THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2016 -SUBJECTIVE LATE SHOW- ツアー・ファイナルをレポート!
THE YELLOW MONKEY | 2017.02.06
「最高のアリーナ・ツアーと最高のホール・ツアーをやらせてもらいました。またTHE YELLOW MONKEYがある世界が俺たちにも君達にも帰ってきた、本当に今は最高にハッピーです! 」
倉敷市民会館で迎えた『THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2016 -SUBJECTIVE LATE SHOW-』ファイナルのアンコールで吉井和哉は言った。2016年1月8日の再集結の告知、5月~9月アリーナ・ツアー、横浜・福島・熊本でのスペシャルライブを経て行われたこのホール・ツアーは、15年の空白を埋めたTHE YELLOW MONKEYを体験させてくれた。
開演前のステージ両脇には開演までをカウントダウンするデジタル表示が輝いている。1分前にBGMが流れると待ちかねたオーディエンスの手拍子が起こり、カウンターに0が並んだ瞬間、ステージに照明が灯され4人が次々に姿を現した。5月のアリーナ・ツアーからお馴染みとなったオープニングだ。センターに立った吉井和哉が高く手を挙げるとEMMAこと菊地英昭のダイナミックなギターが鳴り響き始まったのは「Subjective Late Show」。ツアー・タイトルにもなっているファースト・アルバムの曲だ。バンドの起点を見せるような幕開けから再結成後初の新曲「ALRIGHT」が続き、20年を瞬時に圧縮して見せる。吉井は歌詞を少し変えて「こうしていることが奇跡だと思わないか?」と問いかけるように歌い、「今夜は君だけのロックンロールスター! 」と言って始めた「ROCK STAR」では「君の目をちょうだい」というところを「倉敷の目を」に変えていた。そんな掴みもうまく入っていたこの2曲だが、どちらの歌詞も”羽が生えて”くることから、沈黙の時を超えてTHE YELLOW MONKEYが再び飛翔したことを感じさせたのは偶然ではないだろう。
「今夜はホール・ツアー最終日です。皆様とてもプレミアムなチケットを手にしました。僕たちもとてもプラチナムな夜を手にしました。最高のホール・ツアー・ファイナルにしようぜ倉敷! 」
この後のMCで、アリーナ・ツアーではやらなかったコアなナンバーを今夜はやると吉井は言っていたのだが、「I Love You Baby」「VERMILION HANDS」と続いたのはその言葉通りという気がした。賑やかな曲の後は「聖なる海とサンシャイン 」「Four Seasons」を近寄りがたいほどドラマチックに聴かせ、「SHOCK HEARTS」では親しみを持って歌いかける。吉井の歌とバンドの演奏が一つになってシアトリカルなステージにしていくのはTHE YELLOW MONKEYならでは。そして自分たちの原点であるグラム・ロックのナンバーを、と華やかな「審美眼ブギ」「Foxy Blue Love」で惹きつけ、ステージ袖から飛んできたタンバリンを吉井が見事に受け止めた「SLEEPLESS IMAGINATION」は、彼らの原点といえるインディーズ時代の曲だけに、グラム・ロックの神が降りてきたような歌と演奏になっていた。THE YELLOW MONKEYの最も彼ららしいところを濃厚に見せたのは、前述の言葉通りホール・ツアーだからだろう。
このホール・ツアーは全国16公演だが、タイトなスケジュールで各地を移動しながらのライブは以前の自分たちを思い出させたようだ。吉井は1998~99年に全国113公演を行った「PUNCH DRUNKARD TOUR 1998/99」に触れ、「その時はやったろうじゃないかと思ったんですけど、そのツアーが原因でイエローモンキーは解散したと(笑)。僕もネガティブな発言しちゃったりもしてね、いろいろあったんだけど、いま思い返せば、あの長いツアーが、また強い絆で俺たちを呼び戻してくれた気がしていて、やってよかったなと思っています。我々にとってあれは誇れるチャンピオンベルトみたいなツアー」。こんなMCの後に歌った「パンチドランカー」は、バンド全員ひときわ気持ちが入っているようだった。この曲の少々シリアスなムードを吹き払うように続けた「赤裸々GO!GO!GO!」では、吉井がステージサイドの花道へ進み手すりに寄りかかってセクシーなポーズを決めて見せたり、ソロを弾いているEMMAの頬にキスしたりするもので思わず歓声があがった。
そんな吉井に負けじとEMMAもHEESEYも左右入れ替わり、ステージ前に迫ってプレイする。「太陽が燃えている」では更に扇情的な振る舞いで吉井はオーディエンスを惹きつけ、「SUCK OF LIFE」はギターやキーボードの音と共にシアトリカルな歌で魅了した。
そして「ありがとう、お父さん! 」と言って歌った「Father」は、その後のMCで触れた彼らにとって音楽的な父親的存在であるデヴィッド・ボウイに捧げたものに思えた。MCを挟んで演奏した「砂の塔」はドラマと切り離せない大切な曲になった、と吉井は言ったけれど、この演奏を聴けばそれ以上にTHE YELLOW MONKEYの曲として、バンドにとってもリスナーにとっても骨身になっていることが感じられた。この1年を総括する曲として染み込ませるように、4人はしっかりとこの曲を聴かせて本編を終えた。
アンコールは、「偶数日は下ネタが多い」と10代の頃のように砕けた調子で、キーボードの鶴谷崇も含めメンバー紹介を楽しそうにした後で、「このメンバーとは苦楽を共にして、一緒に天下を取っていこうと真剣に言っていた。今もそうですけど、不思議とこのバンドだとできちゃうんじゃないかと思っちゃうんで。THE YELLOW MONKEYという王国があったら、その国歌を作りたいと、作った曲があります。皆さん一緒に歌ってください」オルガンが「JAM」のイントロを奏でると大きな拍手が起こった。途中で「倉敷! 」と呼びかけオーディエンスにコーラスを促した。場内がひとつになって「Good Night」と歌い、「君に逢いたくて」と吉井はちから強く歌った。そして鍵盤の優しいリフをバックに再び感謝の言葉を重ねながら話しかけた。
「もうTHE YELLOW MONKEYは解散しませんので! 一緒に、バラ色の日々を探しに行こうぜ。一緒に歌ってください! 」オーディエンスに「いい声だね」と声をかけながら共に歌った「バラ色の日々」、さらに一体感を強めた「悲しきASIAN BOY」では花道に出てシャツの胸をはだけて見せ、そんな吉井を笑って見ていたEMMAとHEESEYが並んでいる後ろに立ち二人の首に腕をかける。10代の頃と変わらないと言うのは、こんなところかもしれない。
予定ではこの曲で終わるはずだった。けれども鳴り止まない拍手と歓声を、耳に手を当て聞いていた吉井が、ローディにギターを持ってくるように指示し、「終電ある? 最終日なんで、もう1曲やろうか。(口に指を当て)シー、だよ。ツイッターとかで言わないでよ。師走にこの曲やらないと。最終日くらいこの曲やらないと」話しながら歌いだしたのは「東京ブギウギ」の替え歌で、途中からEMMAに歌わせたりしながら、サプライズの「アバンギャルドで行こうよ」。最高のノリでオーディエンスと一緒に歌い、「来年もよろしく! 」と締めると、「最後に一緒に写真を撮りましょう」とステージ前に5人が並びオーディエンスと共にカメラに収まった。
この1年の十分なウォーミングアップを経てTHE YELLOW MONKEYは通常運転になっていくことが確信できた、気持ちのいいツアー・ファイナルだった。
【取材・文:今井 智子】
【撮影:Mitch Ikeda】
リリース情報
砂の塔(初回盤)
2016年10月19日
日本コロムビア
2. ALRIGHT
Bonus LIVE Track
3.プライマル。
-東京・国立代々木競技場 第一体育館-
4.SPARK
-長野・ビッグハット-
5.バラ色の日々
-広島・広島グリーンアリーナ-
6.BURN
-宮城・セキスイハイムスーパーアリーナ-
7.楽園
-愛知・日本ガイシホール-
8.WELCOME TO MY DOGHOUSE
-大阪・大阪城ホール-
9.花吹雪
-埼玉・さいたまスーパーアリーナ-
10.BRILLIANT WORLD
-福岡・マリンメッセ福岡-
11.球根
-兵庫・神戸ワールド記念ホール-
12.TVのシンガー
-神奈川・横浜アリーナ-
13.パール
-福島・あづま総合体育館-
14.カナリヤ
-北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナ-
セットリスト
THE YELLOW MONKEY SUPER JAPAN TOUR 2016 -SUBJECTIVE LATE SHOW-
2016.12.18@岡山・倉敷市民会館
- 01.Subjective Late show
- 02.ALRIGHT
- 03.ROCK STAR
- 04.I Love You Baby
- 05.VERMILION HANDS
- 06.聖なる海とサンシャイン
- 07.Four Seasons
- 08.SHOCK HEARTS
- 09.審美眼ブギ
- 10.Foxy Blue Love
- 11.SLEEPLESS IMAGINATION
- 12.パンチドランカー
- 13.赤裸々GO!GO!GO!
- 14.太陽が燃えている
- 15.SUCK OF LIFE
- 16.Father
- 17.砂の塔
- 18.JAM
- 19.バラ色の日々
- 20.悲しきASIAN BOY
- 21.アバンギャルドで行こうよ