「初めて観に来た人？　あっ、結構多い（笑）」と雫はフロアに集まった満杯の観客に問いかける。
昨年はMV「テレキャスター・ストライプ」が新人にして驚異の再生回数を記録し、大きな注目を浴びる中で11月に初の全国流通盤『骨抜きE.P.』をリリース。今回はそのEPリリースに伴い、初の東名阪ワンマンツアー「ポルカドッドスティングレイ 2017 TOUR 骨抜き」を決行。どの会場も即日完売状態で、ポルカ人気は現在進行形で急上昇している。この日は、それを目の当たりにする形となった。 　

白いシャツのエジマハルシ（Gt）、ウエムラユウキ（Ba）、ミツヤスカズマ（Dr）が現れ、最後に黒い服に身を包んだ雫（Vo・G）が登場。僕は今日のファイナル公演で二度目のライブになるが、前回と比べても演奏、ステージングは磨かれ、さらに新たな仕掛けも施されていた。常にアンテナを張り巡らせ、受け手の心を掴む手腕は、"新人"とはにわかに信じ難い。 　

変拍子を用いた「ハルシオン」で幕を開けると、雫はハンドクラップし、観客の気持ちをじわじわ高めていく。それから「心ここに在らず」に入ると、裏声を巧みに使い、エモーション剥き出しの歌声にハッとさせられた。バンド的にはバラードに位置付けられる楽曲と語ってくれたことがあるが、ただ静かな曲調に収まらないヒリヒリした世界観もアピールしていた。２曲立て続けに最新作『骨抜きE.P.』収録曲を放ち、ディープなサウンドで観客を迎え撃つ。それからバンド名を冠した「ポルカドット・スティングレイ」を披露。アップテンポな楽曲で攻めつつも、スティーヴィー・レイ・ヴォーン好きのエジマによるブルージーなギターソロも映えていた。しっとりした「フレミング」、「ミドリ」と挟んだ後、ここで雫から、ユニバーサル・シグマへのマネジメント所属が決定し、これから遠征などもしやすくなるという報告があると、会場は大きな歓声に沸いた。ポルカは地元福岡を拠点に活動しているバンドなので、ヒョイと気軽に東京に来れるわけではない。だが、この日の満杯のフロアを見ても、福岡だけに止めておくには、あまりにもったいない可能性を秘めたバンドであることは間違いない。 　
そして、ここで一気に知名度を押し上げた「テレキャスター・ストライプ」に移ると、イントロから手を上げて騒ぐ人たちがみるみる増えていく。やはり、この曲の浸透率は別格と言わざるを得ない。曲中にコール＆レスポンスを入れ、会場の一体感を高めるアプローチもあり、ライブの魅せ方も進化していることに気づいた。メンバーもステージを所狭しと動き回り、楽曲の温度をより一層引き上げていく。続く「シンクロニシカ」ではウエムラが激しいスラップベースで聴かせ、会場を焚き付けると、ここで嬉しいお知らせが。 　
4月26日に1stミニアルバム『大正義』のリリースが告知され、ウエムラの骨折により、tricotのヒロミ・ヒロヒロ（Ba）、ヒトリエのイガラシ（Ba）がレコーディングに参加したことが告げられる。雫は「tricotの大ファンな私の高ぶり、わかるかな？」と興奮気味にMCする様が印象的だった。 　
その『大正義』から、「本日未明」をここでプレイ。激しいアンサンブル、ユニークなギターフレーズが耳をとらえ、新作に対する期待感が膨らむナンバーだった。続いて、「ハルシがバンドに加入する前にあった曲で、バラードなんだけど、満を持して『大正義』に入れました」と雫が言うと、「ベニクラゲ」へ。スローなテンポに乗り、ウィスパーボイスを交え、叫びと歌メロの中間を行くような彼女独特の声色が際立っていた。最後は「人魚」で盛大に終え、メンバーは一度ステージ袖に引っ込む。 　
すると、スクリーンに見たことも、聴いたこともない映像が流れた。そう、４月に出る『大正義』のリード曲「エレクトリック・パブリック」のMVが初上映されたのだ。これには観客も興奮状態で、正義の味方に扮するメンバー４人を含め、これまたポルカらしい物語性のある映像と曲調だった。そして、MV曲同様に正義の味方の姿でメンバー全員が現れると、「エレクトリック・パブリック」を生演奏。曲中に「イエス！」と観客とコミュニケーションを図る要素を加味させたこの曲は、アッパーな曲調も手伝い、ポルカにとって新しい名刺になりうる楽曲と言っていいだろう。聴いているだけで、心がドキドキするような高揚感に満ち溢れていた。 　

ラストは「夜明けのオレンジ」を披露し、約1時間40分に及ぶライブは終了。ビジュアル、パフォーマンス、楽曲と持てる武器を総動員し、終始飽きさせないライブ展開に耳目を離せなかった。2017年、ポルカが飛躍する準備は十二分に整った。あとは多くの人に見つけられ、その存在と楽曲の良さが知れ渡ることを願うばかりだ。とにかく、『大正義』という摩訶不思議なタイトルが非常に気になる新作を楽しみに待っている。

【取材・文：荒金 良介】