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兵庫県西宮市出身のニューカマー“Slimcat”の東京初自主企画イベントをレポート!

Slimcat | 2017.02.24

 1月に初の全国流通盤である1stシングル「The Great Escape」をリリースした、兵庫県西宮市出身の全員まだ21歳のニューカマー、Slimcat。そのリリース・パーティの初日には、今の20代のロックを各々のキャラと解釈で鳴らす3バンドを迎えての開催となった。

 一番手に登場したのは、THE FOREVERS。ザ・ビートルズを思い起こさせる国籍を越える印象を残すメロディやハーモニーワークは、Slimcatとも近いルーツやメンタリティを感じさせる。フロントマンのガクは、ポール・マッカートニーばりのボーカル&ベースで、しかもジェントルな雰囲気すら漂わせて、ただ煽るだけじゃないステージ運びをするのが新鮮だ。しかも、大好きな彼女と念願のふたり暮らしが叶うワクワク感を歌う、タイトルもそのままな「ふたり暮らし」や、彼女と一緒に服を買いに行こうと歌う曲などは、ブリティッシュロックテイストに加えて、どこかサニーデイ・サービスが歌った青春の匂いにも似たものを感じさせ、日本人だからこそ感じられる瑞々しさにも個性がうかがえる。Slimcatへシングルリリースのお祝いを述べるにしても、どこかスマート。でも、優等生的なわけじゃない、新しいセンスのバンドだ。

 続いては、女性リズム隊+キーボードと、男性ツインギター(一人はギター&ボーカル)という、ある種、プリミティブな部分は女性、メカっぽく上物の部分は男性(とはいえ、鍵盤は女性なのだが)という対比もユニークなderonderonderon。シュアな4つ打ちビート、緩急の効いたベースラインの上で、ニューウェイヴ、ポストパンク的でソリッドなギターアンサンブルが構築され、さらにシンセがエレクトロニックなムードを醸す。POLYSICSのキレッキレな部分と、サカナクションのボトムの太さの両方を感じたりしながら、ノリは大学の音楽サークルのようでもある(いい意味で)。ダンスロックの流行は過ぎてしまったものの、かっこよさと面白さを追求する彼らの姿勢は潔い。特にシュアなビートを叩き出す元気玉・もりもとのぞみ(Dr)のキャラは最高(帰りに当日のセットリストをプリントしたフライヤーを元気いっぱいに配ってました)。

 deronderonderonが作ったダンスロックのムードを最初の一音から引っくり返したのがWalkings。モダンにアップデートされたブルースセッションに叩き込まれるような3ピースのせめぎ合い。高田 風(Vo、Gt)が最強のリフを弾けば、吉田隼人(Ba)も強烈な自己主張をして、高梨貴志(Dr)もフリーキーに叩きまくる。
20代の彼らにとってはエモーションの発露は、スタイルがある程度出来上がっているギターバンドシーンの音楽とはおよそ在り方が違う。しかし、一度ライブを体験すれば、一瞬一瞬の演奏のスリルに、ルーツミュージックの知識などなくてもぶっ飛ばされる、そんなバンドだ。路上ライブも行う彼ら、先日、ついに警察に楽器を没収され、この日は借り物でのステージだったが、そんなことを微塵も感じさせない腹の据わったプレイを見せた。3月に渡米し“SXSW”やアメリカツアーを経て、何を得て帰国するのか注目だ。

 そして、大トリを務めたのが今夜の主役、Slimcat。初の全国流通盤に伴うツアーであると同時に東京での初めての自主企画とあって、本日の主役4人は入場から煽る煽る。ボーカル&ギターの小川 悟はフロアに落ちんばかりの勢いで叫んでいるし、ほかの3人も叫ぶ。なだれ込むように、オープニングは1stシングル「The Great Escape」。♪ナーナナナ、ナーナナナ♪という’60sっぽいコーラス、隙間を意識したアンサンブルは爽快だが、メンバーのプレイ自体は最初っからフルスロットルで、”青春”を絵に描いたような、いや、“青春”そのものが目の前に存在している感が半端ない。曲が終わるごとにネイティブな発音で「Thank You!」ほか、モロモロを英語で話す小川のフロントマン資質もユニークで、ひょっとして事務所の先輩であるTHE BAWDIESのROYと近いエンタテナー資質なのか? と思って調べたら、彼はアメリカ生まれの帰国子女だった。なるほど。プレイの熱量を損ねず、次の曲に繋ぐそのスタイルは、短いセットリストでも一本のショーを見せる心意気を感じさせてくれる。
ロックンロールのみならず、ノーザン・ソウルの要素もある「Emily」、1stシングルに収録されている「Seventeen」も、まさに17歳の頃の輝きやときめきを甘酸っぱい歌メロやコード感に閉じ込めていて、アッパーなナンバー以上にSlimcatのバンドとしてのアイデンティティになっている印象を受けた。ちなみに「Seventeen」には、ギターの大平”王将”雅樹渾身のギターソロがあり、「レコーディングでは鼻血を出しながら弾いたので注目してください!」というアピールがあったのだが(笑)、弾きまくるソロじゃなく、魂を込めたフレージングは“鼻血”のエピソードもまんざら嘘でもない気がした。また、本編中に全力で物販に関するMCをしたり(何しろバンドロゴは手刷り!)、一分一秒、全力なのだ。それがかっこいいとか悪いとか、支離滅裂だと思わせないのは、バンドが本格的に走り出した喜びから自然と溢れるものだとわかるからなのだが。加えて、小川の書く曲のエバーグリーンでポジティブなムードも大きく後押ししていて、4人の熱量を素直に受け止めることができる。ソウルマナーとアンセミックなサビを持つ「I’m Going Home」で、熱さの中にもチアフルなムードをたっぷり詰め込んで、一気に走り抜けた本編はあっという間すぎて、すぐさま起こったアンコールに、これまたすぐさま再登場。パワーコードと速い8ビートから、4つ打ちまで盛り込み、さらに特徴であるコーラスワークでも聴かせる、かなり過積載気味なナンバー「Hollywood」は、まだまだ発展途上段階だが、ロックオペラ的な表現もできそうなポテンシャルを見せつけるナンバーだった。変にクレバーにならずに、とことん青春映画のようなバカバカしくて、ちょっとイタくて、でも誰より楽しんでるのは俺たちだ! 的なスタンスで突き進んでほしい。

 バンドそれぞれのキャラクターが違っても、曲が強ければむしろキャラは違う方が楽しめる。次は西宮の大先輩(狂犬?!)、KING BROTHERSとも勝負するSlimcat。強敵に揉まれて成長して、また東京に戻ってくる日が楽しみだ。

【カメラマン:ヨモギ】
【カメラマン:ナンノミナミ】
【取材・文:石角友香】

tag一覧 ライブ 男性ボーカル Slimcat

リリース情報

The Great Escape

The Great Escape

2017年01月11日

JMS

1.The Great Escape
2.Seventeen
3.Miracle
4.I Fought The Law

お知らせ

■ライブ情報

The Great Escape Tour 2017
2017/02/18(土) 下北沢 Daisy Bar
2017/02/22(水) 京都 MOJO
2017/02/25(土) 北海道 KRAPS HALL
2017/02/27(月) 名古屋 池下 CLUB UPSET
2017/03/08(水) 神戸 太陽と虎
2017/03/15(水) 広島 club BoRDER
2017/03/16(木) 岡山 ペパーランド
2017/03/17(金) 福岡 UTERO
2017/03/26(日) 滋賀 B-FLAT
2017/03/31(金) 愛媛 Bar Caezar
2017/04/01(土) 高知 Cafe’de Blue
2017/04/09(日) 心斎橋 LIVE HOUSE Pangea

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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