽が溢れた夜、そして愛が溢れた夜でもあった。

【取材・文:長谷川 誠】
【撮影:山本倫子】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル TRICERATOPS

リリース情報

Shout!

Shout!

2015年11月25日

Trinity Artist

1.Shout!
2.スターライト スターライト
3.GOOD ENOUGH

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お知らせ

■ライブ情報

TRICERATOPS “DINOSAUR ROCK’N ROLL 7”
2017/03/17(金) EX THEATER ROPPONGI
2017/03/18(土) EX THEATER ROPPONGI

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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