sumika「SALLY e.p」Release Tour - Zepp DiverCity TOKYO
sumika | 2017.03.15
重なる想い、楽しさの共有、気持ちの代弁、鼓舞してくれる、踊らせてくれる、現実を忘れさせてくれる...。
人がライブに足を運ぶ際の愉しみは無数にある。そしてsumikaのライブは、これら全てを内包しつつ、更にそこに妙な安心感が加わってくる。例えると我が家に戻ってきたかのような空間性と温かみ。どの曲も非常にリラックスして聴ける上、なんか無性に生命力やバイタリティ、明日への活力が湧いてくる…。まるで家に招かれ、そこでみんなと一緒にライブを愉しんでいる、そんな錯覚にさえ陥らせてくれる、彼らのライブ。そして、この日の彼らもまさにその体のライブを終始展開してくれた。
sumikaが昨年末にリリースした「SALLY e.p」と共に全国5カ所を回った“sumika「SALLY e.p」Release Tour”の最終公演がZepp DiverCity TOKYOにて行われた。より楽曲の擁するビジョンを明確に共有できるように今回より弦やホーン類等の音色も同期させた今回のツアー。この日のステージにしても、ウッドログハウス風のビジョンをバックに、左右にイルミネーションが巻きつけられた木のオブジェ等が配されており、これまで以上の装飾性を感じた。
マジカルでドラマティックなSEが響き渡り、暗転したステージには先述のオブジェに飾りつけられたイルミネーションが様々な色の光を放つ。そんな中、サポートベースと女性コーラスを交えたメンバーたちが現われる。「こんばんはsumika始めます」とアコギを持ったボーカル&ギターの片岡健太が第一声を発した。オープニング曲は弾んだスイング感が特徴的な「Lovers」。いきなりのポップ感と楽しさが会場いっぱいに溢れ、同曲調に合わせてフロアもスイング。♪最後の最期に あなた朽ち果てるまで 愛し抜いていきたいと思うのです♪のキラーフレーズがオーディエンスを惹きつけていく。
「やばい1曲やって既に120%楽しい。今日はツアーファイナル。280%楽しくやっていきたい」と片岡。続いての「ソーダ」では、彼ら特有の韻の踏みと相手を想う切なさと愛しさを、あえてポップに笑い飛ばすように響かせる。
「あなたの表情や手拍子を楽器に変えていきたい。みなさんのクラップで一緒に楽曲を作りませんか」と誘う片岡。その会場中のクラップがイントロを作り出した「カルチャーショッカー」では、サビの4つ打ちのディスコ感と上昇感にフロア中が楽しく踊る。
「何気ない日を特別な魔法をかけてあげる」(片岡)と、最新EPの中から「MAGIC」が始まると、とびっきりの魔法が場内にかけられる。♪耳の住処(すみか)で起こすよMAGIC♪のリリック部では嬌声が上がる。「日本で一番熱いクラップが聞きたい」とギターの黒田隼之介。そこから「1.2.3..4.5.6」に入るとサビのストレートさが気持ち良さを運んでくる。
これまでに比べ若干前のめりに突き進んでいる感があった、ここまでの彼ら。青春性とセンチメント、それを笑い飛ばすかのような歌唱とメロディパワーも印象的な「坂道、白を告げて」。ギターと歌で始まった、あの日あの頃の自分をフラッシュバックさせた「sara」では、会場中の多くが今の自分とかつての自分とをオーバーラップさせたことだろう。
ここからはミディアムナンバーが続く。最新バラード「まいった」では、みなが聴き入りつつも自身を重ねていく。♪まいった 君だけが頭の中から消えないみたい♪のリリックがオーディエンスの胸を掴む。
ここでメンバー紹介。ゲストメンバーのベース井嶋啓介。マニュピレーターGeorge(MOP of HEAD)。片岡の軽音楽部の後輩でもあったコーラスの泉本弘美も合わせて紹介された。
「帰ってきました。東京はやはり落ち着きますね」とはキーボードの小川貴之。それに続けて片岡が「今日のこのただの空間をライブハウスに変えてくれたのはお客さんのおかげ」「ドラムの荒井(智之)と出会ったのはライブハウスのフロア。気づけばいつの間にか友達以上になっていた。自分たちも、みんなのそんな存在になりたい」と告げ、未作品化曲「知らない誰か」を始める。sumikaの歌がハブになり知らない者同士が友達やそれ以上になっていく…そんな場面をみなが想像する。
中盤のMCでは、片岡が昔、家族で沢山の写真を撮っていたことに言及、「今になりそれらを見返すと一枚一枚と共に色々な想い出がフラッシュバックしてくる。あの頃、色々と家族で写真を撮っておいて良かった。写真っていいなと改めて思った」と次曲「リフレイン」へ。ドラムの荒井智之が生むカントリー調のシャッフルのビートが牧歌性と爽快感を場内に呼び込まれる。
電車の発車音のSEを挟み、「グライダースライダー」からライブは再び勢いよく走り出す。「チェスターコパーポット」では、彼らの達者な演奏面が堪能出来た。各人のソロ回しも目と耳を奪った同曲。特にギターとキーボードの掛け合いと、その後のドラムソロ。そこから本曲への導入はとても高揚させられた。
「2月だけど夏を呼び戻そう!!」(片岡)とソカのリズムに乗りタオル大旋回な「マイリッチサマーブルース」にて夏を呼び起こせば、「気持ちの良い曲をもう一曲やってもいいですか」(片岡)と共に会心の一撃が場内に放たれた「ふっかつのじゅもん」では、コミカルさと楽しさが会場中を一つにしていった。
「何で音楽を続けるのか。何十本何百本ライブをやるのか。肝心なのはその先に何があるのか。その先にあるものは、いま自分の眼前にある光景。それさえあれば全ては乗り越えられる。自分たちの音楽もそうあるべきだとこのツアーで分かりました。やらなきゃいけないのはステージの灯りを灯すことなんです」と片岡。夕刻、帰宅した際に交わされる「ただいま」「おかえり」の温かい響きが思い浮かび、近いぬくもりが楽曲と共に会場に響き渡った「オレンジ」にて、「いつまでも笑って帰って来れる場所であり続けたい」(片岡)の言葉を残し彼らは本編を締めた。
アンコールでは「雨天決行」と『「伝言歌」』が歌われた。
「本編では背中を押し切れてなかった。背中を押し切るナンバーを演る」(片岡)と告げ始めた「雨天決行」では、黒田のエモなギターと共に歌を通してガンガン鼓舞される。そしてメンバー各人によるツアーやこの日のライブを振り返ったMC、次回の東阪での大きなライブに触れ、ラスト曲『「伝言歌」』を鳴り響かせる。大合唱で楽曲を完成させた同曲。「思いを全部伝え切った。受け取り切った。自分を変える重かったネクストドアが開いた気がします。しんどくなったらいつでも戻れるようにドアは常に全開にしておきます。いってらっしゃい」の言葉を残し彼らはステージを後にした。
ライブ中に片岡が言っていた言葉を借りるなら、彼らの歌やステージは「おかんのカレー」。たぶん多くの人が自宅のカレーが最も美味しいと思っていることだろう。それはきっと幼い頃から慣れ親しんだ味であることはもちろん、あの食卓の温かさや想い出、親ならではの愛情や手間ヒマが加味され、そう感じさせるにちがいない。その証拠にそれを真似て同じ材料、同じ調理方法を経たところで、それと同等のを出すことは難しい。おかんのカレーはけっして裏切らない。そして不思議と飽きないし、食べると安心する。それと同様な安心感をsumikaのライブにも感じる。彼らのライブもまた飽きさせないし、安心するし、幾らでも食べられる。「ただいま~」と自宅のドアを開けた時に、すーっと香ってくる安心と安堵できる、あのカレーの匂い。そんな彼らの音楽の「おかわり」のお皿の数はこれからもまだまだ増えていく。
【取材・文:池田スカオ和宏】
【撮影:後藤壮太郎】
リリース情報
SALLY e.p
2016年12月07日
[NOiD]/murffin discs
02.坂道、白を告げて
03.まいった
04.オレンジ
bonus track.TACTICS (THE YELLOW MONKEYカバー) ※初回盤のみ収録
セットリスト
sumika「SALLY e.p」 Release Tour
2017.2.25@Zepp DiverCity TOKYO
- 1.Lovers
- 2.ソーダ
- 3.カルチャーショッカー
- 4.MAGIC
- 5.1.2.3..4.5.6
- 6.坂道、白を告げて
- 7.sara
- 8.まいった
- 9.知らない誰か
- 10.リグレット
- 11.リフレイン
- 12.グライダースライダー
- 13.チェスターコパーポット
- 14.マイリッチサマーブルース
- 15.ふっかつのじゅもん
- 16.オレンジ
- En-1.雨天決行
- En-2.「伝言歌」
お知らせ
murffin night 2017 in TOKYO DAY2
03/17(金) 東京 TSUTAYA O-EAST
My Hair is Bad presents「ハイパーホームランツアー」
03/26(日) 山形 酒田MUSIC FACTORY
murffin night 2017 in OSAKA DAY2
03/30(木) 大阪 大阪BIGCAT
YON FES 2017
04/01(土)-02(日)
愛知 モリコロパーク(愛・地球博記念公園)
rockin’on presents JAPAN JAM 2017
05/04(木)-06(土)
千葉 千葉市蘇我スポーツ公園
MONSTER baSH presents
FESTHALLEcircus
05/12(金) 香川 高松festhalle
森、道、市場2017
05/12(金)-14(日)
愛知 愛知県蒲郡市ラグーナビーチ(大塚海浜緑地)&遊園地ラグナシア
TOKYO METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2017
05/20(土)-21(日)
東京 新木場 若洲公園
FM802 Rockin’Radio! -OSAKA JO YAON-
05/21(日) 大阪 大阪城音楽堂
sumika[camp session]Live Journey 2017 -Ensemble-
05/27(土) 大阪 Billboard Live OSAKA
05/28(日) 東京 Billboard Live TOKYO
百万石音楽祭2017
~ミリオンロックフェスティバル~
06/03(土)-04(日)
石川 石川県産業展示館1~4号館
sumika ONEMAN LIVE 『Little crown #4』
07/15日(土) Zepp Osaka Bayside
07/26日(水) Zepp Tokyo
※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。